それを体感すべく、2023年8月27日(日)に私は長野県へ。

 前夜千曲バスで阿部野橋を発ち、当日朝5:50頃に上田駅着。7:00過ぎ発のSR1系列車に乗り、小諸で同系列車に乗り継いで7:56軽井沢着。ここから折り返し10:30発「ろくもん」で長野駅へと向かう。

 発車、ポイントを渡り終えて加速、その揺れ様に私は「ああ、やっぱり115系だ」。

 

 私が評判を見聞きするに於いては、高評価が多数のしなの鉄道観光列車「ろくもん」。いわゆるドーンデザイン車でもあるが、その件を含めても私の関心を引く列車である。

 いつかそのうちにと思うものの、長野あるいは軽井沢へ大阪からどうやって行く?JR特急「しなの」は2011年には車内販売がなくなり、そんな特急に乗るくらいなら高速バスか普通列車で。

 等々案じていたら感染症流行でまともに運行されなくなり、それが落ち着いた2023年夏にようやくGOとした。なお東京回り北陸新幹線経由で行くことは、遠回りし過ぎるので眼中に無し。

 

 「ろくもん」乗車地軽井沢。とにかく駅で2時間を過ごすが、SR1系「軽井沢リゾート」発車を見たいので9:30頃にはホームへ入っていた。

 青いボディ、2両編成。後方車内は回転クロスシートが長野側を向き、乗客はまあまあ。前方車内のシートは向かい合わせそしてテーブルがセットされ、一部席には食事ボックスが置かれていたが、客はおらず。またサービスアテンダントもおらず、新型車両の有料快速では食事付きプランで乗っても乗客が黙々と食べる様を想像出来た。

 

 115系普通列車の入線・発車を経て10時過ぎに「ろくもん」車両が回送されてきた。先の普通列車と同じく115系3両編成だが、片側3扉が2扉へと改造されており、そして私の第一印象は京都丹後鉄道「丹後あかまつ」に似ていること。乗ってはおらず見ただけの富士山麓電鉄「富士登山電車」にも似ているが、これは塗装を見ての話し。そういえば「富士登山電車」も3扉→2扉への改造だったな。

 ホームから私が乗る1号車クモハ115-1529の車内を眺め、そこでも「丹後あかまつ」を彷彿させるが、これらはデザイナーが共通しているから。私が乗ったドーンデザイン車では、富山地鉄「アルプスエキスプレス」2号車も同様。かくして地鉄・丹鉄・富士急線で同じような客室の車両に乗れる訳である。

 

 よく見たら、私がネット予約時に指定した17A席のテーブルには何やら書面が置かれている。全ての席にある訳ではないので事前予約者の席のみと推察。

 いっぽう10:20からホームにて発車前イベント、それはアテンダントがほら貝を3回吹いて出発を知らせるというもの。それを聴き、そしてドアオープンの時が来て手動で扉を開けるが、そちらはアテンダントの業務だった。

 席に置かれていたのはメニューと「ろくもん」ガイドで、後者は「丹後あかまつ」に於ける乗車証のようでもあった。

 

 腰掛は先述の通り「丹後あかまつ」の2人及び4人向かい合わせ席と似ているが、こちらの2人席背ずりにモケットが、4人席にはレザーが張ってあり、後者のその白色は「あそぼーい!」の白いくろちゃんシートを彷彿させる、なんて記すのは私だけか。

 出発前10:26には1号車車両中央でアテンダントがマイクを用いず案内アナウンス、加えて車掌から「心よりお待ちしておりました」と放送が入る。発車時にはホームでしなの鉄道社員と料理人が手を振るとアテンダントから聞き、ならばその様子を車内から撮るべく木のプールの所から窓へカメラを向けた。

 10:30にゆっくりと動き出し、そしてシャッターを押す。窓枠内に3名が手を振るところを収められた。

 すぐに腰を掛け、次は115系電車の乗り心地に注意する。加速及びその後の体感は、冒頭に記した通り。車内にはBGM、その音楽はIBEXエアラインズ機内を思い出させるものでもあった。

