第2部隊には、先ほど偵察に行ったケータとジンがいた。負傷し弟を喪ったタクほどではないが、この二人も動揺が激しく、ハヤトとフトシは二人を庇いながら走っていた。
「いやだ…」
「…」
 早く戦いたいと言っていたケータが、頭を抱えうずくまる。ハヤトは、ぐっと唇を噛み締めた。一呼吸おかなければ、むしろ二人を追い詰めるような何かを吐いてしまいそうだ。
「おい、しっかりしろよ!」
「だってさっき、目の前で人が死んだんスよ!?」
「死にたくない、死にたくないよ…」
 気持ちは分かる。だいたい、その場にいなかった自分には、何も言う資格などないかもしれない。
「…」
 ハヤトには、ただ黙って二人を見下ろすしか出来なくなった。

「はい、これ!食料です!逃げてくる時持って来ました!」
 フトシは鞄の中から缶詰を取り出すと、ケータとジン、それぞれの手に握らせた。
「生きるためには、食べることが大切です!生きるために食べて下さい!」
「生きるために…」
 怯えた目で顔を上げる二人に、フトシはにっこりと笑って見せた。
「はい!僕はいつも、生きるために食べるんです!」
 こんな時なのにと言われるか?
 いや、こんな時だからこそ、だ。美味しいものは、人を幸せにしてくれる。人を元気にしてくれる。
 フトシは、ずっとそう信じてきた。
「…そうッスよね。生きなきゃですよね」
「僕、生きたい…!」
 ようやく起き上がれた二人に、フトシはまた笑って見せた。けれど、すぐにくるりと背中を向ける。

 まだ動揺の激しい、仲間のために。

「みなさんは先に行ってて下さい!僕はここで後からくる人を待ってます」
「何言ってんだ!そんなことできるわけ…!」
 詰め寄って来るハヤトに、彼は欺けないと思った。みんなに普通とからかわれながらも、班長としての責務をここまで果たしてきてくれた、彼は。
「…!」
 フトシは、その懐からそっとタオルを取り出した。真っ赤な血に染まったそれに息を飲んだハヤトに、フトシは黙って頷いた。

 言わないで下さい。騒がないで下さい。
 これ以上あの二人を、怯えさせたくないんです。

「…二人とも、ここはフトシに任せよう!ほら、行くぞ!」
 フトシの気持ちを悟ってくれた我らが班長は、まだ座り込んだままになっていたケータとジンを立たせてくれた。本当にいいんですかと聞いてくるケータに、フトシは笑顔で頷いた。
 笑顔で手を振るフトシに、ハヤトは最後、強く頷いてくれた。フトシは手を振りながら、つらい役目をごめんなさいと、ハヤトの背中に謝った。

「あーあ。撃たれてること、言えなくなっちゃった」

 ここに来るまでに、フトシはその腹に弾を受けていた。朦朧としてくる意識の中、それでも笑顔でいられたのは、そこに仲間がいたからだ。
 仲間のためなら自らの菓子もあげられるし、笑顔にもなれる。フトシは、そんな仲間に出会えたことが嬉しかった。
 ああ、でも、

「もっと美味しいもの…食べたかったな…」