鎌倉文士の香り
鎌倉八幡宮の脇に、以前は神奈川県立近代美術館として運営されていた建物が2016年に閉館となり、2019年からは鎌倉文華館鎌倉ミュージアムとしてリフォームされている。外観は変わらないのであるが、運営主体が神奈川県から鎌倉八幡宮に戻されている。日本に於ける近代絵画専門の美術館の閉鎖については地元のみならず、多くの美術愛好家から惜しまれたが、今は鎌倉文士の資料館として展示がされている。もともと鎌倉には明治以降、多くの文化人~それは文学のみならず絵画や映画・演劇など、多くのジャンルを含む~が集う町として発展を遂げてきた歴史がある。絵画館としての使命は終えたものの、ここに新たに文化館として残されたことはそれはそれで良かったのだと思う。 カフェ外観私は鎌倉市民ではあるものの、最寄り駅は大船で、鎌倉駅や西鎌倉駅に暮らしている「生粋の」鎌倉市民から見ると下町暮らしである。このため、そうしょっちゅう、鎌倉に行く訳ではないが、それでも正月や慶事、厄払いなどの際には鎌倉八幡宮に出かけるし、花の季節にはいろいろな寺巡りもしている。16日の土曜日、気温が上がり暖かくなる、という天気予報だったので家内と八幡宮にお札を返しに参拝してきた。その帰りにこの鎌倉文華館、およびそこに併設されているカフェに立ち寄った。コロナの影響が大きいのだろう、土曜日ではあるがあまり人は入っておらず非常に快適な空間となっていた。店内には2010年に倒伏してしまった八幡宮の大銀杏の一部が飾られている。室内に置かれたその幹は文字通り千年の香りを放っておりその太さには圧倒された。 圧倒的な存在感を放っている窓側の座席は日当たりがよく、この日は暑いくらいだった。ここでコーヒーを飲み、少し文庫本を読んでから文華館を参観してから帰宅した。このカフェ、このまま静けさを残してもらいたいと思うものの八幡宮に行かれる方には是非、寄り道してほしい場所だと思っている。これから八幡宮に行く時はまた立ち寄ろうと思うのである。