「好きです。好きだ。君が好きだ」
さざなみのように繰り返される告白に、体の震えが止まらない。
僕は震える手を必死に彼に伸ばし、思いっきり頬っぺたをつねった。
「痛い」
彼の顔が歪む。
じゃあ、これは・・・。
この告白は・・・。
「夢・・・じゃないんだ」
彼の頬をつねった手を見て言うと、その手を強く掴まれた。
「ひどいな。人で確認するなんて」
酷いと言いながら、彼の瞳は笑っている。
「だって、夢だと思ったから」
「普通は自分の頬をつねるでしょ」
「だって、痛いから」
「酷いなあ」
微笑みながら、掴んだ僕の手にそっと唇を当てた。
「好きだよ。君は?」
手に唇を当てたまま、僕を上目遣いに見上げる彼に、一気に恥ずかしさが増す。
目を逸らし、唇を噛む。
答えは一つしかないのに、言葉が出て来ない。
熱に浮かされたように、ただ頬だけが熱くなる。
「君が好きだよ」
言い聞かせるように告白する彼に、胸が切なく鳴った。
そうだ。
僕は何を何を怖がっているんだろう。
始めよう。
先ず一歩踏み出そう。
「僕も、好き」
ぱっと勢いよく顔を上げた彼を、月明かりが優しく照らした。