監査法人の責任は? | 徐さんの中国通信

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このブログは2017年4月から
「徐さんの中国通信」として再スタートしました。

香港の市場失当行為審裁署が空売り機構の一つ、
「Citron Research」の代表者Andrew Left氏に対して、
業界参入5年間禁止の処罰を出している中、
もう一件、空売り機構対企業との戦いが展開されています。

Emerson Analytics対華瀚健康(0587)です。
そして今回は華瀚健康の監査法人も巻き込まれています。

 

華瀚健康が狙われていることを
先日の『徐さんの中国株』で取り上げた後、
当社発信「中国企業情報」ご購読の複数の方から
更にリクエストがあり、関心の高さを伺えます。

 

しかし、同社についてはもともと当社
「中国企業情報」の研究対象になっていないので、
そのために多くの時間を取らなかったのですが、
リクエストを受けてから早速情報を集めてみました。

 

同社を狙ったのは米系空売り機構のEmerson Analyticsで、
これまで神冠控股(0829)、桑徳国際(0967)、
中国光繊(3777)に対しても同様の粉飾疑惑で
ネガティブレポートを発表しています。


しかし、華瀚健康に対してこれまでにない
「徹底振り」と「粘り強さ」があると言われます。

 

時系列に見ても、8月11日一回目のレポートが発表され、
取引時間内に同社株価は30%以上も暴落し、
取引停止に追い込まれたのです。

同社は反論の公告を用意し18日取引再開するとともに、
市場からの買戻しを実施して株価が急回復しました。


しかしその約10日後の29日、「上場廃止にすべきだ」
という2回目のレポートが、さらに
9月8日に3回目のレポートが相次ぎ発表されます。

 

2回目、3回目のネガティブレポートが公開されても
同社は取引停止を申請しなかったのですが、
しかし、9月27日になって
同社は再度取引停止を選択したのです。
その理由について、同社は6月30日までの
2015年度本決算が予定通り発表できないとしています。

 

当初発表できない理由について
特に触れていなかったのですが、3日後の公告で、
監査法人のErnst & Youngからは、
これまでにない資料の提出を
同社に求めて来ていることを明らかにしました。

 

市場では、Emerson Analyticsに指摘された事由の一つ、
同社売上高の大部分を占める子会社は
社員が代理人名義で保有されていることを
遡って5年間、一度も披露されたことがなく、
これは規則違反ではないかとのことは、
企業内部か監査法人しかわからないような事項で、
どうしてEmerson Analyticsに漏れたのか、
また2011年から以降、毎年の監査報告書に
一度も保留意見のないErnst & Youngは、
発表期限のギリギリのタイミングで、
なぜ同社に対して補足資料の提出と
新たな監査プロセスを求めて来ているのか、
などについて疑問を投げかけています。

 

Emerson Analyticsに指摘された諸疑惑も、
また監査法人になぜこのタイミングで
補足資料の提出を求められているのか、
解明はこれからになりますが、今月19日、
同社は上記疑惑の解明に当る社外取締役からなる
独立調査委員会の設置を発表しました。

 

Emerson Analyticsは今回のレポートの冒頭、
同社株を空売りしていることを明言しています。

華瀚健康を巡っては、空売り機構の倫理観、
企業のガバナンスと監査法人の責任が
共に問われる事例になるかもしれません。