写経屋の覚書-なのは「今回も『本市に於ける朝鮮人住宅問題』だよ」

写経屋の覚書-第120号_14
写経屋の覚書-第120号_15
写経屋の覚書-第120号_16


       三 住宅争議の真相
 朝鮮人住宅問題の中、借家難と相関連して都市生活の一脅威となりつつあるものは住宅争議である。而してその原因は家賃と借家人の不正行為、換言すれば家賃の支払、敷金の不納、無断転貸及び契約違反の四種に分類することが出来るし、又間接的はに(ママ)家賃の弾力性と支払能力、直接的には家賃支払意思の有無にその原因を求むることが出来る。即ち所得の少額なるがために相当の家賃を支払ひ得ざるものが存在すると同時に、他方所得を住居費に支出するを好まざる者の存在を忘れては到底朝鮮人住宅争議の真相に触れることは出来ないであらう。
 昭和四年一月より九月に至るまでの在住朝鮮人住宅争議に就いて見るに、次の争議一覧表に示す如く総件数一六一〇中、六六%に達する一〇四七件は家賃不払、敷金不納を原因とし、家賃支払能力と支払意思の欠けてゐることが如何に住宅争議の主因を為してゐるかが明白に窺はれる。
 更に住宅争議の原因中第一位を占むる家賃不払に就いて詳細なる観察を進めるに、総件数九一七中、立退料を給付したるもの一五四件、未解決のもの七二九件に及んでゐることは、住宅争議の悪化と解決の至難さを如実に示すものと解釈して差支へあるまい。
 
        A 争議の原因

(昭和四年一―九月府特高課調査)   

 解決未解決
 立退料給付給付せず居据
家賃不払154161872991757
敷金不納561115751579
無断転貸684610321714
契約違反12123714230219
其 の 他6137171
405301191,0561,610100


写経屋の覚書-はやて「…家賃不払いだけで917件!?1ヶ月に100件、1日に3件以上の割合なんてむっちゃすごいやん!」

写経屋の覚書-フェイト「でも、「家賃不払」「敷金不納」って、ほんとうに借家人が悪意を以て踏み倒しているケースもあるだろうけど、払いたくても払えないっていうケースもあるのかもしれないよ。全面的に借家人だけが悪いかどうかは速断できないじゃないかな?」

写経屋の覚書-なのは「たしかに情状酌量の余地があるケースもあるかもね」

 上述する如く住宅争議の原因中借家人の正当ならざる行為に帰すべきものに無断転貸と契約違反がある。今その両者について見るに、解決二七四件未解決二四五件、解決の内容は立退料を給付せるもの一八九件、給付せざるもの二件、居据り八三件にして結局金銭給付による解決が大部分を占めて居る状態である。
 要するに住宅争議が民事事件として簡単なる解決を望み難い結果勢ひ金銭給付に依る解決の方法を採るに至りこの傾向は極端なる借家難と相俟つて益々悪化し、中には内地人家主の朝鮮人借家人に対する感情を逆用して常習的に立退料をせしめるべく借家を転々するものさへ見るに至つた。そしてこのことが如何に善良なる家主階級を脅威するの甚しきかは、左にかかぐる新聞記事が最も雄弁に説明してゐる。

(昭和五年三月二十二日大阪毎日新聞所載)  

昭和五年五月廿日午後六時ごろ大阪天満の薬種行商人藤原義夫の妻と称する四十歳位の女が、東淀川区豊崎東通三の一五煙草商原安恵所有の同町南通四ノ六〇の空家を借りに来て敷金六十円を置いて立去つた。が翌日同借家には前記の藤原でなく鮮人数名が移転して来てゐるので、家主は約束が違うとて退去を求め表戸を釘づけにしたところ間もなく十数名の朝鮮人が押しよせて表ガラス戸を破つて侵入した。
家主側の話
あの人達には気の毒ですが朝鮮人に貸すと家を荒される上に附近の借家人が段々減るので、朝鮮の方は断つて居たところ今度のやうに内地人ををとりに使つて借りに来たのです。中には常習的に立退料をせしめるためにこの手段を使つて借家から借家へ転々としてゐる者も少くないさうです。
朝鮮人側の話
我々はこんな手段でも取らなければ内地人の家主は中々家を貸して呉れません、兎に角敷金は立派に支払つてゐるのですから当然この家に住む権利があります。

