曇天の中を飛ぶJA802B。日曜朝の長崎→福江の乗客は10名で、DASH8客室にはゆとりある時間が流れていた。

 雲の下に出たら福江空港は近いという訳で、私には2002年4月1日以来の着陸となる。おや鬼岳が右手に見える、ということはランウェイ03進入?等々を2人のCAと話すうちに機体は右旋回、鬼岳・福江空港を同一視野に入れてからファイナルアプローチ、10:11着陸。長崎空港からの67マイルの飛行時間は19分だった。

 

 と、ここまではORC/オリエンタルエアブリッジにとっては通常・・・でもないな。ANAとのコードシェアが始まって長崎発ではこれが3便目、というのは乗客の様子を見るだけでは実感は湧かないけれど、この便にはORC社長と「行事開催要員」としてのCAが客席にいたのが少々特別であることを匂わせる。

 エプロンへ降り、3人並んで歩く社長・CA・私、ただしこの後社長とCAはオフィスへ、私は到着口へ。後刻出発行事で顔を合わせる段取りになっている。時に2009年11月1日(日)、ORCが新たな局面を迎えた日である。

 

 その新しいこととは上述のANAとのコードシェアで、ORC全便にNH4600台便名が付与され、ANA設定運賃でORCに乗れるようになった。それに伴い搭乗手続等は長崎もここ福江もANAカウンターに統合され、こちらのORCカウンターの灯りは消えていた。

 加えてORC収益改善を図って、福江~福岡線が2003年8月以来の復活。その第1便がこれから乗るORC34便であり、ORC就航路線変動としては2005年3月長崎~宮崎開設以来に当たるので、私はそのスタートの様子を見にここへ来た次第。

 

 しかしながら福江~福岡ORC復活とか増便とかの案内は1階カウンターには無く、上の通りORC側の灯が消えただけ。搭乗口の飾り付けもまだ無く、後で復活行事の準備をするだろうと思っていたところ、搭乗ロビーへ報道陣がやって来た。

 ORCスタッフも来たと思ったら、それは私を知る方。私からは昨夕長崎入りしサンスパのネットカフェで1晩明かし、今朝は5:55に空港入りして壱岐往復の後でここへ来たことを伝えておく。

 館内呼び出しアナウンスが入り、呼ばれている中に私がいるではないか。保安検査を逆行し1階へ行けば、ウェイト&バランスの都合上私が指定した2A席を後方席へ替えてくれとのことだった。よって10Bに変更し、再度2階搭乗ロビーへ戻るが、これって空きが多いってことじゃないのか。

 

 折り返し福岡行きとなる長崎からのDASH8が着き、結局行事準備が施されないまま搭乗案内が入った。飾り付けなしの搭乗口通過となるが、2002年ORC福江乗り入れ時に大々的行事をしているので、今回の静かさは十二分に納得できる。

 だがその後でCAがアナウンスを入れ、社長が改札前に立ってORCがANAとのコードシェアで福岡へ飛ぶ旨を告げる。ANA便名が付くからには同等の基準を満たし、等々の意が込められていたが、DASH8キャビンの快適性がジェット機のそれに劣らないことも言及された。

 

 この模様を撮るメディアはTV2社、旅客機趣味者は初便搭乗界の巨匠、堺市からの趣味人、大阪市からの私を含めて6名。大勢の来賓・関係者と見栄えのあるゲートが用意された宮崎~長崎開設時にいた趣味人は、相模原南西空友会会長と私だけだったが、それはその日が月曜日だったから。対して今日6名もいるのは日曜日であるからか。

 しかしながら飾り付け無し、そして挨拶を述べるのが社長だけ。傍から見たら質素な出発・・・けれどもそれが逆にオリエンタルエアブリッジの沸々とした意気込みを感じさせる。

 改札をSKIPで通れば記念品を頂く。エプロンへ降りたら趣味者らしきはDASH8ほかの撮影に興じ、私もその模様を撮る。通常と違うのはやはり趣味者の存在であろう。

 

 使用機材はJA801B。ステアを上がってCAへ挨拶。「お元気でしたか!?」と言う当人とは実は3年ぶりの再会だったが、俺はしょっちゅう会うとるような気がする。最後列10Bに腰を落ち着けたら同列にはメンテスタッフ・行事担当CA、近くに巨匠がいた。

 さてこの位置からランプアウト時に見送るスタッフを見られるのか?「どっち回りで出るんでしょうか」とCAへ訊けば席を替わってくれて私は10Eに。11:10左回りでランプアウト、おお右窓側の向こうにスタッフ・関係者が大勢並んでこちらの出発を見送っている!

