『海外で結果を出す人は、「異文化」を言い訳にしない』
著者:グロービス、執筆:高橋亨
英治出版
いま海外駐在中の方や海外駐在が決まっている人はもちろん、海外と関わる仕事をしたいという思いを持つすべてのビジネスパーソンにオススメの1冊です。
オススメする理由は
①読みやすい
②ビジネスの基礎となるフレームワーク、考え方に触れられる
③参考文献が多い
④各章末に「問い」があり自分の考えをまとめやすい
ためです。
筆者は「文化の違い」がビジネスを進める上での壁にならないとは言っていません。実際、本書の中でも文化の違いが壁の1つとして紹介されています。
ただし「異文化」で問題を片付けてしまうことが、それ以外の、場合によってはもっと本質的な課題を隠してしまっているのではないか?という主張です。
筆者自身の海外駐在経験だけでなく、計7つの事例がより読者にリアルな感覚を与えてくれ、また読みやすい構成になっています。
本書は海外でビジネスをする際にぶつかりやすい壁とその乗り越え方、さらには海外でビジネスを進める上で必要になる基礎的なビジネススキルや考え方に触れるので、極端にいうと海外に関係のないビジネスパーソンにとっても学びの多い本といえます。
それぞれのスキルやフレームワークなどについて詳しくは述べられませんが、その分、参考文献が充実しているので興味がある部分や自分に関係しそうだなと思うエリアの理解を自分で深めていきやすい点もとてもありがたいです。
さらに、各章末にはその章で取り上げられた内容を自分自身の理解として落とし込むためのヒントとして「問い」が用意されていることで、本書からのインプットをアウトプットしやすい作りになっています。
本書の内容とは少しずれますが、以前、海外駐在員の間で「OKY」という言葉が流行ったことがありました。
「お前が(O)来て/こっちで(K)やってみろ(Y)」の略で、主に本社のカウンタパートや指示を出す部門に対して、「本社は現地の事情を何も分かっていない、そこまで言うならお前が来てやってみろ」という怒り(?)を同じ立場の人たちでシェアするときに使っていたことばです。
海外で仕事をしていると日本の常識では考えられないこと、日本では起きないことが起きることは多々あります。
百聞は一見に如かずで、いくら事情を説明してもなかなか全てを理解してもらうことは難しいのが現実です。
『沈まぬ太陽』ではないですが、インターネットや物流の発展のおかげなどで海外と日本の生活のギャップが以前より小さくなってきているとはいえ、海外での仕事、生活は日本とは違い、日々「異文化」を感じると思います。
ですが、仕事においては「異文化」というある意味で使い勝手の良い言い訳ですべてのことを済ましてしまうのではなく、本当に取り組むべき問題が何かを見極めるクセをつけるための良書でした。
本書の6章で少し触れられている「Planned Happenstance(計画された偶発性)」は私が以前からとても大切にしている考え方で、それがグロービス大学院が新たなフレームワーク(志の自覚)に取り込んでいることに興味を持ちました。「Planned Happenstance」はスタンフォード大学のJohn Krumboltz教授らが提唱したキャリア論における理論です。
Googleで検索すると論文のPDFも出てきますので興味のある方はご覧になってみてください。
※この理論を知ったのは『ラッキーをつかみ取る技術』(著者:小杉俊哉)という本でした。
一見、胡散臭いタイトルですが、キャリアをポジティブに楽観的に考えたい方には面白い本だと思います。