ORCがDASH8でクリスマス遊覧飛行を12月23日と24日に実施、と知人から我が家に連絡が入ったのは11月17日深夜のことだった。

 両日とも20:20出発で約40分のフライト、料金8000円、予約は11月23日から・・・ORCのDASH8に安く乗れるチャンス!行きましょう!と思い立った私は予約日の朝7:00に電話する。

 かつてANA元日フライトに乗ろうと電話したがまったくつながらず、以降このテのイベントフライトはつながりにくいと思うようになり、例えばANAの元日フライトはその後も続けられているが、予約できないだろうと私の眼中から消えた。しかしORCとなれば話は別。とにかく挑むことだけはしておこうと思って掛けたら、すぐつながって私は12月24日のを予約。定員33名の枠内に入れた。

 

 かくして2005年12月24日(土)、私は単身で長崎県大村市へ向かう。しかしながらクリスマス遊覧飛行に男子1人で搭乗なんて・・・いやいや1人で行かねばならない。何故なら私はORCにとってのサンタクロースになるつもりなのだから。

 17:30にはORCカウンターに来たものの、遊覧の搭乗手続は19:00から。けれどもANA・JALカウンター同様にクリスマスの飾り付けが施され、ホワイトボードには遊覧を知らせるイラストが描かれていた。

 一旦その場を離れ「角煮まんじゅう」の試食や夕食を取る。角煮~はほんの一切れだけなのにかなりのボリューム感があり、そこへ夕食に「ヘルシーちゃんぽん」を食べたものだから、おかげで腹が膨れた。これが後で私に試練を呼ぶことになるのだ。

 

 19:02搭乗手続き開始。カウンター前で待っていた私が1番だが、既に座席が決まっており2Aであった。とはいえ私は機窓より客室模様に興味があるのでそちらが見える席をリクエスト、したのだがグループ客などを配慮した席がもう決まっていた。でも私は2Bに。この席はCAとのお見合い席なのだが、通路側席がそこしかなかった。

 ORCクリスマス遊覧飛行関連イベントは搭乗手続き時から始まる。この場でQ200のスペックが記された搭乗証が渡され、乗客ポラロイド撮影。またボーディングパスにはリボンシールが貼られている。

 

 当該便フライトナンバーは721便で、サンタクロースに扮したスタッフから教えてもらうに、コールサインは「オリエンタルブリッジ721」。

 以上のようにカウンター前にいたらORCスタッフが私に挨拶して行く。宮崎就航の時に会ったスタッフなのだが、なんで私如きを憶えているのだ??さらに「大井さん」と私の名前まで呼んで現われたスタッフも。

 この場でその方から遊覧飛行のコンセプトなどを教えてもらい、それは「楽しんでいただくこと」。また乗務するCAは2人。ここへまた新たにスタッフが来て、私へ「宮崎就航に来られていましたね」。皆なぜそんなに憶えているのだ??

 

 他の乗客も搭乗手続き・ポラロイド撮影を済ませるが、どどっというようではなく、ぱらぱらと来てはチェックイン。何せ定員33名だけで、まだ締切まで時間があるとならばこうなってしまう。

 私は搭乗待合室にて遊覧飛行客の動向を見るが、こちらも「ぱらぱら」。客層の主体が旅客機趣味者ではなく普通の人たちという証しで、ついでに単独で乗ろうとしているのも私だけのもよう。

 

 搭乗が始まると、ある程度の人数がまとまって改札を通る。複数連れ・家族連れがおり、年齢層は幅広く、その様を見届けスタッフとエプロンへ向かった。

 そこへの通路にもORCによるクリスマス飾り付けが施され、こちらにもクリスマスを盛り上げる姿勢がありありとうかがえる。良いクリスマスだ、と思える私は幸運な人物なようで、前日は荒れ模様で天候調査までかかっていたらしい。今日でよかった。

 

 聖夜のエプロンにたたずむDASH8、そこへ乗客が歩いて向かう。ステア下ではグランドスタッフとCAが立ち、コックピットからは機長が手を振っている。

 さあ1人参加の私も乗り込もう。クリスマスなのに野郎一匹、ではない。私は「ORCスタッフとともに飛ぶのだ」と自身に言い聞かせている。

 

