仕事を終えて、昨日のバーに顔を出した。
薄暗い店内。
まだ あの男は来ていない。
そういえば 時間も特に約束しなかった。
カウンターの昨日 男が座っていた席に着き、ビールを頼んだ。
ビールを飲みながら、男を思い出す。
確か・・・ジュンス?って言ったっけ。
それにしても不思議な男だった。
あの 涙 何だったんだ。
俺の顔を見て・・・だよな。
『明日も来る?』 と 言われて、気になって来てしまったけど・・・
腹の足しにはならない つまみを口に入れながら、2杯めのビールを頼んだ。
客が立ち代り入れ替わり する中、まだ あの男は来ない。
ドアが開く度に 気になって見てしまう。

ふはっww
まるで 心待ちにしてるようで 笑えてくる。
別に会いたかった訳じゃない。
あの男が 来てほしそうだったから、来ただけのこと。
飲み物を変え、それを飲み干したら帰ろうと思った。
最後の一口をグイッと煽り グラスを置くと、
「お待ちの方がいらしたみたいですよ」 とバーテンダーに声をかけられた。

「待った?」
「イヤ、、時間も決めてなかったし」
「そぅ、、、」
ジュンスは たいして悪びれるでもなく、俺の隣に腰かけ、赤ワインを頼んだ。
「昨日も飲んでたけど、赤ワイン好きなの?」
「別に、、酒の味はわからない。ただ色がキレイなだけだ」
グラスの中のワインを揺らしながら、ボーっと見つめてる。
「えっと、、、名前、ジュンスって言ったっけ。」
「あぁ。」
「ジュンスって呼んでいい?俺は ユチョンでいいから」
「・・・・・ふふっ・・・・・いいよ」

『いいよ』 と 言ったジュンスの顔。
俺は 瞬きも忘れて ジュンスの顔を見る。
嬉しそうに はにかみながら 頬を緩ませてる顔を。
こんな顔もするんだ・・・と目が釘づけになった。
無気力な顔は まるで人形のようで、それは それで キレイだったけど、
笑うと 可愛い。
男に向かって 可愛いと思うのは おかしいのかもしれない。
でも、笑っていた方が 似合うと思った。
「何?」
そう言った ジュンスの顔は 元の人形のような表情に戻っていた。
「あ、、何で・・笑ったのかと思って・・・」
「、、オレ・・・笑ってた?」
「え? うん」
「そうか、、、、、」
そんなに笑うことが変な事なんだろうか。
不思議そうに頬を手で擦り、また遠くを見た。
「ジュンスは どこから来たの?」
「さぁ、、」
「さぁって、、、生まれたとこは?」
「忘れた」
投げやりな返答。
グラスをゆっくり傾け、ワインを一口飲むと 俺を見た。
「・・・あの、、、何?」
ジュンスが ジッと見つめてくるから、ドキドキする。
ん?何で ドキドキするんだろう。
キレイな人だからか?
「イヤ、、似てるんだ」
「誰に?ジュンスの友だち?」
「違う」
「兄弟とか?」
違うと、ジュンスが顔を左右に振る。
「ユチョン・・・・オレの恋人だ」
目をまん丸くした俺に、意地悪そうに ジュンスは微笑んだ。
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この お話には 珍しく お笑い要素はありません。
私、どうした!(笑)
たまには、こんなのも書いてみたくなって ^^