日本では家で朝食を取りますが、中国では通勤や通学途中、外で朝食を済ませる人が多いです。路上には朝から屋台や個人店が多く出ています。朝食の種類は、面条[mian4tiao2](麺)、[zhou1](おかゆ)、馒头[man2tou](蒸しパン)、油条[you2tiao2](揚げパン)、煎饼[jian1bing](クレープ)、豆浆[dou4jiang1](豆乳)などが一般的です。それを通勤途中に買ってビニール袋に入れて会社へ持参し食べます。その中で粥(おかゆ)は中国の朝食の定番になっています。お粥は漬物を付け合わせにして食べます。ホテルではお粥の入った鍋の横に、小さく刻んだ色んな漬物が置かれ、シャモジで掬ってお粥に掛けます。中国語で「漬物」を咸菜[xian2cai4]と言います。今回は中国で一般に食べられている漬物を紹介しましょう。
まず日本でもお馴染みの榨菜[zha4cai4](ザーサイ)です。日本のスーパーでも瓶詰された榨菜が販売されています。中国の飛行機では、この漬物とパンが一緒に出てきます。地方の安い民宿でも朝食に蒸しパンと一緒に出され、塩味が効いた漬物とパンが良くマッチし、シンプルで懐かしい味です。榨菜は「からし菜」のコブ状に膨らんだ茎の部分を用い、四川省や浙江省余姚市が主要な生産地になっています。日本でも福島県や茨木県で栽培されているようですがそれほど量は多くなく、殆ど中国からの輸入のようです。余姚市を訪問したことがありますが、この地は春秋時代(BC770~BC221年)に中国四大美女の西施[xi1shi1]が生まれ育った所で、その美しさに月も雲の影に隠れてしまったとか、川の魚も泳ぐのを忘れて沈んでいったなどの逸話が残っています。榨菜の歴史はまだ100年と浅く、四川省で豊作になり採れ過ぎた榨菜を塩漬けにして、レストランで出したところ、好評で全国に広まったようです。榨菜をかめに入れて塩漬けした後、塩や唐辛子などの香辛料と砂糖、お酒などを加えてさらに1年以上漬けこんで作ります。歯ごたえが良くて美味しい漬物ですが、なぜ日本で普及しないのか不思議です。
中国の一般的な他の漬物を紹介しましょう。
酸菜[suan1cai4]は中国東北地方を代表する酸っぱい白菜の漬物で、薄い塩味と酸味で料理に使い、代表的なものとしてこの漬物と豚肉を一緒に煮込んだ酸菜锅があります。
酱蒜[jiang4suan4]は大蒜[da4suan4](ニンニク)を醤油で漬け込んだものです。食べ過ぎると朝の打合せ時、大蒜の匂いに敬遠されますので注意しましょう。
酱黄瓜[jiang4huang2gua1]はキュウリの漬物です。キュウリと鷹のツメを醤油で漬け込み、キュウリと醤油が良くマッチしてとても美味しいです。中国ではラーメンに薬味としてネギを入れる食べ方を見掛けませんでした。街の食堂ではテーブルに置かれた皿に生ニンニクが積み上げられており、これを薬味としてかじりながらラーメンを食べます。この生大蒜は日本の大蒜と違って辛みがあります。
泡菜[pao4cai4]は四川省から全国に広まった漬物で日本の浅漬けやぬか漬けに似ています。野菜を塩水に10日ほど漬け込んで発酵させた漬物です。漬け込む野菜はキャベツ、大根、インゲン豆、キュウリ、生姜、苦瓜など色んな野菜を用います。日本では漬物は直接食べますが、中国料理の奥の深いところは漬物を炒め物などの料理に使い調味料代わりにして味の引き立て役にも使っています。
漬物でも日中の食文化の違いが出ています。日本の漬物は、どちらかと言うとあっさり仕上げて、素材の形・色や風味を残します。中国はしっかり時間を掛けて漬け込み、濃くておいしい旨味を引き出している漬物が多いです。(写真左:白粥和搾菜、写真右:煎饼摊子)