経済学・経営学のための英語論文の書き方

アクセプトされるポイントと戦略

中谷安男 著

中央経済社 

 

 

 文系(特に社会科学関連)の英語論文を書く際のヒントが詰まった本

 

英語のMBAプログラムを始めて、英語で小論文(エッセー)を書いたことがないことに気づきました。

学生時代の英語の授業で多少書いたことがあったのかもしれませんが記憶の片隅にも残っていません。授業で参考文献に指定された論文を読み始めていましたので何となくのイメージはつかみつつも、全く持って書ける気がしなかったので慌ててAmazonで参考になりそうな本を探し、この本に出会いました。

MBAの授業の小論文を書くためだったので「経済学・経営学のための」というタイトルに惹かれたのが1番の理由ですが、小論文の基本はいつの時代も変わらないものの、トレンドで変化する部分もあるかと思い、できるだけ新しい本を探していてピッタリだったのがこの本でした。(いま改めてAmazonで探してみると、この2年間の間にも新しい本が出版されているようです。)

 

タイトルの通り英語論文で国際的な学術誌、ジャーナルへの投稿を目指す研究者、大学院生を主なターゲットとして想定されていますが、例文や類語集など、小論文にもかなり役に立つ実用的な本で、期末の各授業の小論文を書くときには教科書と一緒に必ず机の上に置いていたくらいです。

 

 

とにかく例文が多い!

 

本書には合計242もの例文が収載されています。これは人それぞれ好みの問題でもあるとは思いますが、私の場合、英単語も単語だけよりは例文やフレーズでの方が覚えやすいので(いわゆる、ターゲットよりDUO派)、例文がたくさんあるのは理解を早め、深めるのにとても助かりました。なにせ英語での学術的な文章の書き方に関する知識がほぼゼロなので、例文で使い方のイメージを掴めると、自分が書くときにも活用しやすいです。

 

 

類語の紹介もかなり実用的

 

本書の中でも特によく参考にするページには付箋をつけているのですが、その1つが「Part 1  Q10  I think はなぜ使ってはいけないのか」でした。"I think"は学術論文では避け、客観的な書き方にした方が良いというのは何となく知っていましたが、では具体的にどういう言い回しが良いのかというと、これという型を持ち合わせていません。

この章の中では、事象を断言できないときや主張を弱めるための技法としてヘッジ表現が紹介されていて、その中の動詞としてappear, indicate, imply, seem, tend to, suggest, be likely toと言った例が挙げられます。さらにこれらを使った例文も2つあるため、より具体的な用法を知ることができるのがとても助かります。

英文の場合、同じ単語の繰り返しはできるだけ少ない方がスマートで、もちろんそのために類語辞典もあります。類語を調べるだけなら類語辞典が良いわけですが、論文の書き方のヒントを得つつ、複数の言い回しを習得できるという点でこの本は秀逸だと思います。

 

 

ネイティブの表現に近づけられる(気がする)

 

本書の特徴の1つは実際に学術誌に掲載された論文100本などをベースにした、各単語の使用頻度の情報が提供されていることです。例えば、「Part 2 第5章 Introduction(序章)の書き方 <2> 」では、反意的な接合表現としてHowever, Although, But, Whileなどが紹介され、それぞれの使用頻度が216, 84, 54, 30という情報が一覧で見られるようになっています。帰国子女や留学などで英語に触れていないとこのあたりの使い分けが肌感覚として理解できていませんのでこういったデータもとても参考になりました。なおこの反意的な接続詞についてだけでも6つの例文が用意されています。

 

 

 

本書は論文の構成に従って章立てされていますので、最初から順番に読んでいくと理解がスムーズだと思いますが、目次を見て興味のある部分、知りたい内容をピックアップして読んでもすぐに役に立つと思います。この本を読んでから、普段のメールの書き方や表現のバリエーションもかなり増えました。仕事で少しフォーマルなレポートを書くときにも参考になるヒントがたくさん盛り込まれています。

 

ちなみに、私は普段のメールなどのスペルチェック、文法チェックには常にGrammarlyを使用していて、MBAのエッセーでも多用しました。Grammarlyも類似表現の提案などをしてくれますのでこちらも重宝しています。