第二部
【第二夜:書記官フォーリャから友人へ宛てた手紙】
御無沙汰しています。皆さん、お元気でお過ごしのことでしょうか。
こちらは、もうすぐ黒蟻連の裁判の決着がつきそうです。約二週間後に控えた最終弁論の準備で事務所は大わらわです。
いろんな人に手伝ってもらってますが、それでも全然人手が足りず、ヴェスタさんもわたしも過労死しそうです。もしそんなことになったら結構シャレにならないと思います。
そんな時たまたま、聖地ミラーへの巡礼の旅の途中だという二人組に出会いました。同封した新聞の切り抜きを参照して下さい。本日付の「ポタカ日報」に載ったT.カチオさんの記事です。
昨日の昼間、ヴェスタさんが黒蟻連本部会館前で街頭演説をしていると、ボウ・ディーやら幹部連中が出て来て、カチオさんが詳しく書いているようなみっともない態度で恫喝したそうです。
生憎、わたしは居合わせなかったのですが、その時、その巡礼の二人組が偶然通りかかって、ちょうどリュシオルさんもゴミ捨てに出て来たので、みんなで話をしたそうです。
その二人はこの件にとても興味を持ってくれて、夕べ、「自由と生存の家」の食事会に参加してくれました。船が来るまで二週間、ポタカに滞在するというので、それまでの間、わたしたちの仕事を手伝ってもらうことになりました。
二人ともまだ二十歳前後の若さです。天使のように美しい修道士さんと、素朴で精悍な元軍人さん。今夜初めて来てもらいましたけれど、二人とも本当によくやって下さいます。おかげでこうして手紙を書く間も取れました。
といっても、あんまりゆっくりもしていられませんので、短いですけれど、今日はこれで。また近い内にお便りします。
虹の橋の下に、憎しみのない世界を願って
フォーリャ