1965年7月に米英でシングルとして発表され,その後,同名映画のタイトルともなった「Help!」。
 これまでの他愛ないラブソングから内省的になり始めた歌詞,いきなりのシャウトで始まる出だしから,かけ合いのコーラス,サビのハモリといいほぼ完璧なキラー・チューン。
 と言いたいのですが,僕がどうも気になるのが,ジョンが弾いていると言われる12弦アコースティックギターのリズムです。
 リンゴのドラムス,ポールのベース,サビで出てくるジョージの下降するギターフレーズのどれもがとても歯切れのよいリズムを刻んでいるのに,このギターだけ,なんだかずれたストロークをしているように聞こえてなりません。


 ジョンは本来,とてもリズム感のあるギタリストです。「All My Loving」の三連符のストローク,「Roll Over Beethoven」でのリズム・ギターといい,テクニカルではないものの,彼のギターのリズムが曲全体を引っ張っていく力を持っていると思います。
 ところが,この曲でのリズムは一体何を弾いてるのかよく分からない。


 思うに,ジョンがデビュー以来,よく弾いているリッケンバッカーは,指板が狭くコードが押さえやすいと言われています。なので,おそらく彼は,セーハ(人差し指などで複数の弦を一度に押さえること)など弦をしっかり押さえるのは得意ではないと思うのです(ホワイトアルバムに入っている「Julia」という曲でもアコースティックギターのコードチェンジが今ひとつきれいでない)。他方で,12弦ギターは弾き慣れていないうえ,コードが結構押さえにくいこともあり,リズムが刻みにくかったと思うのです。


 まあ,大ヒット曲ですし,この曲を悪く言うビートルズファンはいません。ただ,僕は12弦でなくてよいので,「Run For Your Life」で弾いてたような歯切れのよいアコースティックのストロークがよかったな。
 どうよ,プロデューサーのジョージ・マーティンさん?