 

 1号車客だが、軽井沢発車時は4組7名。小諸から1部区間で1組2名の乗車があり、こちらの客への乗車証はガイドが手渡していた。

 軽井沢を出てしばらくすると私は進行方向右手の浅間山に見入る。山頂の雲が晴れ、稜線を一望した際の浅間山はやはり美しい。

 客室ではアテンダントではなく女性ガイドが車窓案内&車内販売を担い、案内する時の立ち位置は1号車乗客皆が聞こえるよう車両中央木のプール辺り、そこから出発前同様マイク無しでアナウンス。

 

 ぼちぼち車内販売カウンター利用とし、今朝からコーヒーをまだ飲んでいないので、ここではホットコーヒーを注文。軽井沢町のミカドコーヒーで、11:09にカウンターで400円払い、後に女性ガイドが席へ持って来てくれた。

 このコーヒーについては、カウンターにマシンは無く、予めポットへ入れてあるのを注ぐというもの。コーヒーを挽くのは地上だった。

 そしてガイドへ「長野県の列車でホットコーヒーを買って飲めるのは、『ろくもん』『かがやき』『はくたか』だけですものね~」と「ろくもん」でホットコーヒーを飲む感慨を伝えると、「『あさま』からはなくなりましたね~」と長野県内車内販売事情談義!

 

 幾つかの駅に停まり、私は編成写真を撮れるとあらば向かいのホームへ渡って写真を撮っていた。その時にしげしげと眺めたのは台車で、この金属ばね台車が空気ばねだったらなあ、169系の空気ばね台車を「ろくもん」へ履かせたらよかったのに等々思ってしまった。

 今朝から乗ったSR1系とこの115系の揺れ具合を較べたら、SR1系のほうが振動は少ない。前者は空気ばね台車を、後者は金属ばね台車を履いており、揺れ具合の少なさから空気ばね台車のほうがおそらく高価。よって115系は空気ばね台車を履く169系に比して安っぽい造りの車両だと思っているのだが、そういうのが観光列車用車両に、「ろくもん」に充当されるなんてイイのか??

 

 上のように不満を募らせる訳は、115系それから103系・113系・415系といった国鉄通勤形・近郊形が私には憎たらしい存在だからである。

 115系については高校の時にシートピッチ拡大車に宇野線快速で乗ってまあまあ好印象を抱いていたが、大学時代に函館本線711系で通学し、その後阪急電車ユーザーになると阪和線・大和路線の103系・113系の揺れが著しいと感じるようになった。

 そこで知ったのが台車であり、上記3系列は私鉄がバンバン空気ばね台車の車両を投入する昭和40年代以降になっても金属ばね台車のままで、見聞きしたところコストを低くするため。

 軌道や車輪の状態によっては空気ばね台車でも揺れる時はあるけれど、もはやそういう問題を通り越して「良い車両を造ろうとしたか」という気構えを見るのが私だ。さすればキハ58や暖地向けキハ40も金属ばねであるのだが・・・キハ58は急行形ゆえ一応上等と見るが、後者は上の3系列同然である。

 

 「この揺れが好いという鉄道ファンの方もおられます」・・・私が115系充当についてガイドへ言った時の返答であり、私は「そういう鉄道趣味者もいるのか!」とその層の拡がりを痛感した。

 でもそれってどんな人かと思い巡らせると、空気ばね台車車両ばかり乗っていて、旧国鉄金属ばね台車に乗り慣れていない層。要は私より年齢が下の趣味者で、そういえば私も小野田線へ省線形クモハ42に乗りに行ったなあ。

 年代によって好む・好まないが分かれると思われるが、少なくとも115系を支持する層は存在する。でもこれがつい最近まで主力だった姫路以西のJR電化路線なら、はてさてどういう評価になり、そして「ろくもん」車両のこちらにはどんな反応を示すやら。

 

