写経屋の覚書-なのは「今回も『労働調査報告28号 朝鮮人労働者問題』の続きを見ていくね」

     二 朝鮮人労働者と労働市場
 経済上の方面より朝鮮人労働者が問題視さるゝは、実に、労働市場における影響なりとす。朝鮮人労働者が、内地労働市場に於て、如何なる地位を占めて居るか、換言すれば、内地労働者が来住鮮人の為めに、如何なる競争を蒙りつゝありやを研究する事に依りて、朝鮮人労働者来住問題の調査を必要とする重大なる意義を発見する事が出来るのである。
 元来、内地へ来住する朝鮮人労働者は殆んど農夫であつて、何等機械工業労働の訓練も知識もないのである。従つて、彼等の唯一の資産はたゞ筋肉力を以て、直接にする、活動のみであつて、到底複雑なる生産工業の労働者として直ちに役に立ち難い事は勿論である。されば、朝鮮人労働者の内地労働市場に於ける、労働需給の方向は、重に、人夫、手伝、土方の種類であつて、職工、職工見習、徒弟等は比較的少数である。
 次表に示さるゝが如く、来住朝鮮人八万八千二百七十二人中、七万七千九百八十人は、筋肉労働者にして、其中、六万一千五百二十八人は、土方、人夫である。職工の主なるものは、紡績、機械、(重に女工一一五頁参照)硝子工にして大阪、兵庫、京都、愛知、和歌山等の府県に職工の多きはこの例である。
 学生精神労働者筋肉労働者其他の営業者及無職者調査月日
人夫職工
福岡県31149,8726201,73912,2766月末日
長崎県3531,59324951,7507月末日
佐賀県--5239435652-
大分県-11,27442371,354-
熊本県3-52976326406月末日
宮崎県--37315103986月末日
鹿児島県4-1441250210-
沖縄県--6118-
徳島県--19965210-
高知県--177271869月10日
愛媛県133422116275816月末日
香川県--2043624264-
山口県45504,1241065464,8716月末日
広島県3562,4913573303,2199月末日
岡山県9-567207578407月末日
兵庫県38132,7541,9477495,5016月末日
島根県--6764567368月末日
鳥取県--16218171-
大阪府431610,4717,5683,88621,9849月末日
京都府10542,2671,6201194,1159月末日
奈良県74490355959518月末日
和歌山県-2483597131.095-
滋賀県--449271-720-
三重県--6579257546月末日
岐阜県--3,4201743,4956月末日
静岡県1-1,179177691,4269月末日
愛知県4141,3351,3751542,8828月末日
長野県--3,817641043,9858月末日
山梨県--20833214-
福井県2-37821154163月末日
石川県2-2821643046月末日
富山県--96525111,0019月20日
新潟県112,6894512,737-
東京府6891392,8133352633,6099月末日
栃木県-16822-9110月25日
茨城県--212--21210月20日
千葉県1-776-849月末日
秋田県--52--528月末日
山形県17-112151359月末日
青森県--72-2749月末日
岩手県-218313189-
宮城県-12146--158-
福島県3-32388124269月1日
北海道1362,990332443,28611月5日
1,10129161,52816,4528,89088,262-

