風が運んでくる。
潮騒の音と香り。
開け放ったコテージの窓から、月明かりが差し込む。
昼間あれだけ遊んだのに、眠れない。
疲れは溜まっている。
過酷なスケジュールをこなし、やっと手に入れたバカンス。
大好きな人とのバカンスは、思った通りの楽しさだ。
その大好きな彼が浴びるシャワー音が止んだ。
ベッドの中で体を固くする。
ベッドはツイン。
緊張することはない。
だって僕はまだ告白さえしていない。
一緒にバカンスを楽しみたいと言っただけだ。
友達。
それが今の二人を表わす一番相応しい言葉。
何よりも世間がそれ以上の関係を許してくれないだろう。
「でも、好きだよ」
つぶやいた僕の耳に、バスルームのドアが開いた音が聞こえた。