昼。

強い日差しがコンクリートを白く照らしていた。


ソウマはスマホの画面を見つめていた。

そこには、びっしりとグラフィティーで埋め尽くされた街の写真。


「ここ…すごすぎるだろ」


思わず声がもれる。


その場所の名前は――ニューヨーク。

カズさんが前に話していた、グラフィティーの中心だった街だ。


「こんな場所が本当にあるのか…」


その日の夜。

ソウマは夢を見た。


気がつくと、知らない街に立っていた。


夜の空。

ネオンの光。

遠くから聞こえるサイレンの音。


壁という壁に、色とりどりのグラフィティー。


「ここ…ニューヨーク?」


ソウマはゆっくり歩き出した。


どこを見ても、絵、絵、絵。


名前のような文字。

キャラクター。

メッセージ。


「まるで街全体がキャンバスだ…」


そのとき。


「初めてか?」


後ろから声がした。


振り向くと、フードをかぶった男が立っていた。


「ここは、自分を残したい奴らが集まる場所だ」


男は壁を指さした。


「有名になるため。仲間に認められるため。理由はいろいろある」


ソウマは壁に近づいた。


ひとつひとつの絵に、名前がある。


「これ全部…人の想い?」


「そうだ」


男はうなずいた。


「ここではな、どれだけ多くの場所に自分の名前を残せるかが勝負なんだ」


ソウマは考えた。


「でも…消されることもあるんじゃないですか?」


男は少し笑った。


「当たり前だ」


「だからこそ、また描く」


その言葉に、ソウマは息をのんだ。


消えても、また描く。


それでも残したいものがある。


ソウマはノートを取り出した。


そして、ゆっくり書いた。


LOVELETTER


「消えてもいい。でも、誰かの目に一瞬でも届けばいい…」


ソウマはつぶやいた。


その瞬間、景色がにじんだ。


気がつくと、朝の自分の部屋だった。


窓の外には、いつもの静かな町。


でも、ソウマの中には確かな何かが残っていた。


「世界で一番多い街って…ただ多いだけじゃない」


「それだけ、伝えたい人がいるってことだ」


ソウマはノートを閉じた。


新しいページのタイトルはこうだった。


「数じゃない、その奥」


そして、物語は次へ進む。