写経屋の覚書-なのは「ここで紹介されている記事はこれだよ」

写経屋の覚書-300322大毎

大阪毎日新聞 1930年(昭和5年)3月22日付
内地人が借りに来て朝鮮人が住む
  『それは約束が違ふ』と家主が家を釘づけ
廿日午後六時ごろ大阪天満の薬種行商人藤原義夫の妻と称する四十歳位の女が東淀川区豊崎東通三ノ一五煙草商原安恵所有の同町南通四ノ六〇の空屋を借りに来て敷金六十円を置いて去つたが翌日同借家には前記の藤原でなく鮮人数名が移転して来てゐるので家主は約束が違ふとて退去を求め表戸を釘付にしたが間もなく十数名の鮮人が押よせて表ガラス戸を破つて侵入したので中津署では関係者を引致して取調べてゐる
家主側の話 あの人たちには気の毒ですが、鮮人に貸すと家を荒される上に附近の借家人がだんゝゝ減るので朝鮮の方は断つてゐたところ今度のやうに内地人ををとりに使つて借りに来たのです、中には立退料を取るためこの手段を使つて転々としてゐる者もあるさうです
鮮人側の話 吾々はこんな手段でも取らなくては家を貸してくれません、敷金は払つてあるのですから当然この家に住む権利があります

写経屋の覚書-フェイト「記事引用と記事原文とでは所々で文章表現が違うね」

写経屋の覚書-はやて「うん。引用は『この手段を使つて借家から借家へ転々としてゐる者も少くないさうです』になっとるけど、原文やと『この手段を使つて転々としてゐる者もあるさうです』やで。引用の方は大げさに書いとるって突っ込まれるかもしれへんで」

写経屋の覚書-なのは「そうだねぇ。正確な引用をしないといけないよね。たしかに以下に見るようにこういう事件は少なくなかったんだけどね」

写経屋の覚書-270119大朝

大阪朝日新聞 1927年(昭和2年)1月19日付
家主脅迫の鮮人四名に体刑の判決
朝鮮人李春植(二十八)ほか同志の玄斗錫、実兄李鐘植、金洪紳らが鮮人住宅問題の解決を標榜して
 南大阪方面で新築の二階家とか洋館三階建などを借りうけ、表に蛇をつるしたり路次の入口や屋内に人糞を積み、あるひは大かまを据江家屋内を煙でくすべるなど家主をいやがらせ立退を命ずると五千円乃至一万円といふ法外な立退料を請求し、結局四十二件総計四万五千円を恐喝して昨年阿部野署に検挙されたが、十八日大阪区裁判所辻判事より李鐘植、李春植の兄弟は懲役一年半に、金洪紳、玄斗錫は各一年に処せられた

写経屋の覚書-はやて「いきなりえげつないのがあるで。『表に蛇をつるしたり路次の入口や屋内に人糞を積み』って…まるで地上げ屋やん」

写経屋の覚書-なのは「借家人が立ち退く際には家主のほうが立退き料を払わなきゃいけないの。で、それを目当てにわざと家を借りて迷惑行為を繰り返し、家主から立ち退きを要請されるようにもっていくんだよ。ただ、この場合は恐喝で逮捕されたっていうから、よほど下手を打ったんだろうねw」

写経屋の覚書-280627大朝

大阪朝日新聞 1928年(昭和3年)6月27日付
借家を封ぜられ 必死の苦肉策
  紛議の絶えぬ鮮人借家問題
 鶴橋署でも取締に悩む
大阪鶴橋署管内の鮮人居住者は現在六千人余を数へ府下第一位にあるが鮮人特有の借家紛議も一番猛烈で鶴橋署が昨年度に取扱かつた紛議件数は二百五十三件で三年度(六月二十日)までの現在件数は八十五件にのぼつてゐる、昨今は家主連も鮮人とみるとなか〱貸さぬので鮮人居住家屋は減少する一方であるが
 鮮人にとつて借家を封ぜられるのは死活問題とて必死になつて苦肉の策をめぐらし家主連に鮮人であることを感ずかれぬ巧妙な新手段を案出してまんまと借家を手に入れるやうになつてきた、四月末ごろから昨今に至る間頻々として丸髷姿の日本女が先家賃の契約で家を借りたがそれらは手数料を種に鮮人の手先をつとめてゐたものであることがわかつた、また康琪元といふ男は四月末から東成区猪飼野町吉田千代所有の空家に無断で住み込み明渡を要求されても尻を据えたまゝ動かぬので、家主が鶴橋署に訴へ出、同署で早速取調べたが、康は空家の守をする積りで入つたので畳、建具も自分で入れた、守賃を当方から貰ふべきで立ち退く必要はちつともないと嘯いて平然としてゐる有様にさすがの係官もあつけにとられたといふ
同署では今後このやうな新手段にそなへる一方家主連の同胞観念と鮮人の境遇に対する理解の涵養に努め鮮人達に対しては内地同化を力説指導して借家問題の解決をはかると

