僕はいま済州島にいる。

正確にいうと、「済州特別自治道西帰浦市南元邑」というところにいる。

済州島というのは、北半分が済州(チェジュ)市、南半分が西帰浦(ソグィッポ)市という自治体に統治されている。

僕がいるのは、西帰浦市のなかでも東寄りの南元(ナムォン)。

要するに、僕は済州島の東南地方に住んでいるのである。

 

僕が仕事をしていた学校が冬休みに入り、僕と妻(キョンアさん)は中国から日本に帰省した。

それが1月の第一週のことだ。

その間に中国で新型コロナウイルスが発見され、学校の新学期がいつ始まるかわからない状況になった。

僕はキョンアさんと話し合い、いったん韓国に行くことにした。

韓国で大学院に入る準備をするためである。

 

僕が韓国に来たのは2月14日。

それからソウルにある知人の家に7月中旬まで滞在。

その間に新型コロナウイルスはとんでもないことになり、中国に入るどころか日本にも帰れない(僕は帰れるけど、いったん帰ったら韓国に来れず、キョンアさんは日本に入ること自体できない)という状況になる。

僕は無ビザでの滞在(90日)を更新しつつ、TEPSという英語の試験・HSK(中国語の試験)・TOPIK(韓国語の試験)を続けざまに受けるという、試験三昧の日々をおくる(韓国の高校生みたいですね)。

 

6月に入り、キョンアさんがひょんなことから済州島の知人Tに連絡を取る。

Tは済州島でゲストハウスを経営していたのだがうまくいかず、今年に入って物件を売りに出していた。

しかし、立地や建物がいまいち魅力的でなく、なかなか売れずにいるという状況だった。

そこで、Tが「住むところがないのなら、ゲストハウスに住めばいい。家賃も払わなくてもいいし、電気代と水道代も払わなくていい。その代わり、敷地内の建物や庭を管理してほしい」というなかなか破格の提案をしてきた。

もともと済州島でワンルームでも借りてしばらく過ごそうと考えていた僕たちは、もちろんその提案を快諾した。

 

僕たちが済州島に入ったのは7月14日。

韓国入国から実に五カ月がたっていた。

 

 

(つづきます)

 

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