 「オオイ様、今日は宜しくお願いします」とCAからいきなりこの台詞、なんで俺が大井だと判る?? 2Bに座ろうとしたら、ありゃクリスマスケーキが置かれている、本物だ。しゃーないから2Aに座ると、もう1人のCAから「私たちにとって、とても大切なお客様だとうかがっております」。さらに「飛行機についてとても詳しいとのことで、しっかりお話を聞くように言われています」・・・この台詞に私も固有名詞を出して反撃だ。「それ、△△さんが言うたんやな~!!」。

 ケーキが片付けられ20:23ランプアウト、CAアナウンスに合わせてサンタ衣裳をまとったもう1人がエマージェンシーデモンストレーション。

 ランウェイ32進入機の灯りが見えるがこちらが先に離陸、時に20:27。上昇中に左旋回、長崎空港からだと南西に位置する長崎市街上空へまず向かった。

 

 山々の上を飛び、稲佐山を越えたらそこは長崎市街、あそこは大波止。旋回するDASH8の左右の窓から長崎の港や街の灯りが臨める。

 次に機首を北へ向け速度を上げた。20:39にベルトサインが消灯、客室では景品抽選会実施で、ORC DHC-8モデルもあって欲しい~と思ったが外れ。3月のAMX 5周年でもAMX DHC-8モデルが当たる抽選会があったがこちらも外れで、今年は連敗に終わった。

 ここで2人のCAに質問「この機体のレジは?」、JA801Bであった。また本フライトでは高度3000フィートまで上がったと後で機長から聞いた。

 老若男女がいる客室ではサンタCAが写真撮影に回る。これもまたクリスマス遊覧飛行らしい光景なり。

 

 ハウステンボス上空に来たのは20:45。あっ!打ち上げ花火だ!当遊覧飛行はハウステンボスの花火に合わせて運航スケジュールが組まれていたのだ。へぇ~、花火を上から見るとこんなんか。あたかも宝石の野に咲く華の如し、とはいい過ぎか。

 この光景を左右両側の乗客に見せるべくDASH8は旋回。私はこういうのが本来なら大好きなのだが、体の具合が変だ。角煮まんじゅうとヘルシーちゃんぽんで満たされた腹が揺れる~。けれども私はましなほうで、ファミリー連れの中の子供がしんどそう。もちろん2人のCAはケアに当たった。

 

 妙な腹具合であるものの、空中での貴重な時間を無駄にすまいと暗い側にも目を凝らすと、ハウステンボス上空なのに長崎空港滑走路の灯が見えていた。

 JA801Bは機首を南へ向けて進み始める。もう帰るのかな、いや長崎空港上空を通り過ぎたようだ。「何とかスパです!空港の上です!」正確には「サンスパ大村」というレジャー施設なのだが、先の稲佐山とかここで「スパ」と私が叫ぶので、2人のCAから私がどこに住む客なのかと思われた。

 諫早市街上空を周回し長崎空港へ帰る721便。20:59にベルトサイン点灯、ランウェイ32着陸は21:01だった。

 

 降機すれば乗客全員にORCからクリスマスプレゼントが渡されるという。ならば、私からもORCにプレゼントだ、私がサンタになる時が来た。

 CAに封筒を手渡す。中のものを取り出して見た時、当該CAの表情が一変した。もう1人のCAもそれを見て笑顔をこぼし、クリスマスカード作戦は大成功。

 最後に機長からアナウンス、いやクリスマスのメッセージ。客席からは拍手が沸き起こっていた。

 

 エプロンに降りてプレゼントを受け取った後は乗客それぞれがJA801Bの前で記念撮影、その様子をORC社長もこちらへ来て見ていた。私も記念撮影といこう、機長・副操縦士・2人のCAの合計4人へ向けてパチリ。

 さて感想を訊かれた私が答えたことは「見所が多く、それらすべてを目にしようとしたのでめちゃくちゃ緊張した!」。

 そう、旅客機趣味者は短時間フライトであればあるほど、機内では慌ただしくそして心を張り詰めて過ごす。写真を撮り、機窓・客室を眺め、時刻を記録し、ヘディングを方位磁石で確かめる。本日の721便34分弱も同様であった。そのため・・・クリスマス期間中の特別包装キャンデーをリクエストするのを完全に忘れていた。