華やかな初便就航行事、そこへその人が来れば他の趣味人たちが集まって来て、その人の周りでは一層華やかさが増す・・・かつてそんな旅客機趣味人がいた。

 初便のみならずラストフライト、そしてイベントフライトの多くに参加し、幾つかの印象的台詞を発して旅客機趣味界一部から初便搭乗界の巨匠と呼ばれるに至ったその方がが亡くなってもうじき10年。

 そこでイベントフライト頻繁参加者が集って巨匠の功績を改めて称える会合を持とうとしているのだが、そこではかなり面白い話が出そうというか、我が国の旅客機史を改めて振り返る一大機会になりそうである。

 この時のフライトに於ける巨匠の様子は?という題目があっても参加者は主に自身のことを語るかもしれんが、それでいい。巨匠いるところに他の趣味人がおり、個々が当該フライトを語る、それによって旅客機史が綴られていくのだ。

 

 私が巨匠と本格的に言葉を交わしたのは2003~2013年の10年間に過ぎないが、その間にイベントフライトとその前後に於ける巨匠の特徴的なところは割と見てきたつもりでいる。

 その特徴は2つあって、1つは現場での盛り上げ。巨匠自身初便とかラストフライト前のその現場の独特の雰囲気を好み、それを味わうのが醍醐味と言っていたのだが、そこでの周囲との軽妙なトーク・お笑いが初便またはラスト行事特有の落ち着かない現場に加わる。

 もう1つはその前後に於けるSNS記述。事前に友人たちと期待感を膨らませ、事後には楽しかったことを振り返り、当該イベントフライトの記憶を定着させる。要は仲間でフライトを盛り上げるということで、これって2020年代に入った今では見られるかどうか。

 

 私も巨匠と同じ便に乗ることもあったが、とにかく当人がいたら面白さが増す。また自分が乗らなかった時でも、ネット記事やSNSを見ていたら面白そうな感が漂いまくる。

 それに直接話を聴けば、自分がその場にいるような気にもさせてくれることがあった。特に巨匠を含む3人によるANAトライスターのラストフライトの話は、当該便に私は乗っていなかったけれど聴くだけでも楽しいものだった。

 

 趣味人と触れ合う機会が多かった巨匠ゆえ、イベントフライトに対して様々な視点からの見方を知っていたと思う。メディア対応にも慣れていて、こう言えばオンエアされる等を知っての言動だったし、それゆえ書き手にとっても趣味者を唸らせる記事を提供してくれたことだろう。

 そんな巨匠が他界し、その頃は大きな喪失感に包まれたと思う。それが数年を経たら哀しみを通り越し、遂には趣味者がボヤくようになった。例えば2019年5月のANA A380就航には必ずや巨匠が搭乗したと思われ、記念行事が執り行われる場やホノルル行き機内は盛り上がると容易に予想されるところなのに・・・。やはり、ボヤきたくもなるわい。

 

 けれどもそんなイベントフライトの様相もだいぶん変わってきた。

 新会社・新路線・増便等以外では、当該便予約開始が2ヶ月あるいは2ヶ月14日前の9:30とか、先得先行予約開始日11:00とかの一斉スタートではなくなり、「早々に始まっていた予約開始後のある日ある時」。

 ANA A380やJAL A350-900初便予約がこれに該当し、既に幾らかの予約が入っているところの残席へ趣味者が殺到。それまでの半ば常連でも席を取れない事態が見られ、当然ながらそこへ集う客の顔ぶれも以前とは異なって、中には先に予約していた普通の移動客の姿もあった。

 

 趣味界の様相なんて時間とともに変わる。それに元々乗ることなんてのは個人趣味で、皆で集まってわいわいというものでもなし、というのは私の考えでもある。けれども独特の雰囲気をもたらしたり、主催する航空会社スタッフとのやりとりがあったりするのもそこでは重要であると考える。

 巨匠健在の時代は趣味人どうしや航空スタッフも交えた交流が空港・機内でよく見られた感じがしており、たまたま近くで巨匠と知人が固まれば節度を保ったうえで何やかんや、面白い光景であった。そんな様子のネット公開はまだ限定的な頃でもあり、往時の様子は記憶に留まるのみというのが惜しいが。

 その楽しさを改めて思い出し、その記憶を今後につなげてもらおう。そういう意図を以って表題の会の準備が進めばいいのだが、その会が設けられた時そこに集う旅客機趣味人の顔ぶれにも興味津々。

 待て、私が参加というなら幾らか想像がつき、すごそう。

 

(画像はスターフライヤー関空就航行事)