派遣ユニオン第十四回定期大会でスピーチしてきました | 星垂れて平野闊く 月湧いて大江流る

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 以下、その原稿全文です~。

 

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 この度は派遣ユニオンの定期大会にお招きいただき、本当にありがとうございます。私はプレカリアートユニオンの執行委員の名倉マミです。

 私は二年前まで生まれ故郷の京都府に住んでいました。そこにずーっと住んでいても変わり映えがしなくておもしろくなさそうだったので、子どもの頃からの憧れだった東京に移り住むことにしました。

 仕事も辞めますと言って、引っ越しの準備をしていた頃、大阪のライブハウスでプレカリアートユニオン主催の映画上映と労使紛争の中間報告会があると知りました。皆さんのご協力で今年、解決を迎えることができましたけれども、その時はまだ渦中だったアリさんマークの引越社との労使紛争です。それ以前から「Change.org」でその話題は度々配信されてきたので、関心を持って見ていました。

 そのイベントに行って、私はべつにその時は労働問題で困っていたわけではないんですけれども、「よし、東京に行ったらこの人たちと一緒に活動しよう」と思いました。そうやって特に自分の案件がないのに入ってくる人っていうのは全くではないにしろあんまりいないみたいで、その場で清水委員長に声をかけた時にも、また、二ヶ月後、実際に事務所に行った時にも驚かれたのですが、私は「ご縁があった」というのはこういうことだと思って、感謝しつつ、自分に良い働きができるといいなと思って、今に至っています。

 全国ユニオン全体のアクションや催しにも、私はできるだけ参加するようにしていますが、派遣ユニオンとの関わりで印象深いのはやはり渡辺照子さんとの出会いです。

 まだ照子さんと面識がなかった内から、地球科学総合研究所との労使紛争の様子はネットで伝え聞いていました。照子さんご自身も言及されていますけれど、一部の無理解な人からすごい中傷・攻撃があります。私は自分の母親もシングルマザーで、ものすごい苦労をしながら私を大学までやってくれて、でも、これはあんまり言いたくないんですけど、私は同級生からハラスメントに遭って大学を中退してるんです。それでなかなか正社員としては雇用されなくて、どこに行っても半端者扱いで転々とする人生を送っていました。だから、照子さんが誤解や偏見に基づく攻撃を受けているのを見ると、自分の母親や自分自身が言われてるみたいな気持ちになります。その反面、本当に照子さんってすごい人だなあ、映画「カラーパープル」でウーピー・ゴールドバーグが演じた主人公のセリーみたいだなあと思います。この映画を観てない人は是非観て下さい。原作小説も読んで下さい。

 ちょっとお話変わりますが、全国ユニオンの女性委員会とプレカリアートユニオンとでアサーティブトレーニングの講習会を何回かやっています。アサーティブトレーニングというのは「自己主張訓練」と訳されます。労使関係でもそうですし、日頃の様々な人間関係でもそうなんですが、「あれっ、変だな」とか「嫌だな」と思った時に、怒りを爆発させるのでも我慢して黙りこむのでも、嫌味や皮肉や陰口を言うのでもなく、どのように巧く、相手に直接自分の思いや考えを伝えるのかを学ぶための講座です。

 その最初の講習会の時に、「参加者どうし、ペアになって下さい」と指示されてペアになった私の相手の人が渡辺照子さんでした。私はそれまで照子さんの顔は知りませんでしたから、お話を伺っている内に、あのネット上で話題の派遣労働の女性だということがわかって、ちょっと感動しました。知りあえて本当に嬉しかったです。全国ユニオンのアクションで何回か地球科学総合研究所の前にも行っていますし、全国ユニオン女性委員会主催のお話会の報告記事は私がまとめてプレカリアートユニオンの機関紙に載せました。

 また映画の話なんですけど、最近私が個人的に考えたことを述べて終わりにします。

 先日「ヒトラーと戦った22日間」という映画を観てきました。1943年にポーランドのソビボル収容所というユダヤ人絶滅収容所で実際に起こったことを基にしています。

 主人公はソ連軍で兵役に就いた経験のある人で、その人が収容所に送られてきて、たった二十二日間で他の人を指揮してナチスの将校を殺害して、全員で収容所を脱出します。

 理屈で言うと簡単なことで、収容者は数百人もいるのに、将校は十五人くらいしかいないんです。軍隊経験のある人が作戦を立てて指揮してくれるとはいえ、一人一人ばらばらにおびき出して袋叩きにして武器を奪えば逃げられそうな気がします。数の力、集団の力、心を一つに団結した個人の力というのはそれだけ強いんです。

 もちろん、私たち労働組合は暴力革命を目指しているわけではなく、経営者とか使用者とか社長とか、そういう名前の付く人を殺害して排除したり、資産を奪ったりしようとしているわけでもないので、そのストーリーとは結びつかないような気がするかもしれません。

でも、私は、収容所に入れられていたユダヤ人たちが「戦って勝つ、逃げ出すなんて、そんなことできるわけがない」「失敗すればもっと恐ろしい拷問にかけられて殺される」「大人しくナチスの言うことを聞いて、殺されないように、どんな惨い扱いにも耐えないといけない。それでも殺される時にはもう仕方がない」と思いこまされていた所、連日の虐待的な扱いによって、そういう精神状態に追いこまれていた所がポイントだと思ったのです。だからあの映画では、あんなにしつこく拷問や虐待の様子を描いたんだと思います。

 心理学では「学習性無力感」というらしいですが、今の日本の労働者はそうした状態に置かれていると思います。労働法やアサーティブなんて学校などでも詳しく教えてもらえません。最近やっと「不当労働行為」という単語が公民の教科書に載るようになったばかりです。大人でも「ユニオンなんか入ったら会社をクビになって終わりだ」と思っている人、何のために労働組合があるのかもわかっていない人が沢山いて、ほとんどの人が、一旦会社に入れば経営者の言うことをただ聞くしかないと思っています。

 さっき、ナチスの将校から武器を奪って、という話をしました。労働者にとって「死刑」が「解雇」、「虐待や拷問」が「長時間労働・未払い労働やハラスメント、減給や降格、左遷など」だとしたら、「武器」とは何でしょうか?

私は、労働法の知識やアサーティブの技術などがそうだと思います。労働者は奴隷でも兵士でも囚人でも家畜でも、餌食でも、犠牲者でもありません。私たちには闘う力と、不当な扱いを受けず人間らしく生きる権利があります。そのことをもっと多くの人に知らしめていきましょう!

 プレカリアートユニオン、これからも派遣ユニオン、全国ユニオンと連帯して頑張りますので、よろしくお願いします。連帯の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。