      備考 調査年は大正十二年
         調査月の記入なきは調査月日の報告なかりしもの


写経屋の覚書-フェイト「メインは単純肉体労働なんだね」

写経屋の覚書-なのは「うん、そのへんについては今後見ていく史料でも触れることになるんだけどね」

写経屋の覚書-はやて「大阪に職工が多いのは、岸和田や熊取といった泉南の紡績工のせいなんやろね」

写経屋の覚書-なのは「そうだね。で、職工が多くない理由について以下のように書いているんだよ」

 如何なる理由に拠り、朝鮮人労働者が、機械工業の職工として成長せざるや。調査者が、其方面の実際を調査せし感想を述べんに――

一 大工場と朝鮮人労働者
 茲に、改めて述ぶる迄もなく、現今の生産方法は殆んど分業である。而して、個々の生産品の組合せにより、或は各々独立の持場にある労働者の部分的加工の連続によりて、一つの完成品を産出する、所謂、労働分担(技術的分業)が普く大企業を支配して居る。この労力合同の生産経路に於て、何れの部分生産に於ても、不熟練労働の交らんか、生産品全体の価値を直ちに破壊する結果となるものなれば、分業の技術的方面に於ては、労銀の低廉なる不熟練労働者よりも、仮令労銀は高くとも、熟練労働者を求むる事切にして、殊に、手近の利益を挙ぐる事のみに汲々たる、経済主義的資本企業家が、不熟練なる、能率低き、朝鮮人労働者を雇傭して、実地養成し、以て、他日の熟練職工を生み出さんとするには、余りにも、朝鮮人労働者の素質悪しく、労力供給の払底なる時期なれば兎に角、熟練労働者さへ、失業に悩む、現在の労働需給状態の下にありては、到底朝鮮人労働者を容るゝ余地がないのである。加ふるに、身体を労する事より逃れんと努め、利の為めに流転常ならざる朝鮮人労働者の通弊は、掲示文をさへ解し能はざる不自由さ加減と結び付けられて、大工場の等しく歓迎しないところとなり、大工場の直接使用人として、朝鮮人職工は至極稀れに看るに過ぎざる有様である。

写経屋の覚書-フェイト「工場の方では熟練している労働者を必要にしているってことなのかな」

写経屋の覚書-はやて「長期的な視点で見て賃金の安い朝鮮人労働者を育成したらええやん、って思ったけど、「以て、他日の熟練職工を生み出さんとするには、余りにも、朝鮮人労働者の素質悪しく」なんて書かれとる。えらい低評価やな」

写経屋の覚書-なのは「しかも、当時は不況だから職に困っている熟練工が簡単に探せる所謂買い手市場だし、手間暇かけて朝鮮人労働者を育成するメリットもないって判断なんだろうね」

二 紡績会社と朝鮮人労働者
 紡績工として朝鮮人労働者は、其技能を相当著はして居る。殊に女工は、内地人女工と伯仲にありてふ定評を与へられて居る位である。然らば、朝鮮人労働者が何故に此方面に発展せざるや、一通り研究して見る必要がある。元来繊維工業企業者は、其労働者(主として女工)を得るに可成苦心するものであつて、或る時代に於ては、女工の争奪さへ盛んに行はれし事は、世人の記憶に存するところである。而して、此種の何れの会社も、年々、歳々、莫大なる費用を投じ、真摯なる態度を以て、所謂募集地なるものを経営して、専ら女工の募集に努めしものなりしが、近来男工も、これを都会に於て求むる時は、労働組合などの支配の下に、企業者を脅す事多きを以て、これも田舎より募り来るやうになつたのである。現時、農村疲弊して、各募集地より供給さるゝ労力甚だ多く、加ふるに、繊維工業の不振は、労力の需要を少からしめ居る有様なれば、仮令朝鮮人労働者を使役するは、相当有利なる事、明らかなるも、一方、募集地より供給さるゝ労力を斥けて、朝鮮人労働者を使傭する時は、折角の募集地も、直ちに、競争者に奪はれて、事業拡張等に際し、不時に労力の欠乏を感じたる時に於ても、如何ともなし能はざる窮境に面するを免れ得ざる結果となるものなれば、勢ひ朝鮮人労働者は、此方面にも疎ぜらるゝ立場に置かれるのである。一面、朝鮮人労働者が定住性を欠き、一人が帰郷するときは、其団体全部も附和雷同的に行動を共にするが如き(特に女工に多し)、企業者の最大不安とするところにして、進んで、朝鮮人労働者を使役なし得ざる一原因である。

写経屋の覚書-はやて「女性の紡績工は評価高いんやなぁ。募集地区みたいなんも設定して、争奪戦までやってたんか」

写経屋の覚書-なのは「『近来男工も、これを都会に於て求むる時は、労働組合などの支配の下に、企業者を脅す事多きを以て、これも田舎より募り来るやうになつたのである』っていうのは、第1回のエントリーで見た『朝鮮人移住対策の件(三)』の獄長の解釈を担保できるだろうね」

企業側は、内地人の失業者や以前から内地に在留する朝鮮人の使用を好まず、できれば朝鮮からの新規渡航者を雇いたがる傾向がある、と。

恐らく、企業側から見れば、この時期同盟罷業(ストライキ)、怠業(サボタージュ)等の労働争議が増えた事によって、単価も上がり、スレて使いづらい内地人や従前からの朝鮮人より、新規渡航者の方が安くて使いやすいって事なんでしょうね。
この時期、移民問題や労働問題ってのは世界的な潮流で、それが国際労働総会で話し合われて採択される諸条約に繋がっていくわけですが、それはまた別の話。
つうか、新規渡航朝鮮人が好まれる原因はこの史料に書かれてないんで、推測に過ぎないですけどね。
( ´H`)y-~~

