その夜の月 ~2~ | infection  ~YooSu~

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ピアノの前に座ると、誰かの痕跡を認めた。

 

 

「ふふっ、可愛いやつ」

 

 

楽譜にいたずら書きがしてある。

舌を大きく出した顔。

あっかんべーと言っている声が聞こえるようだ。

 

 

「さてと・・・やるか」

 

 

書きかけの曲を完成させるため、鍵盤に指を乗せた。

しばらく目を閉じてから、ふうっと溜息を吐いた。

楽譜を手に取り、新しいページを開く。

ペンを持つと、止まっていた感情が溢れだすように、言葉が溢れだす。

いたずらっ子の彼を思い描き、切ない言葉の羅列が仕上がった。

太陽と称される彼を当てはめるには、遠い言葉達。

 

 

「分かってくれる・・・かな」

 

 

胸を締め付ける想いに、溢れそうになる涙をぐっとこらえた。