眩しい太陽。
コバルトブルーの海。
沖合では、白い波頭を立てて、ボートが横切っていく。
ビーチにパラソルを立てその陰で横になっている俺に、彼が波打ち際で手を振る。
二人きりのバカンス。
俺達のことを知っている人がほとんどいない国。
飛行機を降りたところから、誰にも振り返られることもなかった。
「最高だな」
日差しに手を翳してひとりごちる。
彼から一緒にバカンスに行きたいと言われ、夢見心地のまま、次の休暇にはと日程も決めて、ここにやってきた。
仕事も、煩わしい日常も忘れ、朝から晩までビーチで遊ぶ。
こんなに楽しいバカンスは初めてだ。
その理由は分かっている。
彼だ。
彼がいるからだ。
好きな人と一日中一緒に居られる。
仕事上普段から一緒に暮らしているとは言え、二人きりになるということはほとんどない。
それが今は独占状態だ。
彼のファンには申し訳ないが、これは俺だけの特権だ。
「おーい、来いよ。一緒に泳ごうよ」
波間から顔を覗かせ手招きする彼に向かって、手を振ってオッケーのサインを送った。