写経屋の覚書-フェイト「でも、『朝鮮人労働者が定住性を欠き、一人が帰郷するときは、其団体全部も附和雷同的に行動を共にするが如き(特に女工に多し)』っていうんじゃ、やっぱり安定して雇用しにくいんだろうね」

三 小工業者と朝鮮人労働者
 茲に於て、朝鮮人労働者の需要方面は、其範囲非常に縮小せられ、唯、単に、労銀の低廉なるてふ事のみを最大要件とする小企業家に依つて、好況時代、労力不足の時期に著しく需要されしが、現在に於ては唯、昔日の残骸を止むるに過ぎざる状態である。夫れも、同一工場に於て、朝鮮人労働者が内地人労働者と、数に於て殆んど同等になる時は、朝鮮人労働者は団結力を以て、屡々内地人労働者と対抗して、物議を醸すこと多きを以て、小工業者と雖も、朝鮮人労働者雇傭の数を制限せんとする傾向がある。唯、硝子工場に於ては朝鮮人労働者が其仕事の性質上、相当適合なし居る為めか、今後も発展の余地ありと看られて居る。(調査報告書硝子製造従業員の労働と其生活参照)

写経屋の覚書-フェイト「賃金の安さだけが利点ってことなんだね」

写経屋の覚書-はやて「朝鮮人労働者そのものに価値があるっちゅうより、内地人労働者の代替としての価値なんやねぇ…日本製品に手が出ない階層にとって、それなりの価格でそれなりの物を提供する韓国製品みたいなもんか」

写経屋の覚書-なのは「ただ、硝子工としてはかなり高い評価なんだよね。当時は旭区など大阪市内北部に硝子工場が多かったみたい」

四 朝鮮人労働者と農業
 渡来朝鮮人は、元来、農夫なるを以て、これを農業労働者に使役せば相当成績を挙ぐるならんと、曽て、或る地方に於て地主が、小作争議の結果返上されたる小作地に、朝鮮人労働者四十人許りを使役した。然るに、彼等は苗の植付日の前日に到り、前小作人に僅少なる金銭にて買収され、苗の植付をなさすに逃走せし事実があつた。勿論、其裏面に於て、朝鮮人労働者が内地の事情を解せず、加ふるに、当該争議に於ける、小作人側の迫害に逢ひ、止むを得ず自己の職業を放棄せしものならんも、一面地主側よりは簡単に、朝鮮人労働者頼むに足らず、と称せらるゝものも亦如何ともなし得る事が出来ないのである。それは、地主が、小作争議に対する自己の主張を貫徹させんが為め、何等内地の事情に通ぜざる朝鮮人労働者を利用せし謬見に基くものなれど、一般に、農業労働者としての朝鮮人労働者は、其動作甚しく緩慢にして、到底、内地人の農業労働者と比較すべくもあらず、内地人農夫が早朝より日没まで昼飯時と午前午後各々一回、の休憩時を外にしては、野良仕事に孜々たるに反し、来住朝鮮人農夫が、一仕事毎に骨休みをなし、肥料を施すにも人糞を手掴みにて遅々たるが如き、殊に、農繁期、苗の植付に際して、内地人農婦が、一人一日優に一反歩の植付をなすに反し、朝鮮人農夫が、その半分も成し得ざる等、実際に於て、朝鮮人農夫の価値低きを証するのである。加ふるに、朝鮮人農夫が、内地農夫の活動を体験して、到底、自己の力の及ぶところに非ずとなし、其仕事より自ら離るゝが如き、或は又、耕作地を利用して間断なく種々の作物の収穫を得せしめんと督励なせど、疲労なしたる彼等は、寧ろ、安逸を希ふに切なるが如き、農業労働者としての朝鮮人労働者も、結局期待を裏切りしものと、謂ふべきものである。

写経屋の覚書-フェイト「小作人に買収されて逃亡って…小作争議の巻き添えというのもあるんだろうけど…」

写経屋の覚書-はやて「労働効率の悪さっちゅうんは、まぁ想定内の事態ではあるんやけど、内地人女性の半分いうんはたいがいやなぁ」

写経屋の覚書-フェイト「最後の『耕作地を利用して間断なく種々の作物の収穫を得せしめんと督励なせど、疲労なしたる彼等は、寧ろ、安逸を希ふに切なるが如き』は、残業代を貰うより定時退勤を希望っていうのに近い感じなのかな?」

