その夜の月 ~6~ | infection  ~YooSu~

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眩しい太陽。

コバルトブルーの海。

沖合では、白い波頭を立てて、ボートが横切っていく。

ビーチにパラソルを立てその陰で横になっている俺に、彼が波打ち際で手を振る。

二人きりのバカンス。

俺達のことを知っている人がほとんどいない国。

飛行機を降りたところから、誰にも振り返られることもなかった。

 

 

「最高だな」

 

 

日差しに手を翳してひとりごちる。

彼から一緒にバカンスに行きたいと言われ、夢見心地のまま、次の休暇にはと日程も決めて、ここにやってきた。

仕事も、煩わしい日常も忘れ、朝から晩までビーチで遊ぶ。

こんなに楽しいバカンスは初めてだ。

その理由は分かっている。

彼だ。

彼がいるからだ。

好きな人と一日中一緒に居られる。

仕事上普段から一緒に暮らしているとは言え、二人きりになるということはほとんどない。

それが今は独占状態だ。

彼のファンには申し訳ないが、これは俺だけの特権だ。

 

 

「おーい、来いよ。一緒に泳ごうよ」

 

 

波間から顔を覗かせ手招きする彼に向かって、手を振ってオッケーのサインを送った。