料理好きが何十年も生きてると、「何年も迷って買うかどうか躊躇している料理道具」が一つか二つは必ずあるものだ。
その最たるものの中の一つであろうのが「ホットサンドメーカー」。ガス式がいいのか、電気式がいいのか、ワッフルが焼けるのもいいのか、ブランド品がいいのか等、迷う箇所は色々あるが、そういう料理道具の最大の悩みどころは「果たして、これの活用頻度は値段と収納スペースに見合うものなのか」ということだ。
ちなみに十年迷ったあげく、結婚式の引き出物でもらった「たこ焼き器(ホットプレート、グリルプレートも使用可能)」は、かなりの頻度で使っている。少なくとも2週間に1回ぐらいは使ってる間隔だ。大阪人には遠く及ばないかもしれないが、様々な意味を加味しても「手に入れてよかった」と思っている。
話をホットサンドに戻そう。
初めてホットサンドを食べたのは小学校5か6年生のときである。駅前の喫茶店に朝食を食べに親父が弟と一緒に連れてきてくれたのだ。その喫茶店で出されていた「モーニング」がホットサンドだった。
その頃は親父の仕事の都合で京都におり、関西では元々「厚焼き卵サンド」という文化があった。卵サンドではない、厚焼き玉子サンド。ゆで卵をつぶしてマヨネーズであえてサンドするのではなく、厚焼き玉子をバシーンとそのままサンドする、豪快な見た目と優雅な味のメニューだ。
しかし、DNAは東北人、生まれは西宮だが、ただ生まれただけで、育ちは東京という子供だったので、そんな存在は知らず、出された「焼かれたサンドイッチ」にはハムかチーズが入っているのだろうと想像していた。
ところが、食べてみてビックリ、そこには厚焼きとは行かないまでもしっかりと存在している卵焼きが入っているではないか。「卵焼きー!?サンドイッチに卵焼きー!?」と慄く間に、口の中では熱々の中に何かとろりとしたものが卵味とよく絡んでおり、「ななな、なんだこれは」と必死に味を確かめ、サンドイッチの断面を探って「トマトスライスー!?あったかいトマトスライスー!?」と分かったときは「これは美味ーい!!!」と爆発的に感動してしまった。
その後、二十年以上ホットサンドを何回か食べる機会はあったが、あの爆発的に美味かった卵焼きトマトホットサンドという組み合わせ自体、あそこで食べて以来、一度も食べてはいない。
あれが食べたくてホットサンドメーカーを買うかどうか迷っている。逆に言えば、たこ焼き器とちがって、あれだけのためにホットサンドメーカーが欲しいのだ。だから、非常に迷っている。
生きている間はほとんど接点のなかった親父だが、数としては普通の人より少ないであろう親子の触れ合いの思い出のほとんどは、不思議と食事をしているシーンが多い。その中でもホットサンドの思い出は「美味さ」でいえば、ピカイチ、ナンバーワンだ。
そんな親父が死んだ供養として書いて応募した作品が佳作に選ばれました。7月18日発売ギャロップという競馬雑誌に載ります。良かったら読んでやってください。
新聞媒体扱いなので、コンビニや駅の売店での取り扱いです。
地域によっては翌19日発売、もしくは取り扱い自体がありませんので、お気をつけて。