 

 ランウェイ03を駆け11:15離陸。鬼岳を右後方に見送りながら上昇、曇天の下から雲の中へ入り下の景色はお預けとなる。加えてベルトサインも終始消えることなく、乗客は皆おとなしくするだけ。ただし10E・10Cを除いてだが。その2席はCAと私がいる所で、ルートマップを見ながら晴れていたらどんな景色が眺められるかを言い合ったり。

 いっぽう本日当便に関する話題だが、当該CAは以前の福岡~壱岐にも福岡~福江にも乗務しておらず、ORC DASH8で福岡へ行くのは今日が初。この路線が昨日までの長崎~宮崎114マイルとほぼ同じ113マイルで、現行ORC路線としては最長であることを強調する私だった。

 

 「オリエンタルエアブリッジとANAのコードシェア」の言葉は今朝からCAが言うのを聴いているが、11:26に入った機長アナウンスでも、高度11000フィート・時速510kmとともにコードシェアのことが伝えられる。なるほど、この路線のリピーターはANA路線としてのユーザーだったから、ORCが入った今日は機長からもこれがANA便であることも強調するんだなあと納得した。

 

 趣味人6名を除くそれらANAユーザーは、子供連れを含む様々な層が見られる。満席ではなかったけれど、そこにいる乗客は福江→福岡を39人乗りDASH8で飛ぶことにどんな感慨を抱く?

 思い返せば以前のORC福岡~福江は、ANKと往復割引は使えたけれどあくまで「ORC便」でANA時刻表には載っていなかった。今回からANA時刻表に載るようになったが、その背景には「ORC再生」がありORCには長崎~宮崎を一方で休止するなど、晴々しい福岡就航ではないことが私には少々辛いことでもある。否、そういう後ろ向き思考を抱くのならこの際開き直って、「ボーイング737とは違ったDASH8ならではの良さをアピールし、この路線でのORC志向が高まるようにしたらよい」と記しておこう。

 

 そしてCAと同じく私も福江~福岡は路線自体初搭乗で、どこを飛ぶか調べるべく方位磁石を眺めていた。マップだと福江~福岡を北東~東北東へたどっているが、磁針はいつからか南東~東南東を指ししかもその時間が長い。

 玄界灘へ出て右旋回したのかと思ったが、それなら海が見えるところなのに雲の隙間から見えたのは山地で、はてさてどこを飛んでいるのやら。

 左旋回してヘディングは北~北北西、下には水路がたくさん見え、ここって筑後平野の上?そのまま高度を下げ、福岡空港ランウェイ34進入。要は福江から真っ直ぐに福岡を目指していたわけではなかったということで、ともあれ11:49着陸。

 飛行時間は34分。これは伊丹~福江を除いて、私のORC路線最長時間搭乗である2007年7月長崎→鹿児島34分を上回る時間だった。

 

 ずっとベルト着用サインが灯っていたので飛行中にCAが巡回することはなかったが、降機時にキャンディを摘むことができた。

 この後エプロンに降りてもJA801Bにカメラを向けることもせずターミナルへ向かう、というのはスタッフを含む人の動きが今日の注目対象だったから。福江行きで、空港で、福岡行きでORCスタッフの言動を見聞したことが、「ANAコードシェア初日」「福江~福岡復活初日」の大きな収穫であった。

 いや、見所はまだある。折り返し福江行きの出発ゲートの光景は?DASH8と同じく行事担当CAも折り返しのようで、到着口へ向かわず搭乗口前へ、そしてそこには愛知県からの趣味人もいて、ORC福岡出発再開を待っていた。