私はグルーヴの感じられる音楽が好きです。
最近いろいろな音楽を聴くたびにそのことを強く感じます。このような音楽的嗜好はこれから紹介する
ザ・ローリング・ストーンズ(以下ストーンズと略す)の影響が大きいと思います。
ストーンズの魅力のひとつがその独特なグルーヴにあります。個々のメンバーはテクニックが優れているわけではありませんが、バンドから醸し出されるグルーヴにはまるとなかなか抜け出せなくなります。かく言う私もそのひとりとなります。
このグルーヴとはいったいなんでしょうか?専門家よる理論的な解明しようという試みもありますが、非常に感覚的なものなので他人への説明は困難なものとなります。
ここではまず私自身が思うグルーヴについて述べさせて頂きます。
グルーヴとは当該メンバーにのみ表現できるヴォーカルを含めた楽器の会話から生まれる唯一の個性で、それは俗に言う”うねり”というものです。ポピュラー音楽に当てはめるとグルーヴを支えるのはドラムとベースによるリズムセクションの役割が大きいと考えます。
さて、これを今日の主役であるストーンズに当てはめるとどうなるでしょうか?彼らの音楽はビートルズのような
新しい音楽を提示するのではなく、継承者としてブルースのミュージシャンのように自分たちの表現を追求して深めるタイプのバンドとなります。その中で大きく変わる契機といえるのが、1992年のベースのビル・ワイマンの脱退と2021年のドラマーのチャーリー・ワッツの逝去です。
ビル・ワイマンの脱退により、ベースはダリル・ジョーンズが担当となりました。ダリルはスティング、マイルス・デイ
ビスなどとの共演の実績があり、プレイヤーの力量としては問題ありませんが、当初は少し控えめなイメージもあり、ストーンズのサウンドの貢献が疑問視されていましたが、ここにきてチャーリー・ワッツとのコンビネーションも
出来つつありました。ビル・ワイマンとは異なるグルーヴになってきたと思います。
そうした時に今度はチャーリー・ワッツ逝去というバンドを揺るがす大事件が起こりました。個人的にはストーンズのグルーヴを支えているのがチャーリー・ワッツのドラミングだったので、バンドの解散も覚悟しましたが、バンドは新たにスティーブ・ジョーダンを迎えて新たに活動を行っています。彼はキース・リチャーズのソロプロジェクトの右腕といえる存在でファンにも馴染みの深いプレイヤーです。
ただ、やはりバンドのサウンドは大きく変わります。それを踏まえて登場したのが、前作であるハックニー・ダイヤモンドです。ここでのグルーヴは大きく変わりました。このアルバムではチャーリー・ワッツ参加の曲が2曲ありますが、やはりしっくりくるのはチャーリー・ワッツの曲でした。今作は前作参加しなかったダリル・ジョーンズが参加しています。ストーンズのグルーヴがどうなっているかが注目です。
さて、今回のアルバムは前作同様、アンドリュー・ワットのプロデュースとなります。レコーディングはロンドンで1か月という短時間で仕上げたそうです。前作からのマテリアルが14曲中4曲あります。その1曲がポール・マッカートニー参加の曲となります。今回も豪華ゲストが参加していますが、その中で一番で最も活躍しているのがスティーブ・ウインウッドです。残念ながらヴォーカルでの参加はなく、キーボードでのプレイのみとなりますが、14曲中9曲参加しており、彩を与えてくれます。
サウンド自体は2005のビガー・バン以降は新機軸よりもよりバンドらしさを追求している傾向があります。今回も彼らのルーツといえる黒人音楽をベースにしたサウンドは変わっていません。今作はより親しみやすいフックがある曲が多い印象がありますが、これはひょっとしたらミック・ジャガー主導かもと思ってしまいます。これがストーンズの最高傑作とは思いませんが、バンドのブランドにふさわしいクオリティはあるし、何しろ2026年の作品となっています。
さて、問題のストーンズのグルーヴですが、やはり変化はしています。今後個人的な感性も含め、馴染めるかどうかはありませんが、ストーンズがまた新たなグルーヴを獲得するために変化していることがうかがえます。デビューして60年以上のバンドがまた新たなものを求めている、本当に信じられません。
作品のそのものの出来ということは別にしてまた新たなグルーヴを獲得しようとしているその姿に対して敬意しかありません。
結局ストーンズのグルーヴから離れることはできないと強く認識をさせてくれる作品でした。