水曜日は写真を載せてお茶をにごしております。

 

今日はこんな一枚。

 

 

済州大学構内で撮影しました。

 

実は済州大学は桜の名所として知られており、桜の木がたくさん植えられています。

特に大通りから大学正門に通じる長い道の両脇につづく桜並木が有名で、それを目当てにやってくる人たちもたくさんいるようです。

 

で、今週に入り早くも桜が咲き始めているんです。

例年より二週間ぐらい早いと思うのですが、すでに満開の木もかなりあります。

 

そんななか、それほどパッとしない上の写真を選んだのは、桜の前に咲いている黄色い花のため。

「ケナリ」という花なのですが、韓国では春を代表する花の一つとしてたくさん植えられています。

レンギョウの一種で、和名は「チョウセンレンギョウ」のようです。

 

僕はこの光景を見ながら、去年ソウルにいたとき偶然古本屋で買った本のタイトルに『ケナリも花、サクラも花』というのがあったのを思い出したのです。


 

この本は鷺沢萠という作家が90年代に書いたエッセイです。

そのなかで、著者が韓国留学中に雑誌の取材を受けた経験を記した一節があるのですが、一部抜粋してみます。

 

 部屋に戻って、受け取った雑誌をめくった。(中略)満開の「ケナリ」を背景に立っているわたしの写真がある。ケナリのさらにむこう側には、ぼんやりと白い花も写っている。(中略)友だちのほうがわたしより先にその数行に気付いた。

 「ここ読んだ?」

 彼はそう言いながら、その数行を指で押さえた。写真の下に付いたキャプションであった。

 ――鷺沢萠は、私たちの国が愛する花、ケナリの名前を訊ねた。盛りの季節のケナリのむこうでは、サクラの花も美しく咲いているのが見える。

 あッ……、と声を洩らしたわたしの横で、友だちはにやっと笑い、そして言った。

 「ええこと書いてあるやん」

 「うん……」

 (中略)わたしはほんの二、三行のその文章を何度も何度も何度も繰り返し読み、そうしながら心の中で「ニクいニクい」と呟いていた。

(『ケナリも花、サクラも花』鷺沢萠著、新潮文庫)

 

韓国でカルチャーショック(日本出身者に対する当たりの強さ)を受けて少しすねていた著者が、感じのいい雑誌記者の取材を受けて感動し、さらにその文章を読んで韓国の「ケナリ」だけでなく日本の「サクラ」にもさりげなく言及してくれたことにまた感動するというなかなか印象的な場面。

 

この本は、30年近く前という時代的なギャップや著者が20代のときに書いたエッセイとあってかなり青臭い部分もあるのですが、それも含めてなかなかおもしろいです。

特に韓国に住んでいる日本人は「うんうん、そうだよなぁ」と同感したり、「いや、そんなことはないけどなぁ」と反発したりできて、楽しく読めるのではないかと思います。

 

ということで(どういうことかわからないけど)、僕もしばらくはケナリと桜が一緒に咲いている風景を楽しみたいと思っています。

 

※ 次は金曜日に更新します

 

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