はじめて,意識してビートルズを聞いたのは,確か小学校6年生の終わり頃,「プリーズ・ミスター・ポストマン」だったと思います。
 当時のラジカセはもちろんモノラルで,この曲を,AM放送で聞いたのです。
 ただ,当時の僕は,映画音楽特有の華麗なストリングスのほうが好きだったので,この曲にそれほど心を動かされたわけではありませんでした。


 ただ,その数日後,またラジオでたまたま「ヘイ・ジュード」を聞いて,「うん?」と少しづつ心が動きはじめたのです。

 特に,あの長い,壮大なエンディングに,「数日前に聞いたプリーズ・ミスター・ポストマンとはえらく違うな」と新鮮な驚きがありました。
 小学校6年生は,1975年から1976年にかけてだったので(同年4月に中学1年生),ビートルズ来日10周年ということで,(今ほど大げさではありませんが)少しブームだったのかもしれません。


 そして,中学に入った僕は,1年生の夏頃から,母親の友人の勧めでクラシック・ギターを習いに行き始めました。「カルカッシ・ギター教則本」という,今でも本屋に並んでいる本でギターを始めたのです。それまで楽譜が全く読めなかった僕は,ここで一挙に楽譜に対するアレルギーがなくなりました。


 そんな中学1年の夏のある日,確か土曜日の午後に家にいた僕に,仕事帰りの父から電話がかかってきました(当時はまだ週休2日ではなく土曜日は普通に仕事がありました)。

 「ビートルズのレコードはいるか?」
 父は,流行っている歌謡曲程度は聞くものの,音楽,特に洋楽ロックのようなものには全く無縁な人なのですが,なぜか突然このようなことを言ったのです。このことは未だに謎です(父も全く覚えていないそうです)。
 確か,「最初の頃のか,後のほうか」,つまり赤盤か青盤のどちらにするかを聞かれたと思うのですが,よく分からない僕は,まずは始めから,という律儀な考えだったと思うのですが,赤盤を選んだのです(ビートルズ解散後に,「1962年~1966年」(通称「赤盤」)と「1967年~1970年」(通称「青盤」が出たのです)。


 そこからの僕は,赤盤をそれこそすり切れるまで聞きました(もちろん今でも持っています)。ここで完璧にビートルズの虜になったのです。
 また,このレコードを買った前後に,初めてビートルズの楽譜を買い,メロディを単音で弾いてみては,悦に入っていました。当時は,レコードと同じ音が出るだけでとても新鮮に喜べたのです。