油炸知了猴(セミ幼虫のから揚げ)

 公園ではセミがジージーとやかましく、より一層 暑く感じる日が続いています。

 山東省済南市を訪問した夜、夕食会メニューで知了猴[zhi1liao3hou2] (セミの幼虫)料理のおもてなしを受けたことを思い出します。歓迎の意を込め特別料理として出されたものでした。セミの幼虫は夏季だけ食べられる高級食材、漢時代から皇帝も食べた食材です。流通量が少なく、一般のスーパーや市場などでは、入手できません。昔は日本の田舎でも、セミの幼虫を食べる地域があったようです。

 セミの幼虫は、クマ蝉を養殖したものを使います。山東省ではセミの養殖場が多く、広い土地にセミが好むリンゴの木を沢山植えています。毎年 クマ蝉が卵を産み付けた枝を集めて、人工羽化させ、翌年リンゴに再び吊るしておくと幼虫が地上に落ち、その後 地中に潜って七年間過ごします。セミの幼虫は、漢方薬にもなり1匹1.5元(20円)の高値で取引され、200㎡程度の小さな養殖場でも、多い日で1日1,000匹を捕獲でき、1日の収入は1500元(3万円)にも達します。セミの羽化時期の7月中旬から8月初旬頃、暗くなった夕方から、頭にヘッドライトを付け、プラスチックのバケツを持って、木の幹や根元、または地面に這っている幼虫を捕獲します。木の幹の高さ1.5m付近にビニールテープを巻いておくと、セミは足が滑って、それ以上登れなくなり簡単に捕獲することができます。

 セミの幼虫を水洗いし、腹側に付いた泥を蛇口の水流で洗い流します。その後、適量の塩を振っておきます。少量の油を加熱しセミの幼虫を炒め、各種調味料を加えて黄金色になるまで、絶えずヘラでかき回して炒めます。もっと簡単に済まそうと思えば、油でサッと揚げ、塩で味付けするだけで出来上がります。サクサクと歯ざわりもよく、味は香ばしい感じで食べ始めたら病み付きになります。

油炸小龙虾(ザリガニのから揚げ)

 筆者が滞在中にブームになっていた食材で、龙虾[xiao3long2xia1](ザリガニ)があります。丸い食卓の中央に置かれたボールに、龙虾が山盛り積まれ、ビニール手袋を両手にはめ、殻をむいて食べます。山盛りあっても捨てる部分が多いので、食べられる量はさほど多くありません。硬い殻をむくのは少々時間がかかりますが、エビやカニのような味わいと、香辛料の麻辣の辛さが組み合わさって美味しいです。中国っ子が好きな理由も納得できます。日本では田んぼの溝などに生息し、泥臭さや臭みがあると感じられますが、食べてみると臭みは全くありません。食べ方は、頭を引っ張って取り、手足をむしり取り、腹の部分の殻から背側の殻をむいていきます。口で殻を割ろうとすれば、口を怪我したり歯を折る恐れがあるため、注意が必要です。殻をむくと手のひらより大きかったザリガニが、小指ほどの大きさになり、小さくてガッカリします。でもエビのようなプリッとした食感が楽しいです。ザリガニを一生懸命食べていると、会話もお留守になるほど、みんな夢中になって食べます。後に残るのは殻の山、捨てる部分の量が多いので複雑な気分です。

 ザリガニは、実は中国古来の食材ではなく、1929年に日本から中国に養殖目的に持ち込まれたものです。この小龙虾が中国料理として広まったのは、ほんの10年前、若い人を中心に人気が出ました。ちなみに中国で食される龙虾は、養殖池の綺麗な水で育てられています。

 ザリガニの料理方法は、小龙虾・唐辛子・花椒・ネギ・生姜・パクチー・ニンニク・八角・シナモン・醤油・砂糖・塩・酒を加えて炒めた麻辣小龙虾が一般的です。専門店に行けば、塩茹でやザリガニ雑炊などもあるようです。中国へ渡航した際には、ぜひお召し上がりください!

(写真左:セミの幼虫のから揚げ[山東省済南市]、写真右: ザリガニのから揚げ[浙江省台州市])