狼と香辛料ー3回/複数通貨貨幣論ー | 夜半の月

夜半の月

常ならむ 此の世と言えど あまりにも 想いはただに 夜半の月とは【自作】

徒然なるままに、医療や法律や経済や和歌などや音楽や映画やツーリングやエビアクアリウムについて書いて行こうと想います。研究者の目から見ての大学や受験についても書きます。

 

トレニー銀貨が改鋳で銀の含有量が増える事で儲けようとする話なのだが、なんかキチンと一国または一地域一通貨で無い複数通貨流通地域でどのように儲かるのだろうか?作品内で鋳潰しての換金は死刑と言ってたし、通貨は発行元の信用力が重要で含有量は一国一通貨で無いと意味が無い。何故なら他の通貨との交換などで吸収されたり、信用力の高い通貨の方が安心感から優位には立てないからだ。

また、この作品では銀貨しか出てこないが本来通貨では銀貨や金貨は価値が大き過ぎて日常の小口取引には使えないので大陸国家と衛星国家の銅貨や海洋国家や貿易国家の貝貨が中心に取引に使われていて、こんな貧乏行商人や飲食店や小売店では使われる事も手に入れる事も困難だろう。また国や地域や商売によって金貨と銀貨と銅貨の交換比率が違う事はよくあってこの作品に良く似た通貨制度の中国ではその為に銭荘という虚銀両の両替商が有ったが長期多額融資などは行なわなかったのと地域や商売毎に乱立していて資本の原始蓄積が行え無い上に信用力が無かったので近代に本格的な銀行などの金融機関が創れず経済発展の足枷となって植民地国家から外資頼みの下請け経済で未だに経済国家として独立出来ず新規技術開発もまともな装置産業も出来ない状態である。また納税の為の庫平両と虚銀両との交換比率は公定だったが虚銀両への換算は銭荘で行われて通貨の価値の一本化は困難を極めた。この作品世界で社会的発展が見られない上に経済も技術も停滞している原因に思える。

通貨の支配力とか言ってるけど裏付けとなる信用力を一切述べないのがこの作品の残念なところである。

 

 

参考リンク

https://www.seijo.ac.jp/education/faeco/academic-journals/jtmo420000001iji-att/218-hayashi.pdf.pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sehs/81/4/81_541/_pdf/-char/ja