伊丹発日本エアシステム689便は宮崎空港ランウェイ09へ着陸、外を見れば大阪では見られない塗装のボーイング737が目に入った。スポットへ入ると西日を浴びた件の737がこんどは順光で見られ、CAと窓の外をのぞき込む。

 その737こそ就航を翌日に控えたスカイネットアジア航空/SNAのボーイング737-400型機であり、時に2002年7月31日。

 

 6月24日予約受付開始。私も電話を入れたがつながらず、翌日午後に初日初便である112便搭乗希望を伝えたが既に満席。しゃーないなー、ま、今回は宮崎~東京なのでデビューを見届けるのは宮崎・東京の人たちに任せ、俺は大阪へ来た時のデビューを見たろ。とはいえ、一応その場でキャンセル待ちも伝えておく。

 同じく初便の席を取れなかった旅客機趣味界重鎮の1人はボヤき、1人はどうにかなるでしょと楽観、もう1人も取れるでしょうと楽観していた。私に至っては、SNAに乗りたくなれば当日早朝から空席待ちをかけたらええと呑気な、いや気合の入ったことを言う有様。

 

 時は過ぎ、7月19日にSNAから電話があり、8月1日の112便が取れたとのこと。ならば宮崎へGOだ。そしてそこで残った問題は、「初日出発7:50」に合わせ何時に宮崎空港へ出向くかということだった。  

 7月31日に宮崎空港入りすれば、まずSNAカウンターへ行き航空券を買う、つもりだったが聞けば訓練中でここが開くのは明朝から。では18:30まで開いている橘通りにある市内カウンターで買おう。

 JRで宮崎駅、そこから歩いて行けば、あ、737の看板!これはかなり目立つ。カウンターはその建物1階で、内装はウッディー調。航空会社というより旅行会社のカウンター、そんな感じがした。

 

 就航前日18:00頃のカウンターは航空券を買い求める人たちで賑わい、私も少々待つ程だった。発券の際スタッフから明日の初便ですねと言われ、「112便」ではなく「初便」というのが好い響きだ。朝1便ではあるけれど、スタッフにもデビューフライトという意識がある?

 「私も就航に合わせて空港へ行きます」「ほう、どうやって」。答えはクルマ、スタッフはやっぱりそやな。空港カウンターで訊いていたのは、ターミナルは6:30オープンでチェックインもその時から。でも私は就航初日朝の人の動きも見たいので6:00前にはターミナルにいたい、さてさて。

 

 18:30頃橘通りを歩いていれば見慣れた後ろ姿、それはやはり大物趣味人だった。宮崎空港は市街から近い、ということで明朝はタクシー。いっぽう私は同じく近いという理由で1時間半歩いていくことも考えているのだが。

 19:30に再度空港カウンターへ行き航空券購入済みを伝え、到着口にて全国から来るであろう旅客機趣味人及び趣味界重鎮を迎える。来た、大阪発ANA便から東京の・・・って何で東京発じゃない?聞けば出張があり、大阪・宮崎経由で帰京する行程を組んだという。東京からのJAS便では2人を見つけ、その後4人で市街へ移動。

 明朝のアクセスは、宮崎駅5:34発の日南線で5:43着の田吉駅まで乗りそこから徒歩で6:05空港入り、という案が有力になった。だが5:30入りを考える私は徒歩で行くこともありえるな。

 

 8月1日午前3:55、橘通り西2丁目のさらに西にある宿を出る。歩けばどれ位かかるかという好奇心から、遂に私は徒歩移動を実施。北の空にきらめくカシオペア座を背にして歩き、4:21宮交シティ横通過、東の空が明るくなり始めた。なお予報では日の出は5:28とのこと。

 4:49に田吉バス停通過、やがて空港ターミナルそしてエプロン西端のSNAボーイング737が夜明けの中に納まる光景が見られ、おお、SNAの黎明だと1人で悦に入っていた。

 空港入口の前でタクシーが並んでいたが、これは開門が5:30のため。だが歩行者用は通れ、結局私は5:10にターミナル入口前に来た。まだ宿にいるであろう趣味人へ公衆電話から連絡、田吉からの所要時間などを伝える。最後に「一般でおるのは俺だけや~」。

 

 5:30から車輛が入り始め、5:31にターミナル内の明りが灯った。スタッフも来て通用口から入っていくが、一般客は本日は6:10に入れるとのこと。

 私に続く一般人らしき人も来たが、実はその人はツアーズの方つまり関係者。続いて見憶えのある人、それはエアライン誌からのスタッフ。西宮からの趣味人も来たが、いずれも自動車による来港であった。

