【本記事は、かつて存在した XWIN II Weblogに2012年6月11日掲載した記事をほぼそのまま転載したものです。】

 

時と共に読み方が変わるのは、以前にも当blogにおいて様々な例を挙げてふれているが、今回も同様のネタである。今回ターゲットとするのは、当blogでのメインコンテンツの一つと言っていい池上電気鉄道(東急池上線)がらみで、現在も東急池上線の駅の一つ「千鳥町」である。これは「ちどりちょう」と読ませているが、この駅名は1936年(昭和11年)に池上電気鉄道を合併した目黒蒲田電鉄によって慶大グラウンド前から千鳥町に改称されたが、この時から「ちどりちょう」とされている。

 

では、どうして千鳥町という駅名が採用されたのか。それは当時、この駅の位置は東京市大森区調布千鳥町にあり、ここから採用されたものである。だが、この町名の読みは「ちょうふちどりちょう」ではない。「ちょうふちどりまち」が正しいのだ。

 

 

これは東京市が周辺町村を合併した1932年(昭和7年)10月に、新たに大森区が誕生し、この時に命名された一つが調布千鳥町だが、この読み方について以前ご紹介した「特別区町名町区総覧」や同時代資料「大東京市全区町名便覧」においても、「ちょうふちどりまち」と読ませているのである。これは大森区に合併された町の一つ、東調布町が大森区の町として再編成された際の新町名を見れば妥当であると判断できる。

  • 田園調布一~四丁目(でんえんちょうふ)
  • 調布嶺町一・二丁目(ちょうふみねまち)
  • 調布大塚町(ちょうふおおつかまち)
  • 調布鵜ノ木町(ちょうふうのきまち)
  • 調布千鳥町(ちょうふちどりまち)

ご覧のとおり、「町」が付かない田園調布を除くと、すべて「調布~町」形式であり、いずれも「町」を「まち」と読ませている。よって、このことから調布千鳥町は「ちょうふちどりまち」と読むのではないかとなるわけだ。

 

しかし、その3年3か月後に改名した駅名は「千鳥町」と書いて「ちどりちょう」と読ませた。これは西武鉄道における「江古田」を「えごた」ではなく「えこだ」と読ませたり、かつての小田急の駅「大秦野」(現 秦野)を「おおはたの」(現 はだの)と読ませるようなものか。あるいは「ちどりまち」というと語呂が悪い?ということで「ちどりちょう」としたか。はたまたまったく別の理由からなのか。

 

ただし、当初は「ちょうふちどりまち」や「ちょうふうのきまち」が公式の読みだったにもかかわらず、いつしか「ちょうふちどりちょう」や「ちょうふうのきちょう」に変わってしまうこともあり得る。結局のところ、現在の住居表示による町名は単に「千鳥」(ちどり)となっているので、千鳥町を「ちどりちょう」と読ませたところで弊害はない。まぁ、そうはいいながら、駅名による公式読みを駆逐しただろうと思いつつ、今回はここまで。