写経屋の覚書-なのは「良く言えばそんな感じだろうね。最低限の仕事をしていれば最低限の報酬を貰えて最低限ご飯を食べて最低限遊んで生きていけるんだし、たとえ相応以上の見返りがあっても、わざわざプラスアルファを求めて疲れてまでがんばる気にはならないんだよ」

写経屋の覚書-はやて「それはそれで一応あり言うたらありやとは思うよ。その最低限の仕事が内地人女性の半分しかでけへんっていうのを無視すればの話やけどねぇ(苦笑)」

写経屋の覚書-なのは「作者は最近いろんな職種の人と接する機会があって、そういった労働感覚や、季節労働などで短期間に稼いだあとは気ままに暮らし、金がなくなったらまた働きだすという感覚について知ることが多くなったんだよねぇ」

写経屋の覚書-フェイト「でも、仕事そのものがきつい肉体労働者なら最低限つまり拘束時間内の労働で疲れるし、プラスアルファの金よりも休息がいいっていうのも理解できるんだけど、農業はちょっと違うような気もするよ。これじゃむしろ拘束時間内に最低限しか働かず効率化も図らない悪い意味での『公務員根性』ってやつだよ」

五 朝鮮人労働者の落ち行く先
 上述の如く、朝鮮人労働者は一般に工業、農業より甚だしく疎んぜられ、勢ひ彼等は土木事業労働者へと駆逐されて行くのである。否、駆逐さるゝと謂ふよりも、単調なる労働を自ら求めて行くのである、而も、土木業者間に於ても、一流のところでは、朝鮮人労働者は余りに無責任にして彼等を使役せん乎、如何なる重要個所の工事についても、監督者の眼を盗みて手間をはぶき、延いては、累を後日に及ぼすものとなし、却て、朝鮮人労働者を避くるが如く、彼等は茲に於ても、労銀の安きを最大要件となすが如き、余り質の良からざる土木業者の間に、使役せらるゝのである。然れども、土木事業方面の人夫募集の困難と、之に伴ふ費用の多大とは、漸次朝鮮人労働者を重宝とするが如くなり、彼等は、確に、此方面に活路を見出したわけである。
 右は朝鮮人労働者が土方人夫の方面に多く職を有する理由の概説である。然らば、労働市場に於て彼等は如何なる地位を占むるや、彼等の来住に拠りて従来の内地労働者は労働市場より駆逐されたるや。大体より看れば、朝鮮人労働者の来住により、内地労働市場に与へたる影響は、其結果より論ずるときに、殆んど皆無と謂つてよい位である。彼等は当初機械職工として、小工業者の間に、好況時代労力不足の当時は需要が多かつた。然し、決して、内地労働者の地位を奪つたものではない、唯、単に、労力の不足を補つたに過ぎないのである。而も、不況時代に入りては一様に解雇され、此時代に於ては、内地失業労働者の為め寧ろ職を奪れた観がある。一方、朝鮮人労働者が最も多数を占むる、土方、人夫稼業にありても、彼等は内地労働者を駆逐して、置換的に、其地位を占めしものと謂ふのではなく、之も、其欠を補ひたるものと看做すべきである。元来、内地に於ては、土方、人夫稼業は、一般に、卑賎なる稼業として、避忌せられ、土木工事を起すにつきては、従来、少からず土方、人夫の募集難を喞つたものであつた、而も、近来、国家的都市計画事業に刺激され、一般土木建築事業大いに起り、益々土方人夫の労力の欠乏を感ずる秋に、朝鮮人労働者が之に従事し、其事業を経験するに従ひて此職業を専業とせしものにして、低廉なる労銀と、低級なる生活とによりて、内地人土方、人夫を駆逐せしに非ずして、内地人土方、人夫の最下級の者の手下に使役されたるものである。然りと雖も、現在彼等が土方、人夫方面に於て有する勢力は、確に、内地人失業者が、所謂不熟練労働者として土方、人夫の業に入らんとするものを遮るには充分である。東京市に於ける、道路工事用人夫として、朝鮮人労働者を唯一のものとなし居るが如き、又、大阪地方に於ける、築堤、或は改渫工事に朝鮮人労働者の重要さるゝ、其好適例である。故に、現時の状態ににありては、内地人と、朝鮮人との職業上に於ける競争としては、一般市場裏にあらはれざるも、内地人失業者愈々増加して、職を求むるに職を択ばざるが如くなり、内地人失業者の多数と、朝鮮人労働者が、土木事業労働者の方面に於て、共に、不熟練労働者として、相争ふが如くなる時は、茲に、一つの問題を惹起せずして止まざるは必然の事であるが、現在、土木事業に於て、内地人は熟練労働者として、朝鮮人は不熟練労働者として、区別し使役さるゝにより、此種労働者の一般労銀を下落せしめ、次で生活標準の低下を意味するが如き窮境からは、僅に、免れて居るのである。

