ずいぶん、ひさしぶりに小説を読みました。


川上未映子「すべて真夜中の恋人たち」という小説です。





なにかロマンティックな題名だから、それに作者の川上さんも


NHKのトップランナーかなんかに出てたし、TBS王様のブランチ


にでてたのを見ていたから、(なんていってたかも忘れてしまった


けれど)どこか興味を持っていたんです。





 

  すべて真夜中の恋人たち
    いつだってXTC
川上未映子






この小説で描かれているのは34歳の独身女性。


主人公といえないくらいドラマ性がない。少なくとも映画にはなりにくい。


「校閲」というひとのミスをを淡々と探しだす仕事をもっている


作品を味わうなんてこともなく、いや、味わってはいけない。


縁の下の力持ちというのか表に出ることはない地味な職業だ。


外見も、美人といえなくもなくけど、地味な存在。


目立たないようにして生きてる34歳の女の人。








(僕はなんとかイメージを持とうと冬子を女優に当てはめた。


その女優は「深津絵里」。ユーモアのある役ではなく、「悪人」のときの


恋人も友達もいない孤独な店員役の深江絵里)





この小説には


あるたくらみがあるような気がした。


川上未映子さんのひとつの思考実験・・・





孤独といえば孤独な女性、


恋人も、友人も自らは求めない。


でも、なんとなくひきずられてしまう自分もいる。


セックス経験もないに等しい。優柔不断といえば、そうなんだろう。


自業自得といえば、そうなんだろう。違うとはいえない。





そんな女性の恋愛とは?


一瞬のきらめきとは?


光りとは?音楽とは?愛とは?





どんな風に感じるのだろう。


どんな妄想を描くのだろう。


どんな会話をするんだろう。


どんな夢をみて、どんな風に目覚めるのだろう。





川上未映子は「冬子」エキスを振り絞る。


僕も同化と異化をくり返しながら、引きずられていく。


キラキラとしたことばにめくらましにあう。


スローダンスにように踊る。


優雅ではないけど、不器用な踊りだけど、


ここちよい余韻が残る。





評価A