過去の未来 | infection  ~YooSu~

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YooSuが大好き!なじゅんじゅんのブログです。腐の気があるので気をつけて。

 

息が出来ない。

 

深い海の底に沈んだように。

 

胸に言葉が詰まって出て来ない。

 

「なあ、俺の事どう思ってる」

 

そう聞かれて、ただ俯いた。

 

君が悲しそうに微笑み、言う。

 

「ごめん、答えられないよな。嫌いなんて言えないお前の優しさに甘えてしまう」

 

よく分かっている。

 

そうだ、僕は嫌いなんて言えない。

 

だって嫌いじゃないから。

 

それを言ってあげれば、彼が背負っている重荷が少しは軽くなるかも知れない。

 

それなのに、何故声が出ない。

 

せめて笑えたら。

 

そう思って、思い切って顔を上げたのに、彼の顔を見ると顔が歪んだ。

 

それにつられたように、彼の顔も歪む。

 

「本当にごめん。会えた義理じゃなかったのに・・・」

 

彼は深々と頭を下げ、くるりと踵を返した。

 

「安心して、もう帰るから」

 

振り向かずに言うと、歩き出した。

 

離れていく君の背中。

 

見慣れていた広い肩幅が、やけに小さく見える。

 

その背中に、縋り付いて泣いた夜。

 

君はただ僕を優しく抱き締めてくれた。

 

あの頃、世界は広かった。

 

でも、君の側が僕の世界のすべてだった。

 

それが日常だったから。

 

君が居る。

 

それが永遠に続く日常だった。

 

手放せない。

 

過去は過去だと割り切れと言う人もいるだろう。

 

確かに過去は過去だ。

 

だが、今居るここは、あの過去の先の未来だ。

 

僕はいつもあの過去の未来を生きている。

 

そして、僕は今の未来を生きる。

 

それがどんな未来なのか知らない。

 

でも、そこには常に君が居るだろう。

 

僕は君の広い背中に向けて走り出した。

 

過去の未来に追いつくために。

 

「君を愛してる」

 

そう、叫びながら。