中国と日本において、同一漢字で用法が異なる漢字が多数あります。例えば见・看・会の動詞は、中日双方で用法が異なっており、中国語学習者を悩ませます。
の違い
 中国語のの字源は、「目」の下に儿を付け膝まずいて見る様子を表現しています。は、「目」の上に手をかざして遠くを見る様子を表しています。の状況・状態を見る所作から、名詞の面(顔)を繋げると「会う」と言う意味になります。见を用いた例文では初次见面(初めまして)、再见(さようなら)など、「会う」として用いられています。
 一方中国語のは、看电视(テレビを見る), 看见(見える)は「見る」の意味で用いられています。日本語の漢字「会」は「会う」ことを表し、を用いません。「看」は日本語では「世話をする、見守る」、中国語では「見る」の意味で使われます。このように同一漢字でも用法が異なります。
は臭いを嗅ぐ意味
 漢字から意味が想像できない漢字もあります。その一つが中国語のです。日本語では「聞く」の意味ですが、中国では「嗅ぐ」と言う意味です。春秋戦国時代末期(BC300年)の古文書に闻酒香(酒の香りを聞く)とあり、「嗅ぐ」と言う意味で使われ始めたようです。日本の酒造りや香道の世界では、今でも「香りを聞く」というこの優美な表現が残っています。
►「行く」の色んな言い方
 日本語の「行く」は、中国語では去・走・上・行の表現があります。例文を挙げると、我去公园(公園へ行く),我们走吧(行こう),我上街(街へ行く),行路(道を歩く)など、場面に応じて使い分けします。なお中国語のは、日本語では「走る」の意味ですが、中国では「歩く」の意味、走着去(歩いて行く)などと言います。奔走、逃走などの中国語の熟語には、当初の「走る」という意味が残っています。
►古代の意味を保持している日本語の漢字
 日本では中国から伝わった古来の伝統文化を今でも守り、既に中国で廃れてしまった文化・習慣も残っています。例えば、雅楽、茶道、身近なところでは和服、ひな祭りなどです。同じように中国語の漢字も、時代とともに意味・用法が変化しましたが、日本側では漢字の伝来当初の意味を保持しています。日本側の意味が、1600年前の漢字本来の意味に近くなっています。
 中国語の一文字の漢字も、複数の意味と用法が増え、動詞・名詞・量詞にも変化するなど、語法が複雑になりました。日本語での用い方はその一部を簡単な形で導入されています。今から1600年前、非常に高度な教養を持った人たちが、漢字の構成を分かり易い形に整理し、やまと言葉に合うように定着させたと推察されます。今まで述べたことを参考に见・看・会・闻・走の五文字を眺めれば、日本側の意味が漢字本来の象形的な原義に近いことが分かります。
 因みに中国語のは「眠い」の意味ですが、繁体字のを簡体字に変えた際、左辺の目を省きとしました。日本語の「困る」とは関係がありません。