エルヴィスを観て来ました。
映画を観に行くに当たって、やはり50年代っぽい格好をして行こうと思ったのですが、アロハもボウリングシャツも自宅の方にあって、それらしいのがなく、仕方なく最近買ったフレンチリネンのシャツをフルカウントのジーンズにインして行きました。

しかし、映画館は予想に反してフツーのジジババばかりで、リーゼントのジジイなんて一人も居ませんでした。
もちろん私はエルヴィス世代ではなくて、エルヴィスが亡くなった1977年にやっと12歳でした。だから当時私にとってエルヴィスはフリンジの付いたジャンプスーツを着てポピュラーソングを歌うもみ上げのおじさんというイメージでした。本人のVTRをテレビで観るか、ベタなモノマネで観るかというぐらいでしたから。
それが高校から大学ぐらいにかけて初期の頃のエルヴィスを知って好きになりLPレコードを買い漁ったりしました。その後はCDのボックスセットを揃えたり、古い映画を観たりもして、一応初期の頃から往年のエルヴィスまで曲はだいたい知っているし、また知識としても一通りの基礎知識はあるつもりでした。
ところが今回の映画を観て、かなり認識を改めたところがあります。というか、知識として知っていても実感としてわかっていなかった部分が補完され修正されたという感じでしょうか。
例えば、テレビで腰を降ることを禁じられたというのも知っていたし、後でエルヴィス本人が語っていたインタビューの映像 (いや、'68 comeback specialかも?)も観た記憶があったのに、実際にその意味をわかっていなかった。あのアメリカがエルヴィスの歌いながらのダンスについて熱狂する若い女性とそれを嫌悪して規制しようとする大人で二分されるぐらいに保守的な時代だったとは実感としてありませんでした。また兵役に行ったことも知っていましたがその意味は知らなかったし、そもそもエルヴィスが黒人音楽に(ファッションにも)影響を受けたということは聞いたことがあったけど、それは単に日本人ミュージシャンでも好きなブルースのレコードを聴いて研究したというのと同じぐらいの程度で、まさか幼少時のトランス体験やBBキングその他のブルースミュージシャンとも実際に交流があったとは思っていませんでした。そういう意味ではとても新鮮で、前半のスターダムにのし上がっていくところまでは疾走感も伴ってホントに楽しめました(既視感があるような気がしますが。)。
あとは'68 comeback specialのビデオは大好きでしたが、これもこれまでカムバックの意味合いなんて全く知りませんでした。
今回、この映画を観てラスベガスのインターナショナル・ホテルでの常設公演に至るまでデビューからの一連の流れが全て繋がったのはとても良かった。
しかし、エルヴィスのデビューからの爆発的な人気の理由が彼の音楽的な評価よりも、パーカー大佐が見出だした見世物的な背徳の香りであるエルヴィスの踊り、すなわち現在ではポリコレ棒で確実に叩かれるミゼットやサーカスの見世物的な「人々が楽しんでいいかどうか戸惑うようなもの」にあったというのは少なからず驚きでした。もちろん、現在ではあんな腰振り程度ではモスリムのインドネシアでロマ・イラマすら激怒しないだろうし、アメリカではとても問題になるようなモノではないですが。
最後に「明日への願い」。
映画の中でケネディの暗殺で全米が悲しみと不安にうちひしがれてしまうシーンがあります。エルヴィスが癒しの為にこの曲を歌います。日本こそいまこの曲が必要な気がします。

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