【本記事は、かつて存在した XWIN II Weblogに2010年5月9日掲載した記事をほぼそのまま転載したものです。】
前回は、「図説 鉄道パノラマ地図」(編者:石黒三郎+アイランズ。発行:河出書房新社)内の「関東⑦ 東急東横線 東急目黒線」(32~35ページ)に含まれる疑義等について取り上げた。今回は「関東⑩ 東急池上線」(44~47ページ)を取り上げていこう。
──と書き出してはみたものの、実は目黒蒲田電鉄(東急東横線・目黒線)よりも誤りや気になる点が少ないのである。
一応、列挙してみると、
44ページ「五反田駅開業が昭和3年、昭和8年に「雪ヶ谷」が「雪ヶ谷大塚」に改称することからその間の発行だろう。」
以前にも当blogで何度となく取り上げているが、雪ヶ谷駅が雪ヶ谷大塚駅に改称されたのは昭和8年(1933年)ではない。この年は、雪ヶ谷駅が隣の調布大塚駅と合併したとされるのだが、実は「合併」あるいは「統合」したという事実を見出せていない(駅位置がほぼ現在地に異動したのは、昭和8年よりもかなり後の昭和13年頃)。そして、調布大塚駅は雪ヶ谷駅と合併あるいは統合した事実はなく、単に廃止されただけなのではないかと考えている。
(「雪ヶ谷大塚」という駅名がいかにも「雪ヶ谷」と「調布大塚」を合わせたような名前なので、統合・合併したと誤解を招く原因となったのでは? 私の予想では、仮に昭和18年(1943年)に改称された前提とするなら、雪ヶ谷町と調布大塚町にまたがる駅名が「雪ヶ谷」ではおかしいというような風潮となり、地元あるいは当局の要請によって改称されたのではないか、と。)
45ページ「この支線は当初、雪ヶ谷と国分寺間の開通を目指していたが、いち早く目蒲電鉄が大岡山~二子玉川間の新線で線路用地を確保したため、計画は頓挫してしまい、支線そのものが廃止となった。」
奥沢線の解説(本書もご多分に漏れず「新奥沢線」と表記しているが)だが、いわゆる通説である。これは公文書館等の資料や玉川全円耕地整理組合関連の資料などを確認すると、実際にはそうでないことが確認できている。近いうちに「池上電気鉄道VS目黒蒲田電鉄」シリーズで取り上げる予定であるが、簡潔に記すなら「この支線は当初、目蒲電鉄の田園調布駅に接続させる目的であったが、目蒲電鉄の反対や鉄道省の許認可が得られる見込みがなかった。よって、国分寺駅までの延長線という形を取り、途中で(事実上)目蒲電鉄の駅に接続させることを目指したが、目蒲電鉄は計画線との交叉部分に関する協議に応じず、大井町線(二子玉川線)の計画を変更させるなどして最後まで協議をさせなかった。その間、自由ヶ丘~二子玉川間が開通し、本線に次いで支線まで目蒲電鉄に先を越されたのである」と。
45~46ページ「現在の東急ストアは、当時「白木屋分店」といい、日本橋白木屋が、池上線が全通した年の瀬に駅ビルヂングに開設した。」
本書は今年になって発売されたもので、どんなに古くても昨年に著したものであろう。よって現在の東急ストア、というよりは「レミィ五反田」と表記する方がいい。実際、五反田東急ビル内にまだ東急ストアは健在だが、縮小されて五反田駅と接続する4階にはもうない(3階以下に限られる)。著者の知識が単に更新されていないだけ、というよりは知らないだけなのだろうが。
46ページ「大正12開業 昭和8調布大塚と統合 雪ヶ谷大塚に改称 昭和41雪が谷大塚と表記変更」
先にもふれたように、雪ヶ谷大塚への改称時期を誤っている。
以上、というかこれだけしかない。雪ヶ谷大塚への改称時期と奥沢線関連、あとはレミィ五反田くらいのものだが、たったの4ページでしかも半分以上が図版であるので、逆の見方、つまりこんなにあると言えなくもない。
というわけで、前回と今回の二回にわたって「図説 鉄道パノラマ地図」(ふくろうの本)における目黒蒲田電鉄と池上電気鉄道に関連する部分の誤り等を示した。本書のメイン著者(編者)と思われる石黒三郎氏は、鉄道関連(歴史も含む)にはあまり詳しくない…というか、ふくろうの本の性質上、詳しい解説が書けないだけかもしれないが、他部分を読んでも「自分の言葉」で書いているように見えない箇所が多い(だから編者か?)。沿線案内の図版は確かに面白いのだが、解説文が今いちなのである。そして、本書の最後の方には次のようにも書かれている。
126ページ「各駅の開業・移設・改称などの年度および路線距離は、「日本鉄道旅行地図帳」(監修・今尾恵介 新潮社)を参考にした。本書掲載の沿線案内には、発行年が記されていないものが多かったが、「日本鉄道旅行地図帳」の記述によってその多くを推定することができた。」
なるほど。誤りの多くは「日本鉄道旅行地図帳」に起因するのか、ということで近いうちにこの書籍についても、誤り等を調べてみるとしよう。といったところで、今回はここまで。
