空には彼を思い起こさせる眉月。
月明かりは柔らかく僕を照らす。
あの日、彼と初めて結ばれた。
気持ちを伝えるのには、幾月も掛かったのに、気持ちを伝え合ったら、歯止めがきかなくなった。
僕らは夢中で愛し合い、欠けた部分を補いあった。
あれからどれくらい経ったんだろう。
僕らを取り巻く環境は、激変と呼べるほど変わった。
そして、僕らも。
喧嘩もした。
意見の衝突も経験した。
それでもいつも一緒に居ようと努めてきた。
それさえ変わった。
数ヶ月、数年、一緒に居られないこともあった。
僕らはもう終わったと誰もが思っている。
でも、そうじゃない。
僕らはあの日見上げた月だ。
何も変わらない。
遠くにあるから、変わったように見えるだけ。
その夜の月は、今見上げるこの月と同じ。
僕らは今も、その夜の月に見守られながら、愛を育んでいる。
月を見上げる。
気が遠くなるほど長い時の中を、変わらずにあり続ける月を。
「そんなに見つめて嫉妬しちゃうぞ」
背中からふわっと、抱きすくめられた。
クスッと笑うと、彼に向き合う。
「君しか見えてないよ」
変わらない僕らを、変わらないその夜の月が穏やかに包みこんだ。
Fin.