なのは「今回は史料整理の一環だよー」

フェイト「?どういうこと?」

なのは「先月、夏コミの一日目に一般参加、三日目にサークル参加したんだけど、二日目は会場に行かず国会図書館に籠って懸案事項の調査と複写をしたんだよ。その複写史料の整理途中のお話ってことなの」

はやて「てきとーに投げっぱなすんやろw」

なのは「翻訳掲示板やツイッターだったらそうするけど、ここではちゃんとある程度のめどがついたものしか紹介しないよ(苦笑)。というわけで、1945年10月19日付島根新聞の広告なの」

 

 

浜田港から朝鮮へ帰鮮のため乗船御希望の方は左記へ御申込を乞ふ
 浜田市原井
 竹原組
浜田局私書箱二十六号

はやて「んー、朝鮮に帰還したい人はウチで運んだるでー、って内容やよね?」

フェイト「別に何の問題も無い広告だと思うけど…」

なのは「この広告が出た1945年10月って、軍人・軍属や徴用で内地に渡航した(応徴者)朝鮮人たちを優先して送還するよう定められていた時期で、SCAPIN139「THIS MESSAGE (ZAX 7046) CONFIRMS TELEPHONIC INSTRUCTIONS BY THIS HEADQUARTERS ONE FIVE FOUR NAUGHT ON ONE THREE OCTOBER DIRECTING THAT MEASURES BE INITIATED TO LIMIT AND CONTROL ENTRANCE OF KOREANS SEEKING REPATRIATION INTO SHIMONOSEKI CMA FUKUOKA CMA SENZAKI AND OTHER AREAS OF KYUSHU AND SOUTHERN HONSHU UNTIL PRESENT CONGESTION HAS BEEN RELIEVED:朝鮮人が送還を求めて九州及び南本州の一定地域に入ることを制限管理するための措置を日本政府が開始するよう指令した電話の確認無線電信」によって、混乱を防ぐため、内地在住朝鮮人の自発的帰国を抑制するように措置が執られていたんだよ」

はやて「!ってことは、この広告は政府とGHQの措置を無視というか出し抜く「密航」というか「密輸送」を堂々とうたっていることになるんちゃうん!」

フェイト「政府とGHQが「しばらく待て」と言っているのに、「朝鮮まで運ぶよ」と堂々と言っていることになるもんね…」

なのは「そうなんだよ。しかもこの広告は島根新聞の一面の最下段に載っているんだよねぇ…」

フェイト「あー、よく出版物の広告が載っているところだ」

はやて「この竹原組って、いったいなにもんで、このあとどうなったんやろな?」

なのは「そこまでは調査できてないの。でも、朝鮮人送還についてはこのように地方では中央の動きや姿勢、対応とは違ったものがあっただろうという前提で見ていかなければいけないな、とあらためて自省する機会になったの」

フェイト「これまではどうしても史料の制約から中央や大阪のケースを見てきたしねぇ…」

はやて「ほな、朝鮮人送還について全国各地のケースを逐一追っかけていかなあかんようになるで」

なのは「うん。まずは各地の新聞と公文書を調べていかなきゃだね」

フェイトはやて「(…うわ、ほんとにやる気だ…)」