みなさん明けましておめでとうございます。

 初詣に参り今年も良い年でありますようにと祈り、今年の運勢をおみくじで占った方も多いと思います。ではクイズ! なぜ、神社におみくじがあるのでしょうか?
 皆さん四柱推命とか風水の占いを知っていますか。中国古代の3000年以上前の陰陽文化から生まれた占いです。陰陽文化とは世の中をの構成に置き換える思想です。これが現在の中国の人々の根底の考えを為す一つの哲学となっており、考え方・習慣・思想・医学・文化・占いなどあらゆる分野に影響を及ぼしている原理です。中国の人と話しをしていると殆どの人が、この“陰陽文化”に裏付けられた格言を持っていることに気が付きます。それは凄いです。
 中国の知人が言っていた一例を紹介しましょう。中医では頭脳は陽、足は陰、それに対して熱は陽、寒は陰、陰は陽を求めることから「頭寒足熱」、冬は靴下を履かずに足を冷やすことは健康に良くありませんと忠告されました。最近流行の足湯は腎に良いと言うことです。冷たい飲み物は陰、一般的に飲みません。暫く室内に置いて常温にすることにより、陽に近付く中庸(真ん中)となります。また財が大きければ息も熱くなる、服従させるには力でなく徳で接すれば尊敬する気持ちが生まれるとか教科書で習っていない色んな格言を口にします。こう言う事実を知らなければ中国の人の思考様式は理解ができません。
 2016年の当コラムで紹介した老子の学説で、老子は「祸兮福之所倚、福兮祸之所)」「禍の中には福が宿っており、福には禍が隠れている」と言いました。言い換えれば「禍(わざわい)と福は、表裏一体である」「対立したものは互いに入れ替わる」などバランスを取り合っていると言う陰陽思想です。例えば特急電車が悪天候のため、途中で立ち往生したとしましょう。その電車に乗る予定の人が運悪く渋滞に巻き込まれて、その電車に乗れませんでした。乗れなかったことは「禍」ですが、電車に閉じ込められなかったことは「福」です。このように「禍」「福」は、糾(あざな)える縄のように表裏一体、禍転じて福となったり、その逆もあります。禍と福はどちらか一方が続くのではなく交互にやって来ます。そして引いた時点の吉凶を知るのがおみくじです。凶だからと言って、落ち込む必要はありません。吉凶も糾(あざな)える縄の如し、凶は必ず吉に転じる幸先の良いスタートだからです。
  初詣に出雲大社へ出掛ける方もいらっしゃるかも分かりません。社殿に掛けられた大きなネジネジのしめ縄は誰でも知っていると思います。二本の大きな縄が螺旋(らせん)に巻かれた形は、陰と陽が離れることなく相互依存の陰陽思想を表し、陰陽のバランスを取って中庸(中正)を表現、つまりゼロサム状態(正と負が合わさってゼロ状態)、無病息災・家内安全の安らかな状態を表わしています。日本の身近な例で「厄」、「厄年」とか言うのが残っています。厄年とは、災いの起き易い年、人生で数回巡ってきます。節句行事のどんと焼き、七草がゆ、節分、ひな祭り、端午の節句、七夕、七五三…は、陰陽道で言う厄祓い(気の流れを変える)です。でも中国では殆ど無くなりました。
 ここまで話せば、もうお分かりですね。日本は言葉でも、神道、仏教、食べ物、果ては人生訓、神話でもルーツを辿るとやはり中国の陰陽文化を1300年前からずっと継承、好む好まざるに関わらず、年賀状で使用する十二支も含めて、今の私たちの生活に根付いています。日本でこの事実を把握している人はどれ位いるでしょうか。

 1300年前に築造された高松塚古墳やキトラ古墳の壁画も陰陽五行思想に基づいて描かれ、日本神話となる古事記も陰陽の影響を受け、遣唐使の派遣開始もこの時期、漢字も伝わり、飛鳥・奈良時代に様々な中国文化が伝来し日本に大きな改革をもたらしました。さて悠久の歴史を持つ中国、それを継承している日本、これから中国史を通して祖国日本の成り立ちを見ていきましょう。
 本年も宜しくお願いします。2024年 元旦。
         (写真:“福”は中国のお正月に使われる一般的な文字[歴代皇帝御筆の福])