「前回の続きになるんだけど、『第七九回(昭和十六年十二月)帝国議会説明資料(朝鮮総督府帝国議会説明資料 第5巻 不二出版)』をもう一度あげるね」一、氏制度施行後の届出状況
(一) 創氏届出状況一般
半島人の家族制度に一新紀元を画したる氏制度の創設は建国二千六百年の紀元の佳節を卜して施行せられたのであるが半島同胞多年の希望に合致せるものとして歓喜の声を以て迎へられ皇民意識に目覚めたる民衆は先を競つて創氏の届出を為すに至つた。即ち施行当初たる二月中に於ては法令の周知充分でなかつたに拘らず一五、七四六件の届出を見たのであるがその精神の周知徹底せらるるに伴ひ三月四五、八三三件、四月九五、四九五件と幾何級数的に増加し最終月たる八月に於ては十日間に一、六七、三〇〇件に達するに至り総計三、二二〇、六九三件に達し之に伴ひ期間内に名を内地人式に変更したる者も一、二〇一、七六四件に達するに至つた右の戸口及人口は全鮮戸口及人口の八割三厘に達するのであつて右の外現実に於て創氏を為さざるも柳、林、南、桂、高、田、池、呉、柴等其の侭内地人式に読み得る為其の届出を為さなかつた者を加ふれば創氏者の数は九割に達するものと看得るのであつて朝鮮統治上驚異的成果を収めたのである(別表一、二参照)
(二) 届出期間後に於ける氏名変更状況
届出期間内に届出を為さなかつた者は法令に依り従前の戸主の姓が氏となつたのであるが此等の者も氏名変更の手続に依り自発的に続々内地人式氏名に改めつつある。(中略)其の件数は昭和十六年十月迄に於て氏変更四四、四八八件名変更一、〇八九、〇〇六件に上り之を期間内の分と合算すれば内地人式創氏戸数は三、二六五、一八一戸八割一分五厘、内地人式名の人員は二、二九〇、七七〇人一割■分四厘となり半島人が如何に皇国臣民としての意識に覚め自発的に内鮮一体を具現せんとしてゐるかを如実に証明してゐるものと言へよう(別表三参照)
「ここでいう『創氏者』は設定創氏をさすんだよね。でもちょっとわかりにくいよ」
「順を追って説明していくね。まず「(一) 創氏届出状況一般」からわかるのは、期間内に創氏届を出したのは3,220,693件で、これは朝鮮の全戸数の80.3%になると」
「これは設定創氏やね」
「で、届出をしてないけど柳、林、南、桂、高、田、池、呉、柴等のようにそのまま内地人式に読みかえることができる者を入れると、創氏者の数は90%になると見ることができると」
「こっちは法定創氏になるんだね」
「あくまでも『九割に達するものと看得る』ということだから概算推定の域を出ないけどね。で、この数値を基礎にして、『創氏を為さざるも柳、林、南、桂、高、田、池、呉、柴等其の侭内地人式に読み得る為其の届出を為さなかつた者』をxとおいて対比式をつくるとこうなるの」
3,220,693(内地人式創氏届):0.803(%)=3,220,693+x(内地人式創氏届+創氏を為さざるも柳、林、南、桂、高、田、池、呉、柴等其の侭内地人式に読み得る為其の届出を為さなかつた者):0.9(%)
「ってことは…x=389,050.088だから、約389,050人が『創氏を為さざるも柳、林、南、桂、高、田、池、呉、柴等其の侭内地人式に読み得る為其の届出を為さなかつた者』の数ってことになるよね」
「ほんなら『柳、林、南、桂、高、田、池、呉、柴等其の侭内地人式に読み得る』姓の人については、創氏届を出した人と『創氏を為さざるも柳、林、南、桂、高、田、池、呉、柴等其の侭内地人式に読み得る為其の届出を為さなかつた者』を区別して集計できとるいうことになるやんな?」
「そうなるよね。以前も見たように林を林とした創氏届は受理されているわけだし。事情はともかく創氏届を出している人と出していない人とをちゃんと集計できていることになるよね」
「ちゅーことは、要するにやな、『柳、林、南、桂、高、田、池、呉、柴等其の侭内地人式に読み得る』姓の人が、そのまま内地人式に読みかえるというかたちで創氏届を出した、要するに設定創氏とした場合は『内地人式氏と認めらるる氏』としてカウントされたと考えて問題ないんとちゃうん?」
「うん。先にあげた【1420】の取扱から見ても、そう考えるのが妥当だよね。創氏改名以前の『柳、林、南、桂、高、田、池、呉、柴等』の総戸数がわかれば、設定創氏と法定創氏とした戸数の数・割合も推測できるんだろうけど」
「さすがにそこまでは…」
「完全にすっきりしたわけじゃないとは思うんだけど、これで一定の結論は出たと思うの」
『「巷間総督府の強制により後半に「幾何級数的」に増加したと言われる、その統計数字について、「全て内地人式の創氏なのか」という点』:事務取扱上は「内地人式創氏」と扱われていると見るのが妥当。
「なんだか詐欺みたいだよ。読み替えることができるという理由で内地人式にカウントできるなんて」
「ってゆうか、そもそも『内地人式の氏』ってどう定義されとったん?」
「…いちおう、『戸籍』第三巻九号(朝鮮戸籍協会 昭和十八年九月十日)ではこのようにしてるんだけど…」
二 内地人式氏名の意義
問 内地人式氏名の意義を問ふ
(平北威化面 宮本文奎)
答 氏名が内地人式なるや又は朝鮮式なるやは内地及朝鮮に於ける従来の氏名の形式を類型的分類に依り帰納したる標準に外ならない換言すれば内地人には従来内地人としての氏名に共通的なる類型があり朝鮮人には従来朝鮮人としての氏名に共通的な類型がある、この類型が内地人式又は朝鮮人式と呼ばれる標準となるものである故に既に内地人に用ひられてゐる氏名と雖も只其一事を以て内地人式なりと称することは出来ない例へば内地人にも朴、長、等の氏の者もあるが其れは内地人式の氏の類型的なるものと謂ふことが出来ないからを内地人式と認められない
「…うーん。納得いくようないかないような感じだよ…」
「長続連とか長勇はどーなん?ってツッコミは入れてもええやんな…典型的ちゅうか普遍的な名字ちゃう言われたらそれまでやけど」
「あと、この質疑の前にはこんなのも載っているの」
『戸籍』第三巻九号(朝鮮戸籍協会 昭和十八年九月十日)
一 内地人式氏名と認めらるゝもの
問 左記事項御教示を乞ふ
一 「新安」にいやす、は内地人式氏と認め難きものなるや
二 「高敏」「宗敏」は内地人式名と認め難きものなるや
(平北威化面 宮本文奎)
答 何れも内地人式又は名と認められる
「それじゃ「釜山(かまやま)」も内地人式氏と認められるのかなあ?」
「2のほうは、藤堂高敏とか伊達宗敏っていう藩主もおったみたいやし、さすがにセーフつかアリやんなぁ」
「これでいちおう宿題は解決したし、今回はここまでにするね」
林、柳、南、桂等の姓と設定創氏(1)
林、柳、南、桂等の姓と設定創氏(2)
林、柳、南、桂等の姓と設定創氏(3)
林、柳、南、桂等の姓と設定創氏(4)
林、柳、南、桂等の姓と設定創氏(5)


