関東大震災の後、朝鮮人などが虐殺があったとされる映画「福田村事件」を見た。
監督は森達也。一連のオウム真理教を追ったドキュメント作品で有名な監督である。
そのほかにも、
タブーに迫る実際に起こった事件や人にスポットを当てることを信条にする。
この「福田村事件」も史実をベースとた森監督初の劇映画である。
配役がすごいと思った。
ここに集まった俳優陣は、みんなが森監督にシンパシーを感じていることは間違いない。
井浦新と田中麗奈、戦争によって心が離れてしまった夫婦を。
東出昌大とコムアイ、戦争中の孤独感が結びつけた不貞関係の船頭と未亡人を。
ピエール瀧と木龍麻生、新聞の役割をめぐる金とメディアの矜持と確執。
永山瑛太、被差別部落を率いるブライド高きリーダー役を。
戦争中も、それぞれに感情があり生活がある。
その中でも、特筆すべき存在感を持っていたのが水道橋博士だ。
小さな体に大きめな軍服、なにかと現体制の論理を吐き出す歪んだ唇、
思わずお前は朝鮮人に違いないと叫んでしまう右翼的言動。
だけど、少し前は彼も善良な農民だったのだ。
水道橋博士は、戦争という環境のなか強い自警団団長役になりきっていた。
現実には真逆の人なのに、そんな役をやった。
だからだろう、彼は鬱になり体調を崩し当選したばかりの議員をやめた。
こんな状態では役に立たないだろうと。
ぼくだって、そんな環境に置かれたらわからないと思う。
戦争によって、どんどん思考は狭ばり、
しまいには考えることすら、やめてしまうのてはないか。
そんな恐ろしさを感じる映画でもあった。
評価85点
※映画としてみた時、詰め込みすぎたという印象も残った。