2011年3月12日(土)、九州新幹線全線開業!鹿児島中央~新大阪を結ぶ九州~山陽新幹線直通列車「みずほ」「さくら」デビュー!
 その陰で前日まで九州新幹線を代表していた「つばめ」は九州内各駅停車型列車となり、運転区間も博多~熊本が主。さらに客室乗務はどの列車でも無く、この凋落ぶりに私は「もっと愛称を大切にしてくれ」と。
 そんな「つばめ」の名を有する列車に敬意を表すべく、1月末に「リレーつばめ」~「つばめ」で鹿児島へ行ったのだが、ダイヤ改正前に「リレーつばめ」でグッズプレゼントがあることを知り、また博多駅改装が仕上がったこともあって急遽九州へ。それは同列車ラストラン前日の3月10日(木)、JAL特典航空券空席の都合上「リレーつばめ」は熊本~博多往復となった。
 
 熊本空港からバスに乗り、JR乗車は新水前寺から。まずはこの駅発着も明日までという787系「有明」を撮り、後続の815系普通で熊本駅へ行けば丁度博多行き「リレーつばめ40号」に接続、私は5号車自由席へ。
 そのリクライニングシートの座り心地・客室内印象・走行感は、私の787系初乗車時である1992年9月から変わることは無い。やはり変わるのは車内サービスで、ビュッフェは2003年2月でなくなり以後はワゴンサービスだけとなったが、その販売商品には常に考慮がなされてきた。
 そして今日は「リレーつばめ」カードが希望者にギブアウェイ。これ目当てで来たのだが、名刺サイズながらも九州へ来た甲斐があったと思えるほどのデザインである。
 それから販売グッズ購入者にはおまけでステッカーも頂戴でき、787系ピンを買った時にもらったステッカーは、こちらもまた秀逸なデザインだ。新幹線「つばめ」と並んでJR九州を代表する列車ゆえ、そのラストへの思い入れが感じられる鉄道趣味者向け特製グッズといえよう。
 
 新駅ビルが開業したばかりの博多駅は、平日木曜の午前だというのに人出多数。それに感心しつつ向かう先は1階「つばめカフェ」で、現役客室乗務員が担当するというその新店舗をネットで知った私は興味津々である。
 みどりの窓口に隣接するそのカフェは食堂や喫茶店ではないけれど、一応腰を掛けて飲食できるスペースである。その現場で私が目を見張ったのは、800系電車から消される「つばめ」ロゴと、サハシ787カウンターを彷彿させる弧を描いたカウンター。
 それを外から眺めていたのだが、丁度そこにJR女性スタッフがおり、その眺めから思ったことを伝えておく。ついでに明後日から新幹線車内サービスについて訊くと、九州山陽直通「みずほ」にも乗務とのことで、1月末では詳細が判らなかったがここで私は初めて「みずほ」にもJR九州客室スタッフが乗務すると知った。
 大阪では「さくらクルー」と称されるFSN/フードサービスネットスタッフばかりがメディアで取り上げられ、新大阪~鹿児島中央全区間をFSNが担当のように思えていたが、博多で交替とも知らされる。
 
 初日新大阪発九州直通1番の「みずほ601号」指定券が取れず、私は「もうええわ」という感になっていた。ところがJR九州スタッフの客室乗務があるとなると、話は変わってくるではないか。
 思案しながら駅ビル屋上へ、そこでは「つばめ電車」なる遊園地豆汽車が走っている。SL型機関車が客車を牽引しているので、電車とちゃうやんけと突っ込みたくなるが、明延鉱山にも同様の「一円電車」があったのであれこれいうまい。
 特筆すべきは乗車等の世話を現役客室乗務員が担い、そして機関車には「D787」プレート。ここでは「787系つばめ」を残す姿勢がうかがい取れて好ましい。
 1階へ戻り「つばめカフェ」初利用、200円のココアをオーダーしテーブル席に座る。ん、この感覚は和歌山電鐵と同じだ。ともあれビュッフェにいるかのような感覚に浸ることもでき、こういう形でサハシ787でのサービスを再現してくれるとは嬉しい。
 その感慨をカウンターの「つばめレディ」に伝えたが、何かの拍子で明後日の話になり、こりゃ「みずほ601号」で九州へ来ようかという気になってきた。
 
 さて熊本経由で帰阪しようかと思ったら運休発生、理由は玉名で起きた人身事故。ただし後続の「リレーつばめ」はノーマルの見込み。
 それまでの間にこれも新規オープン「おもちゃのちゃちゃちゃ」ナントカを見に行くが、その場所はホームの端。大人単独では入れない幼児向け施設だが、その世話に当たるのはここでも客室乗務員で、話を聴かせてもらった男性スタッフからは「客室乗務員にこんなことまでやらせるのか、と思われる方もいるかもしれませんね」との言。
 そこからJR九州における客室乗務史が展開し、当人も昭和63年3月13日ダイヤ改正を知る身で、「ハイパーレディ」「オランダレディ」の話題で盛り上がる私たち。3両編成時代の「ゆふ森」は本当に席が取り辛く云々の話が続いた。
 
