昨日、ヤン・ヨンヒ監督のドキュメンタリー映画『スープとイデオロギー』を観てきました。
 
↓『スープとイデオロギー』の韓国語パンフレット

 

この作品は6月に日本で公開された映画で、韓国でも10月末に公開されました。
 
僕は先日、ヤン・ヨンヒ監督の作品『ディア・ピョンヤン』を済州大学「在日済州人センター」の映画上映企画の時に観ていました。
 
↓『ディア・ピョンヤン』について
 
『ディア・ピョンヤン』はその時、非常に強く印象に残っていました。
そんな中、ヤン監督の最新作が済州でも上映されていると聞いて行ってきたのです。
 
『ディア・ピョンヤン』はヤン監督の父親を題材に撮った映画でしたが、今作『スープとイデオロギー』は母親を題材にした映画です。
『ディア~』同様、監督自身(途中からはカメラマンも)が小型カメラで家族を撮影し、それを編集して一つの物語に組み立てた内容です。
 
ヤン監督の父親が亡くなった後の、娘(ヤン監督)と母の対話、監督の夫(日本人)との温かい関係などが映されます。
 
母親は朝鮮籍を維持している強烈な北朝鮮支持者で、朝総連の活動にも積極的に参加してきた人物です。
娘はそんな母親を認められず、屈折した感情や疑問を抱えて生きてきました。
でも、父親が死んだある日、母親が済州島で起こった住民虐殺事件「四・三事件」の被害者だったことを告白します。
「四・三事件」は新しく成立した大韓民国政府が北朝鮮や共産主義を支持する人々を弾圧した(という名目で全く関係ない住民も殺しまくった)と言われている悲惨な事件です。
1948年から1953年まで続き、数万人の人々が亡くなったと言われています(正確な数字はいまだに不明)。
 
映画でははっきりと語られませんが、母親のきっぱりとした北朝鮮支持は四・三事件の恐ろしい記憶に根差したものであると暗示されます。
済州島出身者が多数を占めた大阪府生野区の在日社会で北朝鮮支持者が増えた理由もそこにあったのかもしれません。
 
僕が印象的だったシーンは、ヤン監督が涙を流す二つのシーンです。
一つは、認知症が進んで会話が成り立ちにくくなった母親が突如として金正日礼賛の歌を歌い出すシーン。
娘はそんな母親を見ながら、涙をこらえることができず泣いてしまいます。
 
もう一つは、母娘が済州島で四・三事件研究センターを訪問するシーン。
ここで娘は、「北朝鮮を支持する母親を今まで全く理解できなかったこと」「四・三事件がこれほど悲惨なものだったとは知らなかったこと」を話しながら、やはり涙します。
 
ヤン監督がこのような「家族もの」のドキュメンタリー映画を撮り始めたのは、北朝鮮を支持して支援を続ける両親との葛藤が大きな理由だったようです。
それが最後には済州島の母親の記憶につながっていく過程は非常にドラマチックなものがあります。
 
また、個人的には映画の中の済州島の風景がとても親しく感じられました。
回想シーンでお父さんが歌う歌の中に「ハルラ山」や「霊室(ヨンシル)」「城山(ソンサン)」といったなじみ深い地名が出てきたり、母娘が出席した四・三事件の追悼式で文在寅大統領が行った演説が僕らが授業中に同時通訳をしたテキストだったり。
何となく「つながってるなぁ」と感じられました。
済州島でこの映画を観れたことに意味があったなぁと。
一緒に行った僕の同期は文在寅大統領の演説シーンで思わず同時通訳しそうになったと言っていましたが(笑)。
 
映画は北朝鮮・在日コリアン・歴史問題などを家族単位でよく捉えたすばらしい作品だと思います。
興味のある方はぜひ見てみてください。
 
 

※ 次はできれば金曜日に更新します

 

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↓ヤン・ヨンヒ監督のインタビューでおもしろかったもの