 6:00頃にタクシーで知人2人が到着、続いて6:05頃に田吉駅から2人が歩いて来た。タクシーで来た趣味人もおり、ターミナル玄関前は旅客機趣味界大物大集合。

 いっぽうSNAスタッフはなおも集まり、全員来そうな勢い。その制服にはフェアリンクのそれを思わせるピンクと青が用いられていた。一部スタッフは一般人用入口から入ろうとしていたが、私は通用口が開いていると案内、こんなに早く出勤するのは初めてというスタッフもいるだろうなあ。

 

 6:10になったがカウンターが準備中のため少し待たされ、入れてもまだ準備中。来賓受付テーブルが用意され、初日らしい雰囲気が伝わる中で午前6:30すぎ、SNAカウンタースタッフが搭乗客へ一斉に礼、搭乗手続きが始まった。

 慎重にキーボードを操作、私の席はリクエスト通り後ろから2列目通路側の24Cとなった。

 6:50に手荷物検査場が開て搭乗口前へ。既に報道陣がおり、その先にはテープカットの準備や記念ゲートが用意されている。私も報道陣の横でカメラを用意。

 来賓が着席し、関係者が並び、そして航空少年団が「就航おめでとう」と記したパネルを持ち、SNA下田社長の挨拶で就航セレモニーが始まったのは7:06であった。

 

 大阪航空局岩見局長、宮崎県松形知事の挨拶が続き、その後で花束贈呈。テープカットでは宮崎県に関するスタッフが並び、宮崎県民の翼が強調される感じでそれが行われ、7:21に行事が終了。

 上の途中で私を後ろからつつく人物がおり、誰かと思えば千葉からの趣味人、やっと来たか。前日に羽田から福岡へ入り、日豊本線夜行特急で宮崎入り、その空港駅着は6:57なのでセレモニーには少し遅れたのであった。その後で先月のA-net北海道デビューで一緒だった広島からの趣味人も来て、聞けば初便を取れなかったけれどセレモニーには来たいと夜行特急で宮崎入り。

 ボーディングまで少し間が開き、少年団の前で社長がインタビューを受けていた。やがて優先搭乗客が通り、一般搭乗は7:35に始まった。そうして私も入ろうかという時に横須賀からの趣味人に声を掛けられた。こちらもやっと見つかった訳だが、前日朝に宮崎へ来ていたが宿の都合で空港着が遅れたとのこと。加えてここで昨日市内カウンターで話したスタッフと会い、大阪線就航の際にまた来ると伝えておく。

 

 記念品の入ったSNA大型紙袋を頂き、中味は機内誌・宮崎産お米・737プラモデル・タオル。重く感じられるほどボリュームがあり、自分の荷物と合わせて東京からの帰りに乗るFairのCRJ持ち込み手荷物制限重量を超えるのではと心配になるくらいだった。

 搭乗券をもぎり取られ、ボーディングブリッジを進み客室へ。シートの色は違えど他社でしょっちゅう乗るボーイング737-400機内に変わりない、と思っていたがいざ着席すれば・・・違った。事前にシートのゆったり感が報じられていたが、今日こうして座ってみるとなるほどと思ってしまうぐらいで、前後間隔はもちろん、横幅もゆとりがあるようだ。

 日本の国内線で普通席座り心地ゆったり感が上位にランクされるのはYS11・MD90・DC10であるが、SNAの737はそれらを上回って日本一であると私は言い切ろう。

 

 暑い、これは朝イチでまだ冷えていないからか?ドアクローズし、7:57にプッシュバック、CAがセーフティインストラクション。なおCAはJTA・JEXが150人乗りで3名乗務のところをSNAでは4名、本日112便ではうち1人が男性である。

 タキシングは海側に向かっており、向きを変えてランウェイ27を滑走、8:06離陸。おお舞い上がった!だが、こういうめでたい時に起きる拍手は無し。デビューフライトを喜ぶ客層がいるかどうかだが、私の今回の結論は飛行機に関心を持つ者は多くはないということ。なお趣味人は、カメラを持っているので拍手できない者もいれば、控えめな人もいるのだ。

 

 上昇中の外の天気は好さそうで、離陸5分後の8:11にはベルトサインが消えた。注目のサービスはまずお菓子、続いてドリンクで、後方では2人のCAがサービスに当る。

 先に配られたお菓子は1個だけだが、それは袋に「祝就航記念」のシールが貼られたゴローズ製の芋菓子で、見かけはオリエンタルエアブリッジのお菓子に似ている。普通席にてドリンクだけでなくお菓子も出るのは現在では珍しく、これが続けばSNAは「選ばれるエアライン」になりそうだ。

