世界観シェア企画(http://share2012.web.fc2.com/index.html) 参加作品③
イメージ元は常冬の国『シュヴァイスラント女王国』。
凍りついた海の上を、ただただ歩く一人の騎士。
彼は歩きながら、故郷の詩を暗唱します。何度も何度も。
そしてそれが終わるころ、ようやく。一度は捨てた祖国の姿がそこには在るのです。
この地に神など存在しない。
その真理に我々は生きながらに嘆き、
死の淵に立たされる間際になって初めて
その事実が安堵すべきものであり、
暗澹冥濛とした我々の内面――
水面に咲く一輪の花と知る。
この身に魂など宿りはしない。
その真理に我々は生きながらに揺らぎ、
虚ろな境界線の上に横たわる。
土のかおりも、草木の声も、
いまや積年の白に飲み込まれ――
波音を最後に聞いたのはいつであったか。
この地に神など存在しない。
その真理に我々は生きながらに生き、
死の淵に立たされる間際になって初めて
その事実が安堵すべきものであり、
幾星霜の夜の中――
流した涙の熱を知る。
ある日、子どもが死んだ。
遊びに行くと声を掛け、そのまま消えた。
夜になっても姿の見えぬ子を追って
親たちは血眼になって外を巡り、
そして最後に行き着いたのは
もはや機能することも無い波止場の一角であった。
波止場の氷に大きな穴が、空いていた。
ちょうど子ども一人が通れる程度の
それを見つけた大人たちは
ある種の諦観とともに呟いた
「連れて行かれてしまった」と――
私は尋ねた――「誰に?」
大人たちは答える――「冬に」
この地をあまねく覆い尽くす白の名前。
その名の前には人間などかくも無力であると
誰もが知っている魔性の名だ。
すすり泣く声が聞こえる
子どもの名を叫ぶ声
戻らぬ何かをこれでもかと手繰り寄せ
裂けた命の名前を呼ぶ
ヨアヒム、ヨアヒム、ヨアヒム――
ひとしきり悲しみが通り過ぎると
彼らはまた諦めたかのように帰路につく
帰ってはこないもの、返事をしないもの
死はいつでも我々の傍に在り
そしていつでも我々を悪意に欺く
今でもその波止場へ赴くと声がする――
親たちの嘆く声と
それに反比例して響き渡る
あのあどけない子どもの声が
いつまでも いつまでも
氷の割れる音に沿って、軋む命の音に沿って