中国の四大古都と言えば安徽徽州,四川阆中,山西平遥,云南丽江の四つの古都を指します。その一つの山西平遥は山西省中部の平遥県に位置し、2700年の歴史を持つ世界的に有名な古い街です。他の古都に比べ最も保存状態が良いとされ、1997年に世界文化遺産として登録されました。
 西安に住んでいた時、友人の招待を受け一人で平遥へ出掛けたことがありました。外国の知らない土地の一人旅は注意が必要です。経験談をお話ししましょう。当日、西安市の长途巴士中心(長距離バスセンター)から、午後10時頃発の大原行きの深夜バスに乗りました。西安市と平揺市は直線距離にして約350kmあまり、どこのバスセンターでも同じですが、到着が何時になるのか掲示がありません。その日は春節明けの2月、まだ寒い日でした。全く中国語ができないし、長距離バスに乗るなど初めてのことでした。  バスが走り始めから、ある重大なことに気付きました。乗客が降りたいときに運転手に合図してバスを止め、降車しているではありませんか。地方では一般に道路上にバス停留所が整備されていません。小さい会社が自由に運行していますので、決まったバス停が設置できないのです。乗客が降りたいところで運転手に合図して、バスを止めて貰わなければなりません。これには大変慌てました。土地勘がないのでどこを走っているのか、どこで降りれば良いのかさっぱり分かりません。幸い地図を持っていたので、隣のおじさんにジェスチャーで平遥へ行きたいと訴えて、最寄りの地点で運転手に合図してくれるように頼みました。深夜三時ごろ、そのおじさんが運転手に合図し、ここで降りなさいとバスを止めてくれました。本当にここが目指す目的地なのか不安がありましたが降りるしかありません。高速道路の路肩で降ろされ、しかも降りたのはわたし一人です。雪が降っていてとても寒かったです。降りた反対側の土手の上に明かりが見えたので、土手をよじ登ると料金所スタンドがありました。寒くて凍死しそうだったので、スタンドの中へ避難させて欲しいと頼みましたが、当然のことながら断られました。そこで仕方なく遠くにぼんやり見える街の明かりに向かって歩き始めました。街灯も無く真っ暗な道をトボトボと歩いていると後ろから自転車に乗った男が何やら声を掛けてきましたが完全听不懂です。身の危険を感じましたが、幸いにその男は去っていきました。 そうこうする内に目の前に真っ黒にそびえる城壁が突然現れました。暗い中で黒く浮かび上がった城壁のシルエットはなんとも不気味です。入り口を見つけるためにその壁伝いに歩いていると火车站の看板が見え、「そうだ!駅の待合室で夜を明かせばいいんだ!」と駅へ向かいました。待合室は真っ暗、切符売り場もシャッターが下りていました。壁際にスチーム暖房のラジエーターがあるのが見え、その前にしゃがみ込んで暖を取っていたところ、背後から顔の前にフッと手が出てきました。振り返るとボロ布に身にまとった物乞いが立っていました。これには心臓が止まるほど驚きました。そこで小銭を渡して、あっちへ行けとジェスチャーで追い払いましたが、物乞いが何人か居るのが暗がりで見え、駅の待合室は危険と判断し、幸い近くにホテルがあったので避難しました。服務員の親切な配慮により、ロビーで一夜を明かさせて貰い、無事に友人と再開することができました。友人と再会した時、夜中の一人行動は危険であり、なぜ連絡をしなかったと叱られました。さて帰りは友人の車で郊外まで案内してもらって、停留所もない道路脇で待っていると西安行きのバスがやってきて、無事に西安へ戻ることができました。
 このように海外の交通事情は、日本とはかなり異なります。日本の感覚で旅すると思わぬトラブルに巻き込まれます。中国は比較的に治安が良いとは言うものの、置き引きの被害に会ったことがあります。列車の切符は当日購入ができず事前に手配が必要、ホテルは外国人が泊まれるホテルに制限されるなど自由に旅行ができません。旅行会社へ予約しておくか、現地の情況を十分調べるかなどしてからお出掛け下さい。
(写真:平揺古城の街並み)