 なお私は一応アンチ115系だが、今日「ろくもん」へ乗りに来たのは「それでも話題の観光列車」という要素が大きい。

 そして乗っていて思うのは、乗っていたらやはり観光列車としての安定感があるということ。

 調べたらしなの鉄道線内は85km/hが最大で且つ実際速くは走っておらず、よって自身の車内移動に支障が出る程の揺れに非ず。

 座っていたら観光列車、でも車両は115系。感じられるその揺れもアトラクションだと思えば、115系充当もまたよし。

 それに国鉄ディーゼルカーを改造した観光列車は「かわせみやませみ」など幾つかあるけれど、国鉄の直流近郊形電車を改造した観光列車は「ろくもん」だけで、実は希少価値があるのだ。

 あ、「ラ・マル」213系・「ウエストエクスプレス銀河」117系もそうだったし、JR東海にも117系の何かがあったような。では「ドーンデザイン観光列車では」としておこう

 

 しなの鉄道篠ノ井以南に乗るのは、信越本線時代を含めて今回が4度目。1989年8月・1997年7月・1997年10月以来で、26年前の10月は軽井沢→小諸と上田→篠ノ井で、この時がしなの鉄道初乗車。車両は赤と銀をまとった115系だった。

 往時は沿線車窓を見るだけだったが、今日「ろくもん」でガイドから「聞かなければまず興味を持たなかったであろう」ことを聴き、これも収穫だった。具体的には同鉄道で最も標高が高い駅が信濃追分、小諸城は城下町より低い所に在る、しなの鉄道本社は上田、等々。

 

 上のことを私は自席で聴き、時には立ち上がって車窓を見たりしていたが、これは自分のいるところがファミリーカーで立ち歩き易かったから。では2・3号車のレストランカーはどうかだが、私はそちらへ行ったのはスタンプ押しとWCを2度用いた時だけ。

 WCは3号車にあり、2号車を丸々通って行くのだけれど、食事プラン乗客は食事を楽しみ、通路は複数のアテンダントが配膳で往来。途中でギャレイがあって、いやはやそこは忙しそう。さっさと1号車へ戻ろう。

 食事とは無縁の私はこう思ったが、同時にファミリーカーが最ものんびり出来るのではという思考へ至った。尤も自分がレストランカー乗客だったら、まったく異なる考えを持ったかもしれん。

 

 上田での停車は少々時間のあり、ホームで記念撮影ボードを用いた撮影会が催され、食事が一段落したのかそこにレストランカー客が行列を作っていた。またそのホームでは「みすずあめ」販売も行われていた。

 その後も1号車の販売カウンターへ次々と客が来て、そこではガイドが応対。

 いっぽう私は長い停車ではいずれもホームへ出て車両撮影・販売品を眺めていたが、六文銭まんじゅう販売実施の戸倉ではホームにて軽井沢以来アテンダントと言葉を交わした。内容は車窓撮影のことで、窓越しにホームの様子を撮るには窓枠の大きさを考慮せねばならない云々。なおアテンダントとのやり取りはこの時が最後だった。

 

 戸倉で1号車ガイドは女性スタッフから男性スタッフへと交替。千曲川を越えるのに際し、「長野県では千曲川、新潟県では信濃川」も旨を聴いて、「なんで新潟で『信濃』なんだ~」と思ったのも「ろくもん」アナウンス効果である。

 そして篠ノ井からJR信越本線へ、途端にスピードが上がり、それこそ115系揺れを体感。最後の最後で「より、それらしく」なったというべきか。

 再度車両に対するボヤきを発しかけたが、これはもうしゃあない。「ろくもん」乗車時は、この際割り切って旧信越本線走行を楽しむべし。

 今日みたく天気の好い時には空・山・川を堪能出来、その車内ではホットコーヒーを飲める。鉄道による充実した移動を楽しめる訳だが、その車両が115系であることが全国的に珍しく、ひょっとしてこれが「ろくもん」のアドバンテージになっているのか!