 カートを用いてのドリンクサービスでは、ホットコーヒー・アイスコーヒー・ウーロン茶・オレンジジュース「日向夏」がSNA文字入り紙コップへ注がれていく。そのカートは他社国内線のような小型のものだが、搭乗時に見たギャレイは広く、国際線用大型カートも収納できそうだった。私のオーダーはアイスコーヒー、良い味だ。ところでびっしり席が埋まっているせいかカートの進みは遅かった。

 カートが戻って来てこんどは日向夏を頼んだが、なくなっており代わりにウーロン茶。

 

 乗客には大人だけでなく少年少女・家族連れが多く見られ、「いかにもビジネスマン」らしき姿は見られず。特に10代以下をデビューフライトで見かけるのは私には珍しく、空港で送っていた航空少年団と合わせ「少年少女」が印象に残った。なお知り合いの趣味人は前方後方窓側通路側に散らばり、ありゃ、皆座っておとなしくしているぞ。150席中私が見た空席は1つ、ただし幼児もいたので総数は150人を超えているだろう。

 キャプテンアナウンスでは就航の旨や巡航高度27000フィート等が伝えられ、続いて社長の挨拶、ここで初めて客室で拍手が起きた。。

 9:17にベルトサイン点灯、降下しているが外は曇っておりどこを飛んでいるのか不明。地上が見えたら知人がランウェイ22と言う。

 では接地すれば拍手しよう。迫るランウェイ、ドン、私は上げて拍手、知人がこれに続き、そして後方で拍手が広がり、この時中央部の少年少女が何事かと一斉に振り返っていた。着陸時刻は9:34、沖合いC滑走路側のスポットまでタキシング、停止は9:41であった。

 

 降機は前方ドアからで、その際に搭乗記念証が配られるという。豪華記念品・お菓子に加えまだ出るかあ。前方客が降りていく間少しCAと客室のことを話し、私は先に記したようなゆったり感のことを伝えた。「オーディオがありませんが」というCAに、私はああそうだったなと思い出す。いや座った時に思ったが飛んでいる間はすっかり忘れていた。何せ近頃はオーディオ無し機材に乗り慣れたせいか、それを気にしなくなったのが私であり、よってその件は私のSNAマイナス評価にはならない。

 ともあれ初日初便という特別なフライト、趣味人としては非常に楽しく、またシート周りの良さも知ることができるという収穫もあった。この場で普段のフライトの様子を推測するのは難しいが、敢えて記せば1人当りの空間の広さはどこにも負けず、状況によってはとても落ち着いた空の旅ができそうだ。

 いや、楽しいことがまだあった。CAが何やら持って来て、それはSNAシール、おおきにおおきに。そして前方ドア、搭乗証明書を頂き「おおきに」といえば「わ、関西の方ですね」続いて「こちらも関西出身なんです」と男性スタッフを指され、私はまたもや「おおきに」と言って笑い合う。そしてタラップから降りると大勢の報道がカメラを構えており、羽田乗り入れ新規参入3社目であることを強く伺わせた。

 

 旅客機趣味人は大変だ。宮崎発デビューフライトに続き、羽田発デビューにも乗ろうというのだ。既に112便機内で羽田発113便搭乗者は早く降りるようにとアナウンスがあった。羽田までの私も全日空側バスラウンジへ足を運び東京発セレモニーを見ようとしたが、ゲートへ着いた時は既に終わっていた。

 到着口から出たが、私たち4人は2階のSNAカウンターへ。それは大きくはないけれど便利な場所にあり、ここの様子を見ていると今朝会ったツアーズスタッフに会った。というか、実はここでツアーズの人と知った次第。

 展望デッキにいる知人から連絡があって、113便はまだ上がっておらず離陸に間に合うというので私たちはデッキへ。そこへ達した時、ランウェイ16LからSNAのボーイング737が飛び上がっていった。

 

 成田16:55発伊丹行きフェアリンク3111便は9割の入り具合。その中でもCAは私が乗った新エアラインに関心を抱いたようだった。私もCAと話すうち、SNAは新規参入組の中でも先発組とは異なる点があると思えてきた。

 既に報じられていることもある中でやはり注目することは、参入と同時に2機体制で1日5往復というフリークェンシーを用意したこと。時間帯が合わないから他社便にするというのが減るり、リピーターが増えそうな気がする。

 それにボーイング737という単通路機で、小さいのを逆手に取った「よりフレンドリー」な客室空間になることも期待される。CAが身近に感じられるエアラインは精神的支持者を集め、そういう人たちはそのエアラインを選ぶと私は推測する。

 ところで私は大阪市民。宮崎~東京を飛ぶSNAに通常では乗る機会を持てないが、この就航初便での好感触は持ち続けておこう。やがて就航するであろう宮崎~福岡・宮崎~大阪線でスタッフと再会することを楽しみにしながら。