「あの、さっ」
「うん」
「あの、夏のバケーション覚えてる?」
「もちろん」
「楽しかったね」
「ああ、本当に」
「また行きたいね」
「そうだね」
「でも、さっ」
「うん」
「今度は」
「うん」
「皆とじゃなく、ふっ、二人で行きたいかな、なんてね」
ごくんと唾を飲み込む。
皆との夏の思い出。
それはそれで楽しいけど、僕は前へ進みたい。
月のような彼を、太陽の真下へ連れ出したい。
そう思って思い切って言ったのに、彼は横を向いたまま何も言わない。
ドキドキと心臓が早鐘のように打っている。
どうしよう。
冗談だよと笑おうとした時、彼は僕をまっすぐに見つめて言った。
「俺もだよ」