雪蓮に携番を教えたのは軽はずみだった。
その後、ちょくちょく電話がかかってくる。きまって真夜中深夜の2時とか3時に平気でかけてくる。週末ならいざ知らず、大体いつも平日の深夜である。
大した用件はなく、「今何してる?」とか、「今日はマッサージいるか?」とか、営業電話だ。電話じゃなくてメールにしてと言っても、やり方がわからないらしい。
そんなやりとりをしているうちに、電話はぱったりかかってこなくなった。
一ヶ月くらいして、こっちからメールをしてみた。「メールのやり方はわかったの?」すると、すぐに電話がかかってきます。「まだわからない・・・難しい」メールの見方はわかるようだ。「じゃあ、今度呼んだ時にメールのやり方教えるよ。」、「ほんとか?今から行くか?」、「いやっ・・・もう寝るから
また今度ね。」
こんなやり取りをしながらまた一ヶ月くらい経った。呼ぶ呼ぶと言って、断り続けるのも申し訳ない気がしてきた。
ある週末の夜にまた電話がかかってきます。店が暇なようで退屈だそうです。「今から行くか?」ずっと断ってたので、たまにはいいかと思い、「わかった、来ていいよ。」と答えた。「お店の老板に予約の電話して。」お店に予約の電話をします。二回目以降はディスカウントがあるそうです。
ピンポ~ン雪蓮がやって来ました。
久しぶりに見ると少しあか抜けて見えます。日本の化粧や洋服を買ったみたいです。「好久不見」会うや否や中国語で雪蓮のマシンガントークが始まります。この小姐、かなり自己中なんです。
どうも、今の店や寮住まいにはなじめず、友達もなく寂しい毎日だったようです。しきりに、「想老家」と言ってます。日本人が中国で生活するのも大変ですからね。よほど、ストレスが溜まってたのでしょう。
あれやこれやと、不満話を聞かされます。こっちはお客なんですがね、雪蓮はおかまいなしです。
あまり時間もなく、ちゃっちゃっと施術を受けます。少しは上達したみたいです。
帰る間際に携帯メールの使い方をレクチャーします。写メの使い方も教えます。「ていうか、老板に教えてもらえばいいのに・・・」、「老板も知らない」 中国人は合理的なんで、メールするよりすぐ電話なんでしょうね。わかる気がします。
その後、月一ペースで雪蓮と会うことになります。