写経屋の覚書-フェイト「好況時代っていうのは第一次世界大戦での大戦景気、不況時代は戦後恐慌のことだね」

写経屋の覚書-はやて「札を燃やして足元を照らす「どれこれで明るくなつたらう」っちゅう成金の風刺画が歴史の教科書に載っとったね。不況のほうはブラックマンデーとかの世界恐慌やね。東北の村役場に掲げられた「身売り相談所」の写真も教科書に載っとったなぁ」

写経屋の覚書-なのは「うん。で、ちょっと話がずれるけど、この大正末期から昭和初期の不況を解決するにはどうすればいいか?って話になるんだけどね…」

写経屋の覚書-フェイト「えーっと、雇用・市場の創出、消費の拡大ってとこかな?」

写経屋の覚書-はやて「世界恐慌のせいで各国の購買意欲も冷え込んでブロック経済になったから海外市場は簡単に広げられへんし、雇用の創出も国内だけでは限度があるやんね…」

写経屋の覚書-なのは「うん。そこで、木村お兄さん言うところの『莫大な消費を伴う世界的イベント』によってブロック経済のような枠組みを解体し、海外に市場を広げ、莫大な消費を生み出して生産活動を活発化して経済を回すんだよ。具体的には満州事変、満州国設立、日華事変だね。実際に満州事変の勃発で恐慌から復活したんだよねぇ」

写経屋の覚書-フェイト「…『莫大な消費を伴う世界的イベント』って戦争のことなんだね…話を戻すと、結局、不況時代に朝鮮人労働者は土木工業系に流れたんだね」

写経屋の覚書-なのは「たしかにね、難しい事を考えずに済んで時間内だけ体を動かしていればいい単調な労働って、精神的には楽といえば楽なんだよね…」

写経屋の覚書-はやて「なんか実感がこもっとるなぁ…でも、『如何なる重要個所の工事についても、監督者の眼を盗みて手間をはぶき、延いては、累を後日に及ぼすもの』って、当時でも手抜き工事しまくりやん。そら安い賃金に目をつけたええ加減な業者しか雇わんわなぁ」

写経屋の覚書-フェイト「それでも人手自体は必要な業界だし、それなりに雇いどころはあったんだね」

写経屋の覚書-はやて「『元来、内地に於ては、土方、人夫稼業は、一般に、卑賎なる稼業として、避忌せられ、土木工事を起すにつきては、従来、少からず土方、人夫の募集難を喞つたものであつた』っちゅうことは、所謂『3K』いう概念は現代に始まったんやなくて当時からあったもんなんやいうことやね」

写経屋の覚書-フェイト「『内地人は熟練労働者として、朝鮮人は不熟練労働者として、区別し使役さるゝ』ことで棲み分けのようなものができているんだね」

写経屋の覚書-なのは「それで労働者側が賃金を下げて労働力の安売りをすることもなんとか防がれているというわけなんだ。いちおうはね」

写経屋の覚書-フェイト「でも、この棲み分けで固定化されちゃうと、内地人と朝鮮人の平等性とか『内鮮融和』に照らしてまずくないかな?」

写経屋の覚書-はやて「そやけど、朝鮮人の民度がこのままやといつまで経っても変わらへんよ」

写経屋の覚書-なのは「うーん。ま、このへんは教育の普及や社会に対する概念、習慣等の変化向上によって、朝鮮人の民度水準が上昇するのを待つしかないかな」

写経屋の覚書-フェイト「結局、朝鮮総督府で民度の漸進的な向上を目指して地道に政策を運営していくしかないってことなのかなぁ」

写経屋の覚書-はやて「教育の普及にしてもお金とマンパワーが必要やし、習慣・概念等も一朝一夕で改善できるもんちゃうし、何にしても急激な変化を望むのは無理やねぇ」

写経屋の覚書-なのは「これで『第一章 朝鮮人労働者の調査に就いて』はおしまい。今回はここまでにして、次回は『第二章 来住の原因』を見ていくね」

大阪に於ける朝鮮人問題(1)  大阪に於ける朝鮮人問題(2)  大阪に於ける朝鮮人問題(3)