以下は、次の及川氏の動画を元に書きました。

 

国際通貨基金(IMF)が行っている「公的外貨準備の通貨別構成(COFER)調査」によると、2020年第4四半期の中央銀行諸行の外貨準備高に占める米ドルの割合が59%という過去25年間で最低の水準まで低下している。

 

なぜ脱ドル化が起きたのか?その大きな原因の一つがロシアである。2014年ロシアがクリミアを併合したとき、オバマ政権がロシアに対してドルを武器に経済制裁したためロシア企業が西側市場で資金調達が難しくなった。それに対してプーチンはドル依存脱却を決断し、EUとの取引をユーロ決済に切り替えた。ロシアの対中国への輸出時に使う通貨は、2013年には95%以上がドルだった。しかし、2020年にはドル決済は約20%となり、逆にユーロ決済が60%を超え、人民元決済も徐々に増えた。プーチンは2013年からロシア中央銀行の外貨準備のドルを半分にした。さらに政府系ファンドからドル建て資産を切り捨て、ユーロ、人民元、金の保有を増やしている。その後2022年ロシアのウクライナ侵攻に伴い、ロシアはSWIFTから除外され、原則として他国とドル取引ができなくなった。このようにロシアは制裁されてドル決済を止めざるを得なかった。

しかし、ここに来て自らドル決済を縮小する動き(=脱ドル化)が始まっている。たとえば、中国と南米ブラジルは2023年3月30日までに、両国間の貿易取引の決済をこれまでのドル決裁を減らして、それぞれの自国通貨の人民元とレアルを用いることで合意した。また、中国の国有石油大手、中国海洋石油集団(CNOOC)とフランスのエネルギー大手トタルエナジーズは3月28日、上海石油・天然ガス取引センターを通じて、国内初となる人民元建て決済による液化天然ガス(LNG)の輸入取引を完了させた。また、ブラジルとアルゼンチンは米ドルに変わる貿易決済通貨としてブラジルとアルゼンチンの共通通貨に関する議論を開始することを決定した。さらに習近平は、2022年12月アラブ諸国首脳との会議で、これまでは米ドル決済一色であったが石油や天然ガス貿易について、今後人民元決済を展開したいと述べ、参加者の賛同を得た。

ドルが直ちに崩壊するわけではない。各国中央銀行が保有する外貨準備はドルが58%と他の通貨を圧倒している。しかし脱ドル化は今後さらにそして急速に進むと予想される。何と、アフリカのケニアの大統領が市民に向かってドルを処分するよう呼びかけている。 

貿易決済通貨としてドルがあまり使用されなくなっていく、つまりドルが基軸通貨でなくなると、どんなことが起こるか?ドルに対する需要が減るので、ドル(貨幣)の価値が下がり、逆にドルに対する商品の値段が上がる。つまりアメリカは海外から安く商品を買うことができなくなるので、さらなるインフレが起こることになる。また、ドルが基軸通貨だと、各国がドル資産たとえば米国債を持ちたがるので、米国債の値段が高くなり、金利が下がる。アメリカは債務が30兆ドル、つまり5000兆円弱であり、非常に多くの金利を払わなければならない。しかし、金利が低く抑えられればその負担は減る。アメリカは、膨大な経常赤字と貿易赤字を抱えているが、それでもやってこれたのは、ドルが基軸通貨だったためである。そしてアメリカはこれまでドルを使って経済制裁を行ってきた。しかしドルが基軸通貨でなくなると、ドルを使った経済制裁は効かなくなる。米ドルが基軸通貨の地位を失いつつあるということは、アメリカが覇権を失いつつあることを意味する。

 

参考サイト

・アラブ諸国からの原油輸出を人民元で決済

 

 

・中国で初の人民元建てLNG取引 中国海油と仏トタルエナジーズ

 

 

・中国・ブラジルが自国通貨決済で合意

 

 

・ケニアの大統領がドルを処分するよう呼びかけ