フィクションでーす!!

 

フィクションだから

安心ですね!!

 

「子どもがかわいそうだから」

と思って逆に虐待してしまってるような小噺を一つ。

 

11歳男子、痩せてて自分より小さい子の面倒を見たがる一見優しいナイスガイ。

サッカーよりもファッションセンスが気になるちょいイケメンの彼は。。。

ちいさいころから

入院の常連。

先天性の代謝疾患があって、食事やお薬の使用などに細かく手厚い大人の介入が必要なのですが、

 

何年かかっても身につかない。

 

そもそも、親にやる気がない。

 

だってボクちゃん、唐揚げもごはんも大好きなんだもの。

こんなに痩せてるのに我慢させるなんてかわいそう!!

お薬だって、嫌がるのを飲ませてかわいそう!!

毎日たくさん針を刺すのもかわいそう!!

ちなみに宿題も嫌がってるから勉強させるのかわいそう!!

 

・・・。

それで何度も倒れて救急搬送されて教育入院させられてるんですけど。

入院中は入院中で

入院させるのかわいそう!!!

 

だそうです。

看護師や医師の目を盗んでお菓子や唐揚げを隠し持ってきたり

こっそり病棟を抜け出す(下の売店で好きなもの買わせるため)

などの行動はさすがに何度も怒られてきたので最近ではしなくなりましたが

 

親!!!

子どもはペットじゃないんだってば!!

一人前の自立した大人に育ててあげるのが親でしょう!!

お宅のおぼっちゃま、小5ですけど1桁の足し算も間違ってるし掛け算言えてません!

本気で社会人になれるとお思いですか?!

「かわいそう」で飯は食えん!!

確かにイケメンですけど、りゅうちぇるレベルには至ってませんよ、

芸能界でやってける体力と才能は今のところ皆無です!!

特に体力!!

その疾患のコントロールがここまで不良だと、下手すると成人できません!!

 

など、看護師医師病棟保育士訪問看護ステーションスタッフ(訪看の介入までしてるあせる)の数十人すべてが

親御さんに心では怒りを覚えつつ、

辛抱強く辛抱強く笑顔で

数年以上かけて治療支援を続けてきてるお子さんです。


ようやく入院中はきちんと病院の規則を守らないと

退院できないことがわかってきたので

最近は入院中はちゃんとしてます。

 

親御さん、ちょっとだけ賢くなったネ!!!

 

「今度こそ頑張ります!!」

と毎回笑顔で約束して退院するんですけど、

自宅から送られてくるデータを見ると

退院当日から全く針を使ってないとか

スイーツ店で息子クンとママが騒いでる姿を非番の看護師が見てしまったりとか

訪問看護師が来ても外出してて留守とか

ありとあらゆることを平然とやってのけ

毎回救急車騒ぎ。

 

「ま、好きに生きて、ダメになったら救急車で運んでもらって入院すればよくなるから、それで良くね?」

 

というのが保護者さんの本音のようです。

そのうち搬送されてきても助けられなくなると説明してますが、ご理解は頂けてません。

でも、入院中はおとなしくして医師のいうことにきちんとうなずけば医療ネグレクトにならないからOKなわけで。

あ、ちなみに治療費は公的資金で出る方なので懐も痛みません。

 

 

そんなお騒がせな親子に

一大事件が!!

(今までのあれこれも十分事件レベルなような気もするが)

なんと、親御さんにステージ3の肝臓がん判明!!!

 

手術したはいいけど、再発の確立がかなり高く、どう考えても息子クンが成人するまで持たなそう。

いえ、再発予防にあれこれできるんですけど、何しろこの親御さん、本当に理解力と行動力が欠けてる。

本人の意思がないから調べられないけど、平気で嘘をついてしまったり5分前に言われたことを忘れたりと

かなり知的に何かあるような雰囲気なのです。まだ30代前半なのに。

また、「かわいそう!」の連発でお分かりのとおり、精神的にせいぜい10代前半。

たった一人この世に残されるかもしれないかわいい息子クンのために、今度こそ自分自身への手厚い医療支援も行いつつ長生きしなければいけないのに、精神的に

かわいそうな自分と息子クン」

で手一杯になってしまいました。。。

 

で、手一杯になってしまったため息子クンがおろそかになってまた救急搬送されて息子クン入院。

ちーん

息子クンはいつもと同じ入院だけど、ママの面会が少ないのでキョトン。

唐揚げ持ってきた遠くに住んでるおばあちゃん(ナースステーションで唐揚げ没収)が、

ママも病気になって別の病院に運ばれちゃったからと説明。

がんについては内緒。

 

彼にとっては「入院=必ず退院」なので、会えないのは寂しいけど、「へえ、そうなんだ。」との反応でした。

今回は入院中に彼自身にがっつり薬の飲み方も針の使い方も完璧に覚えさせました。

足し算の練習はいまいち進まなかったけど。。。

退院後のお約束もまた設けました。

当分おばあちゃんが自宅に来てくれるけど、甘えないで自分でやる。

学校でも昼休み必ず保健室でやる。

 

・・・。おばあちゃんには管理は無理。ママにも無理。

施設に入ったほうがいいのではないかとスタッフ一同話したのですが、施設に相談したら、

投薬を要する子の受け入れが今できないとのこと。

まあ、だよね。小学校や幼稚園ですら投薬OKになったの最近だし。

息子クンの入院中、別棟で訪看のスタッフや小学校の担任・養護教諭たちとカンファレンスを行い、

出来る限りの最大限のネットワークを活用して医師も看護師も頑張りました。

 

多分、本人たちは知らないでしょう。

延べ100人以上の専門職があなたたち2人の「かわいそう」の始末のために頑張ってることを・・・。

こうして息子クンは退院していきました。

 

次の救急搬送はいつでしょう。今後もずっと助かるといいですね。

 

・・・この先は個人的見解です。

私の身内に素人のくせに持病をほったらかしにして

「自分の理論で治るはず(治っているはず)」

と信じてるバカがおりますので

家族として思うのですが、

 

もう、そういう人はほっといていいのでは?

 

知的にどうしても理解ができない相手に何をどう伝えればいいのか。

医療者として医療に関する説明義務はありますけど、

説明してもどうしても理解・納得できない相手は一定数います。

そういう保護者や本人の意思を尊重してたらこの通り、有効な治療はできません。

 

他に助かりたいと思って治療を頑張ってる人がたくさんいます。

そちらにもっと手厚い支援をしてあげたいです。

上記息子クンのためにカンファレンスまでして特別チームを組んでがんばったからといって

私たちは1銭もお給料の上乗せをもらったりしてません。むしろ残業代返上で資料作ってます。

 

重症な他の子だってたくさんいるのに、これほど人と時間を割くことはありません。

平等という名の不平等ではないでしょうか。