 1本前が運休になったので「リレーつばめ15号」は混むかと思ったがそうでもなく、タルト&コーヒーセットを飲食しながら鹿児島本線を進む。
 1月の800系と787系の乗車時に感じたのはその揺れ具合の差で、揺れの少なさは新幹線に軍配が上がるが、いっぽう在来線は熊本~新八代という区間だからかと思った。しかしながら本日の熊本~博多往復では熊本以北の揺れも同様、まあ乗客は座っているのがほとんどだから構わぬが、乗務員が慣れているだろうけれど大変そう。
 熊本駅には新幹線開業前々日の模様を伝える報道陣が来ており、夕刻のニュースでも同様。博多駅の昼間の人出、熊本メディアの期待感、やはり明後日の開業日には九州に入って・・・と思っていたら翌11日に東北地方太平洋沖地震発生そして九州沿岸にも大津波警報発令、祝賀ムードが吹き飛ぶどころかダイヤ改正当日の九州でも運転見合わせ区間が多数生じ、普段の移動すら困難に。
 
 そういう中で私は「みずほ601号」に新大阪→鹿児島中央を乗り通した。そこでワゴンサービスに何一つありつけなかったという無念さを、鹿児島中央駅における「指宿のたまて箱」展示会で晴らしていた。
 そして帰阪は博多まで陸路、福岡空港から空路というもので、鹿児島中央から博多まで九州内「さくら」グリーン車に乗る。
 11:53発「さくら412号」はJR九州持ちN700系8両編成。先の「みずほ601号」は西日本持ちN700系だったが、違いは判らん。
 さて博多までの1時間39分を過ごすグリーン車、いや1両まるごとグリーン席ではなく6号車に24席が設けられた「グリーン室」だが、そこはさすがに新幹線のそれだけあって重厚感が漂う。
 私としては「新幹線グリーン」の類は2010年5月に台湾高鐵の商務車に乗って以来だが、台湾のが明るい色を用いているのに対しこちらは暗めで、ぐっと落ち着いた感がある。そのグリーン室乗客は北上するにつれて増え、熊本以北の空席は僅かという印象があるほどの人気だったが、これが開業初日だからは不明。
 
 車内サービス体制は、JR九州客室乗務員が2人いてこれは改正前の800系6両「つばめ」から1名増。注目は本日から始まった新幹線グリーン車サービスで、1月の800系普通車では見られなかったものに「紙おしぼり」と「キャンディ」があった。
 ワゴンサービスも本日初めて見るが、搭載商品以外では1月と大きく変わったところは無いように見える。それはそれで安心感がもたらされ、私は「あんぱん&コーヒーセット」を購入、そのあんぱんは客車特急「さくら」ヘッドマークみたいなのが刻印されており、食べる前に撮ることが求められる。
 キャンディ詰め合わせ袋にはメッセージカードが入っており、「九州新幹線にご乗車下さいましてありがとうございます。平成23年3月12日、九州新幹線全線開業を迎えることが出来ました。今後も更なるサービス向上に努めて参りますので、どうぞ宜しくお願い致します。客室乗務員一同」と記されていた。
 私にとって、これがJR側から「全線開業」を伝える最初のグッズだった。朝からこれまで本当に静かな、且つ人出だけが多い初日だったが、このメッセージで僅かながら晴れやかな気になった。
 

 
 けれども冷静に返ると、本日全線開業九州新幹線効果は「2011年3月12日」という大惨事翌日に大きく発揮されているのが判る。
 もし新幹線が走っていなければ発令中の大津波警報のため鹿児島~福岡の鉄道移動は出来ず、今こうして博多へ向かうことができるのは今日新幹線が走っているおかげなのだ。
 その有難味を感じつつはたと気付くのはワゴン巡回が少ないこと。今朝の「みずほ601号」1号車には山陽区間でも九州区間でもワゴンは来ず、この「さくら412号」6号車でも1号車へ向かう時・戻る時の2回しか見ておらず、8両編成で乗客数増加いっぽう所要時間短縮となれば「リレーつばめ」のようには回れない、あるいは回りきれないのではないかと思えてくる。
 博多駅の行き止まり線に着き、降車後に2人の客室乗務員と挨拶を交わしてから私が向かう先は1階「つばめカフェ」。カフェオレを飲む傍らでカウンタースタッフを担うCAに「ここで客室サービスについて意見を言ってもよいか」といえば聴いてもらえることなり、私は先の「さくら」で思ったN700系車内サービスの忙しさについて少々コメント。
 
 それだけのつもりだったが、相手のCAの切り返しに私も対応すると長話になってしまった。理由は相手がベテランゆえ、またもやサハシ787ビュッフェメニュー史と「つばめカフェ」の意義についての話題。
 このため「さくら」の件が吹っ飛んだのではないかという懸念もあるが、それ以上に印象に残った言葉はこの場所で「つばめキャラクター」が復活したこと。そういえば「リレーつばめ」や800系では見ておらず、往時からスタッフには懐かしいものとなっていよう。
 今改正で「何も無し特急」に成り下がってしまった感のある新幹線「つばめ」。けれどもその名は、列車以外の所で大きく生かされているような気がしてきた。やはり「つばめ」はJR九州をシンボライズする名である。
 なお「つばめカフェ」は「つばめ」の伝統のみならず、JR九州列車サービスの伝統すら受け継いでいた。私服でカフェカウンターを担う女性は客室乗務員OGの方で、その始まりは「ハイパーレディ」!「俺、大阪駅のオランダ村特急展示会に行ったんです!」としっかり返した。