そのときがきて(福永令三「クレヨン王国のパトロール隊長」より) | 星垂れて平野闊く 月湧いて大江流る

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そのときがきて

突然 海が見える 春が見える

そのときがきて

何かが変わり

今レモン色の朝の旅立ち

季節の地図に 愛の歩みを

ひとあしひとあし

道は 新しい世界へ

 

そのときがきて

突然 あなたが見える 愛が見える

そのときがきて

何かが光り

今コーヒー色の黄昏の中

過去という名の落ち葉を燃やす

さよならさよなら

明日は 新しい世界へ

 

 

 

 「ドーン大尉、王子を頼むぞ。」

 そう叫んで、火の精の将校たちは、スージーのウマの前に立ち向かいますが、スージーのつるぎは、ザラン、カチンと火の槍をなぎ倒して、たちまち、ノブオとヒュードンの背に迫りました。

 「いけない!スージー。」

 ノブオが、向き直ってヒュードンを庇うようにした時、スージーの剣はノブオの肩先を斬りました。

 ノブオは、ヒュードンを抱くようにして倒れました。倒れた拍子にパッと面当てが飛びました。

 「スージー!いけない!」

 あっ、という驚きが、スージーの振り上げたつるぎの先を走りました。

 スージーは、つるぎを振り上げたまま、呆然とノブオの顔を見ました。

 「スージー、この人を殺しちゃいけない!戦いは許さん。ぼくはクレヨン王国のパトロール隊長だ!」

 ノブオは叫びながら、ヒュードンを後ろに放しました。ヒュードンは、逃げました。

 スージーは追おうとはせず、まだ、夢でも見ているようにノブオを見つめています。

 鬨の声が、次第に遠のいていきます。

 やがて、「何だって、ヒュードンを助けたの?」と言ったスージーの声は、普段のようになっていました。

 「ヒュードンを助けたんじゃない。君を助けたんだ!」

 ノブオは、強く言いました。

 「君を人殺しにしたくはなかった。」