写経屋の覚書-281004大毎

大阪毎日新聞 1928年(昭和3年)10月4日付
立退料目あてに借家を渡り歩く
 内地人を手先に使つた
  家主泣かせの鮮人
借家受難の朝鮮人借家明渡問題で取調べ中、網島署に端なくも朝鮮人なるがゆゑに貸さないといふことを逆用して八人の家主から数百円の立退料を取りそれを生活費にして次ぎから次ぎへと転宅してゆく朝鮮人のあることが判つた――朝鮮人全羅南道生れ当時大阪市北区南同心町一丁目二九青木幸一事金学奉(二四)同杉本松太郎事林基成(三四)の両名は失業で困つてゐる内地人大阪市北区沢上江町十丁目四岡崎竹次郎(四六)及び大阪市東成区中浜町一三二横井定治(三七)を手先に使ひ紳士風を装はせ「友人の某会社員が借るのだ」と詐り契約させて住込んだが、家主が行つてみると内地人に貸したはずの家に朝鮮人が廿七、八人もゴロ〱してゐるといふ始末に驚いて「出てくれ」といふと「立退料を出せ」頑張り結局家主は早く出て貰ひたいから泣き寝入りとなつて立退料を出すそれをいゝことにして本年二月ごろから

住吉区東天下茶屋岩橋、北区東野田町二丁目竹村、同中野町三丁目中島、同与力町田節、東成区国分町島田、同小橋町大鋸等の

家主から立退料をせしめたのであるが岡崎、横井の両名は三円乃至十円の手数料を貰つてゐたもので同署ではまだ他にも被害がある見込で取調べ中である

写経屋の覚書-フェイト「朝鮮人だと警戒されるから日本人を手先に使うんだね。あ、手先っていうか、日本人の方も手数料を取って請け負うんだね」

写経屋の覚書-はやて「空家に勝手に住み込んどいて留守番料もらう方や!って開き直るのはちょっと笑えるなぁ」

写経屋の覚書-なのは「この時期の大阪では内地人も含めて全体的に借家争議が盛んだったんだけど、朝鮮人の借家争議の急激な増加もやっぱり問題になってたんだよねぇ」

写経屋の覚書-フェイト「当然、内地に来住する朝鮮人が増えたことも一因だよね」

写経屋の覚書-なのは「うん。で、朝鮮人に特有の争議が、この朝鮮人であることを隠して借家契約する事例だったの」

写経屋の覚書-フェイト「朝鮮人だから貸してくれないっていうこと自体は、それはそれでよくないと思うよ。でもそれに居直って強請り・(たか)りのタネにするのは、余計朝鮮人のイメージが悪くなるよね」

写経屋の覚書-はやて「つか、初期に来阪した朝鮮人が借家問題でよっぽどひどいことしたから、朝鮮人お断りになったいう可能性あるん(ちゃ)うん?なんぼ内地人に差別感情があるいうても、善良つか普通の朝鮮人の方が割合としては多いはずやろし」

写経屋の覚書-なのは「本文に戻ると、明白に「借家人の正当ならざる行為」として挙げられているのが「無断転貸」「契約違反」だよ」

写経屋の覚書-はやて「無断転貸?ああ、要するに又貸しやな。他人から借りた家を貸して銭取ろうっちゅう算段かいな」

写経屋の覚書-フェイト第7回に『来住朝鮮人労働者の中でも、唯、単に家を借り得たてふ一事で、成金になつたといふ話もある位である。即ち、家を借り得たものは、早速下宿屋をやる。さうすると、千客万来で、下宿人が殖江るといつたやうなものであつたのである』ってあったよね。下宿屋を営業するためなんて言わずに賃貸契約して借りるって事例なのかな」

写経屋の覚書-なのは「それは契約違反の方になるんじゃないかな。こっちは、家を丸ごと他人に貸して、その家賃収入と本来の家主に払う家賃の差額を自分の収入にしようってことだと考えるよ」

写経屋の覚書-はやて「表の「解決」欄にある「居据」って何なん?そのまま居座ったってことなん?」

写経屋の覚書-なのは「んー、「居座り」じゃなくて、滞納家賃の支払い猶予や減免、契約違反条項の改善等で問題を解決して、立ち退かずにそのまま居住を続けることになった、って意味に解釈する方が妥当だろうね」

写経屋の覚書-はやて「そやなぁ。でも、立退料を渡して立ち退いてもらうんが圧倒的に多いんやね。そら立退料目当ての商売もできるわ」

写経屋の覚書-フェイト「裁判などの争議が長引くくらいだったら、お金を払ってでも出ていってもらうほうがダメージが少ない、って判断なんだろうね」

写経屋の覚書-なのは「事業主としては裁判にかかる費用と時間と立退料を天秤にかけて、そう判断せざるを得ないってことはあるだろうね。じゃ今回はここまでにするね」

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