季節外れですが、今日は桜の話題です。
大通りから済州大学の正門につながる道には、たくさんの桜が街路樹として植えられており、済州島でも有数の桜の名所となっています。
↓済州大前の桜並木について
ここに植えられている桜は韓国語で「ワンボンナム(왕벚나무)」という種類。
「ワン」が"王"「ボンナム」が"桜"の意味なので、"桜の王様"というでしょうか。
桜並木にはこの「ワンボンナム」に関する説明板が設置されています。
↓説明板
「ワンボツナム」というのは「왕벚나무」の音を日本語に移したものですが、たぶん「ワンボッナム」の"ッ"が大きくなっています。
韓国で日本語の翻訳をすると、フォントの関係でこういう問題がよく発生するそうです。
ただ、問題はそこではありません。
説明の2行目にこうあります。
〈ワンボツナム(日本名:染井吉野)〉の原産地が済州島ごある〉
ここの「ごある」は「である」の誤植ですが、もちろんポイントはそこではありません。
そう、この説明板はソメイヨシノの原産地が済州島だと主張しているのです。
調べてみると、実はこの論争はかなり昔から存在していたもの。
もともとは日本の植物学者・小泉源一が主張したことから始まったようです。
日本が朝鮮半島を植民地支配していた時代のことでした。
↓この論文(?)で小泉源一の主張が触れられています
ここからは僕の推測ですが、小泉さんの「ソメイヨシノ済州島起源説」が出てきた背景には、朝鮮を含む植民地支配を正当化したり、植民地支配下に不満を持つ他民族をなだめようという政府の意図が多少はあったのかもしれません。
日本と朝鮮は深い絆がある土地なんだよ、と。
もちろん、小泉さんが純粋に学術的な関心から発表した説だという可能性もありますが。
ここからも僕の推測です。
その後、この説が基礎となってそれほど根拠のない「ソメイヨシノ済州島起源説」が韓国で広く信じられるようになった。
それは終戦後も日本に対する恨みやコンプレックスを克服し、自尊心を保つための一つの「道具」として作用した。
今でも「日本の桜は済州島原産だ」と言われることが時々ありますが、その背景にはこういう心理があるのではないか。
つまり、戦前は日本側の思惑で「ソメイヨシノ済州島起源説」が行われ、戦後は韓国側の事情でそれが生き残った、というのが僕の仮説です。
ところが、この説はすでに過去のものとなっています。
この記事に詳しく書かれていますが、ゲノム分析によって済州島のワンボンナムとソメイヨシノは別の種だと判明しているようです。
こちらの記事はやや挑発的ですが、詳しく書かれています。
済州島のワンボンナムは日本では「王桜」あるいは「エイシュウザクラ」と呼ばれる種類のようです。
最近ではこんな「事件」も。
韓国各地に植えられたソメイヨシノを済州島の王桜に植え替えようという運動が存在するようです。
植民地時代の桜はほとんど伐られたようですが、どうも朴正煕大統領の時代に再び輸入されて大量に植樹された様子。
それを引っこ抜いて済州島の王桜を植えようということですが、済州島の桜にも日本から輸入されたソメイヨシノが混じっているらしく、かなりカオスです。
この「ハルラ日報」の記事ですが、タイトルを訳すと「ワンボンナムが日本産? 騒動を引き起こし責任を取らない山林庁」というもの。
ここに済州島のワンボンナムの一部が日本の桜と極めて類似している、という研究結果が紹介されています。
さらには朝鮮半島本土のワンボンナムは日本のソメイヨシノで、済州島のワンボンナムは別種だという内容も出てきます。
もうこうなると頭がクラクラしてきますね。
なかなか難しい記事なので、韓国語に自信がある方は読んでみてください。
このように日韓両国の間で様々な論争を呼び続けている桜。
桜にしたらいい迷惑だろうなあ。
この記事を書いている間ずっと、この歌のことを思い出していました。
これってどうなんでしょう。
いかがなものでしょう。
まさにそんな感じですね。
こんなMVだったとは知りませんでしたが(笑)。